大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第103回

2014年05月27日 14時49分48秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第100回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~未知~  第103回



琴音にとっての『愛』 元々人見知りもあったが琴音だが、人間不信ほどになった大きな原因があった。


社会人として始めて会社に入社してすぐ 前任は琴音によくしてくれたが、他の先輩からはことごとく虐められていた。 その理由が琴音には全く分からない。 

琴音と一緒に入社したもう一人の同期は猫かわいがりされている。 その同期は先輩に意見などできるものでもないし 虐められている琴音を助ける事もできない。 ただ「ごめん」 という目をして見ているだけだ。

だが唯一救われたのは同じフロアーであっても 琴音の部署だけは女性は琴音一人で他の先輩達と少し違う部署だったのだ。 それだけに仕事での虐めは受けなかった。

「入社した日からだなんて何がいけなかったのかも分からないわ。 いったいどうすれば・・・」 部屋に戻ると惨めな自分の今日を思い一人泣いていた。 

そしてよく考えると琴音の前任が居ない所で虐めにあっていたのだ。

「これって・・・もし先輩との引継ぎが終わって先輩が辞めちゃったら、この虐めがもっと酷く・・・」 引継ぎは1ヶ月間だ。

だが、とうとうその1ヶ月も過ぎた。 お茶当番で30人ほどのお茶を入れれば片っ端から捨てていかれる。 それを見て他の者が笑っている。 フロアーを歩いていれば足も引っ掛けられる。 机の上の文具がなくなっている。 そんな事が当たり前に毎日・・・。

今までそんな思いをしたことの無い琴音には大きな心の傷となった。

そして半年が過ぎた頃、琴音の部署だけがフロアー移動となった。 新しいフロアーには今まで全く逢う事がなかった あちらこちらのフロアーから一班毎に集まってきていた。  女性は琴音だけであとは全員男性だ。

「これでやっと泣かなくていい」 女性としての掃除やお茶出しなどの仕事は全部一人でやらねばならないが、それでもやっと安心が出来た。


フロアーを移動して少し落ち着いたとき、琴音が残業をしていた。 そこへ

「かなり虐められてたんだってね」 他の部署の男性社員が琴音に声をかけてきた。

「え?」 先輩達は決して男性の目の前で虐めは行ってこなかった。 どちらかといえばフロアーを出た給湯室での虐めが多かったのだ。

「君が虐められてるのは有名だったよ」

「・・・」

「あれ? 何も君が悪いわけじゃないから気にしなくていいんだよ」 そう言うと近くにあった椅子をガラガラと引いてきて座り

「君が有名だったのは泣き顔を見せなかった事で有名だったんだよ」

「あの・・・どうしてそのことを知ってるんですか?」

「え? 知らないの?」

「何を・・・ですか?」

「お局様だよ」 

「お局様?」 琴音の前任とその同期がいわゆるお局様だ。 お局様といっても歳をとっているわけではない。 

この会社は結婚退職か出産退職がお決まりごととなっているので 大体、入社5年目くらいでみんな退職をするのだ。 琴音の前任も大きなお腹が目立つ出産退職なのである。

「君の前任はほんとにいい子でね、それに比べて・・・どうしてアイツ・・・あ、アイツって言うのは僕の同期なんだけどね。 アイツはあんなのと結婚したんだってみんなで言ってるくらいだよ。 あ、あんなのっていうのはメインで君を虐めていたお局様の事ね」 琴音の前任の同期の事だ。

「・・・」

「君の前任は言ってみればサッパリとした一匹狼、もう一人はねちっこいタイプ。 これって正反対でしょ? だからあの二人は入社してきた時からすごく仲が悪いんだよ。 あまり人のこんなことを言うのな何なんだけどね。 君の前任はさり気なく気も利いて、そうだないつも笑ってるんだよ。 それに対してもう一人には気を利かせてもらったら「私がこれをしてあげたのよ」 って目で見られてね。 男性社員はみんな引いてたんだよ。 だから君の前任はモテた。 それに比べてもう一人には皆が関わりあいたくなくて逃げてた。 君を虐めていたお局様にしてみたら同期がモテて自分がモテないっていい気がしないじゃない? その仲の悪い同期、君の前任の後任に君が来たわけだ。 今までの仕返しじゃないけど、それに似たようなもので君を虐めてたって訳だよ」

「そうですか・・・」

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