『みち』 目次
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『みち』 ~道~ 第154回
ある日の夜、夕飯も済ませ風呂にも入り、落ち着いて本を読んでいるとき『007』 が鳴った。
「あ、野瀬さんだわ」
「夜分に申し訳ありません。 野瀬です」
「こんばんは」
「こんばんは。 今日は更紗さんに頼まれてお電話をお入れしました。 更紗さんからお話をしたい事があって織倉さんのご都合のいい日をお聞きしたいのですが」
「都合ですか? 会社に行く以外は何も予定はありませんからお休みの日ならいつでもいいですよ・・・あ、平日の方がいいんですか?」
「いえ、特にいつの方がいいという事はありませんので・・・それじゃあ、お休みはいつでも良くて平日なら退社時間の後が空いているんですね」
「はい」
「それではその様に更紗さんに伝えますが、更紗さんのスケジュールの都合で急にご連絡を入れても宜しいでしょうか?」
「はい。 大丈夫です」
「では その時にまた宜しくお願いします」
「はい」
「って言う事で、業務連絡はこれで終わりです」 これを聞いて琴音がクスッと笑った。
「あれからどうです? 縄文勉強は捗ってますか?」 はじめて野瀬と縄文話をしてからも数回会っていたのだ。
「頑張りたいんですけど図書館に縄文時代の本ってそんなに無くて今はちょっとストップ状態なんです」
「そうなんですよね。 やっぱり縄文時代の本ってあくまでも憶測でしかないから文献が残されている時代に比べてそんなに無いんですよね」
「それで今・・・あ・・」
「え? なんですか?」
「偏ってるって言われるかもしれないので止めておきます」
「何言ってるんですかそんなこと言いませんよ。 何ですか? 言ってみてください」
「弥生時代なんですけど」
「はい」
「弥生時代に大陸から渡ってきた人たちのことなんですけど・・・そちらの方が気になってきて今そっち方面を読んでいるんです」
「あー、その気持ち分かります」
「え? 野瀬さんも?」
「そうなんですよ。 調べちゃいますよねー」 そこへ電話の向こうで更紗の声が聞こえた。
「あ、クライアントがお帰りになるので また今度」
「はい」 携帯は切られた。
「こんな時間まで仕事だなんて身体は大丈夫なのかしら。 それに更紗さんが改まって時間を取るってどんな話なのかしら?」 独り言を言いながら本の続きを読み出した。
「イスラエル、六芒星かぁ・・・安倍清明は五芒星よね」
琴音にとっては2度目の決算が近づいてきた。
「決算月・・・今月末にまたみんなバタバタだわね」 そう思いながら机に向かって朝の仕事を始めた。 するとお昼前になった時、朝一番に出て行った営業の社員が
「やったー! 契約とって来ました!」 若い社員が事務所のドアを開けるなり大きな声で帰ってきた。
「おお! 決まったか?」
「はい、やっと決まりました」 嬉しそうな顔をして社長の席に近づいていき契約書を見せた。 他の社員も覗き込みに行った。
「もう駄目かと思っていたんだがよく粘ったな」
「あの時、社長が電話に出てくれたのが効いたんじゃないでしょうか」
「あんなもので話しがまとまるわけ無いだろう。 お前の力だよ。 オイみんな、ファイナルさんと契約が取れたから忙しくなるぞ。 現場にもよく言っておけよ」
(あ、ファイナルさんって あの時社長が話してた会社じゃない)
「織倉さんも忙しくなるのは初めてだろうけど次々に仕入れの伝票が入ってきますから頑張ってやってくださいね」
「はい。 でも期末も近くなってきているのに皆さん大変になりますね」
「あ、そうか、期末だったな・・・まぁ、嬉しい忙しさだからいいだろう」 社長の周りでは契約を取ってきた若い社員が 「やったじゃないか」 とみんなに頭を押さえつけられていた。
「イタタタ・・・もっと優しく褒めてくださいよ」 事務所の空気が今までと一転した。
その日から会社では男性社員が夜遅くまで働きだした。
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「あ、野瀬さんだわ」
「夜分に申し訳ありません。 野瀬です」
「こんばんは」
「こんばんは。 今日は更紗さんに頼まれてお電話をお入れしました。 更紗さんからお話をしたい事があって織倉さんのご都合のいい日をお聞きしたいのですが」
「都合ですか? 会社に行く以外は何も予定はありませんからお休みの日ならいつでもいいですよ・・・あ、平日の方がいいんですか?」
「いえ、特にいつの方がいいという事はありませんので・・・それじゃあ、お休みはいつでも良くて平日なら退社時間の後が空いているんですね」
「はい」
「それではその様に更紗さんに伝えますが、更紗さんのスケジュールの都合で急にご連絡を入れても宜しいでしょうか?」
「はい。 大丈夫です」
「では その時にまた宜しくお願いします」
「はい」
「って言う事で、業務連絡はこれで終わりです」 これを聞いて琴音がクスッと笑った。
「あれからどうです? 縄文勉強は捗ってますか?」 はじめて野瀬と縄文話をしてからも数回会っていたのだ。
「頑張りたいんですけど図書館に縄文時代の本ってそんなに無くて今はちょっとストップ状態なんです」
「そうなんですよね。 やっぱり縄文時代の本ってあくまでも憶測でしかないから文献が残されている時代に比べてそんなに無いんですよね」
「それで今・・・あ・・」
「え? なんですか?」
「偏ってるって言われるかもしれないので止めておきます」
「何言ってるんですかそんなこと言いませんよ。 何ですか? 言ってみてください」
「弥生時代なんですけど」
「はい」
「弥生時代に大陸から渡ってきた人たちのことなんですけど・・・そちらの方が気になってきて今そっち方面を読んでいるんです」
「あー、その気持ち分かります」
「え? 野瀬さんも?」
「そうなんですよ。 調べちゃいますよねー」 そこへ電話の向こうで更紗の声が聞こえた。
「あ、クライアントがお帰りになるので また今度」
「はい」 携帯は切られた。
「こんな時間まで仕事だなんて身体は大丈夫なのかしら。 それに更紗さんが改まって時間を取るってどんな話なのかしら?」 独り言を言いながら本の続きを読み出した。
「イスラエル、六芒星かぁ・・・安倍清明は五芒星よね」
琴音にとっては2度目の決算が近づいてきた。
「決算月・・・今月末にまたみんなバタバタだわね」 そう思いながら机に向かって朝の仕事を始めた。 するとお昼前になった時、朝一番に出て行った営業の社員が
「やったー! 契約とって来ました!」 若い社員が事務所のドアを開けるなり大きな声で帰ってきた。
「おお! 決まったか?」
「はい、やっと決まりました」 嬉しそうな顔をして社長の席に近づいていき契約書を見せた。 他の社員も覗き込みに行った。
「もう駄目かと思っていたんだがよく粘ったな」
「あの時、社長が電話に出てくれたのが効いたんじゃないでしょうか」
「あんなもので話しがまとまるわけ無いだろう。 お前の力だよ。 オイみんな、ファイナルさんと契約が取れたから忙しくなるぞ。 現場にもよく言っておけよ」
(あ、ファイナルさんって あの時社長が話してた会社じゃない)
「織倉さんも忙しくなるのは初めてだろうけど次々に仕入れの伝票が入ってきますから頑張ってやってくださいね」
「はい。 でも期末も近くなってきているのに皆さん大変になりますね」
「あ、そうか、期末だったな・・・まぁ、嬉しい忙しさだからいいだろう」 社長の周りでは契約を取ってきた若い社員が 「やったじゃないか」 とみんなに頭を押さえつけられていた。
「イタタタ・・・もっと優しく褒めてくださいよ」 事務所の空気が今までと一転した。
その日から会社では男性社員が夜遅くまで働きだした。