大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第121回

2014年07月29日 14時47分38秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第110回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第121回



正面玄関で待っていると野瀬が車を運転してやってきた。

(うわぁ、これって前と違う車じゃない。 それもまた外車・・・) 左にハンドルが付いているから外車と分かるようだが右ハンドルの外車もある。 そしてこれはベンツである。

ホテルのドアマンが車のドアを開け更紗と琴音は車に乗り込んだ。

「更紗さんって ホントに超有名なんですね」

「違うってば」

「だって、この間も今日も外車・・・ですよね?」 自信なさ気に聞いた。

「外車はその2台しか持ってないわよ。 あと国産の軽自動車。 全部経費で買ってるのよ。 一つの節税対策みたいなものよ」

「はぁー、外車を2台も持ってるんだぁ」

「だから違うってば」 笑いながらそう言い、続けて

「一番大きな経費って普通は人件費でしょ? でもうちは野瀬君と私の二人だけでやってるから人件費がかからないのよ。 だからどこかで使わなきゃ税金に取っていかれるだけじゃない? だからと言って二重帳簿なんてことはしたくないし。 で、こうして使ってるわけ。 名義も事務所名義だから私の私物じゃないのよ」

「それでも買える収入っていうのがすごいですよ」 そう言う琴音の顔を見て

「車、これも一つの商売アイテムでもあるのよ」

「え? どういうことですか?」

「例えば今みたいにホテルに呼び出されることもあるわけ。 そんな時にオンボロの車では行きにくいでしょ? ホテルに呼び出すようなお客さんだもの。 オンボロ車で来たりしたら引いちゃうじゃない。 こんな仕事をしていると見た目も考えなくちゃいけないときもあるのよ」

「うちの会社じゃ無理だわ」 大きく溜息をついた。

「何処も不況だからね。 そんな相談も多いわ」

「そうなんですか?」

「ええ。 やっぱりね・・・。 聞いていて 何とか命を取り留めてもらわないとっていう事も少なからずよ」 更紗の表情が悲しげな顔になった。 

運転をしている野瀬は会話に入ってこない。 そして車はホテルの正面に着いた。 

「あら? ここだったの? ここのラウンジも結構静かでいいところよ」 琴音を見て更紗が言った時、ドアマンが車のドアを開けた。

「野瀬君 急がなくていいから。 琴音さんと先に行ってるわ」

「場所、分かるんですか?」 運転席から振り返り半笑いの顔だ。

「失礼ね。 何度も来てるんだから分かるわよ」 どうも更紗も琴音と同じように方向音痴のようだ。

「行きましょ」 またもや更紗のウインクだ。


ラウンジは少々暗めの落ち着ける雰囲気だ。 更紗の顔を見るなりすぐBOYが席に案内した。

「わぁ、素敵なお店」 琴音はキョロキョロとしている。

「ワインでいいかしら?」

「こんな所にきたのは初めてですからお任せします」 

「お腹は空いてない?」

「バイキングで食べてきました」 まだキョロキョロしている。

「バイキング?」

「あ!」 やっと更紗の顔を見た。

「さっきのホテルには友達とバイキングを食べに行ってたんです」

「そうだったの。 あそこのお料理は美味しいわよね」

「はい、初めて行ったんですけどとっても美味しかったです。 更紗さんはあそこのホテルにはよく行かれるんですか?」

「何度かね。 でも仕事関係ばかりよ」 更紗が赤ワインを頼んだ。

「更紗さんのお客さんってさっきみたいな感じの人が多いんですか?」

「ふふ、やっと話が出来るわね。 そこのホテルで会ってた人の事を同じホテルの中じゃ話しにくいじゃない?」 またもやウインク。 

「あ、そういう事だったんですか」 やっとウインクの意味が分かったようだ。

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