大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第120回

2014年07月25日 15時05分53秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第110回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第120回



「おお、そうか、もう時間か。 せっかく更紗先生と久しぶりにお逢いしてもっと話をしたかったのになぁ。 いやぁ、せっかく足を運んでいただいたのに慌しくてすみませんね」 そういいながら立ち上がるとその言葉を待っていましたとばかりに更紗も立ち上がった。 
それを見た琴音もすぐに立ち

「お忙しいのは何よりですわ。 それでは今日は楽しいお話を有難うございました」 お辞儀をする更紗の横で慌てて琴音もでペコリとお辞儀をした。

入ってきた時と反対に今度は更紗が先頭を切って部屋を出た。 琴音もその後に続きドアの横に立っていた強面な男性にもペコリとお辞儀をして部屋を出た。 

更紗はそのままエレベーターに向かって歩いて行ったが野瀬がまだだ。 琴音はまだやってこない野瀬の事が気になってはいたが、とにかく誘拐ではなかったようだと胸をなでおろし更紗の後を歩いた。

エレベーターのボタンを押した更紗が

「ごめんなさいね、もう少し待ってね」 琴音にそう言った。

エレベーターを待っていると野瀬がやって来た。 丁度エレベーターのドアが開いた。
野瀬がドアが閉まってこないように手で押さえ琴音に「どうぞ」 と言ったがそんなシチュエーションになれていない琴音はすぐに足が前に出なかった。

「琴音さん行きましょ」 更紗が琴音に声をかけ琴音の背に手を添えた。

野瀬もすぐに入ってエレベーターのドアが閉まった。 その途端、更紗が地団太を踏むように、そして声を殺して叫んだ。

「あ“――― 」 

「更紗さん、織倉さんの前ですよ」 野瀬が冷静に言った。

「分かってるわよ・・・でも、あのタヌキったら・・・」 言いかけて口をつぐんだ。 そして琴音に

「ごめんなさいね。 こんな事に付き合わせて」 琴音にしてみればさっきまでの更紗と別人が話しているようで・・・いや、先程の更紗が別人に感じ何が何だか全く分からない。

エレベーターのドアが開いた途端 更紗が飛んで出た。

「あー、息が苦しいわ」 後に出た琴音と野瀬。 野瀬が後姿の更紗に

「更紗さんこれからどうします? ホテルを変えましょうか?」

「そうね、同じホテルっていうのもね。 ね、琴音さんもいいでしょ?」

「あの 私、何が何だか」

「そりゃそうよね。 とにかく私に時間をくださる?」

「はい・・・」 更紗の言葉に押された。

「ね、野瀬君 今日はもう予定が無いんだからどこか良い雰囲気のところでワインなんてどう? 琴音さん飲める?」

「少しくらいなら」

「それじゃあ・・・そうですね、少し待っていていただけますか?」

「うん。 お願いね」 野瀬が携帯を片手に見えないところに行った。

「ホントは今すぐにでもお話を聞きたいんだけどここじゃちょっとね」 更紗がウインクをした。 琴音はその意味が分からない。

少しして野瀬が帰ってきた。

「ここから30分くらい走ったところのホテルになりますが そこが今空いているそうなんですけどそちらで宜しいですか?」

「え~? 30分も走るの~? もっと近くにないの? 早く飲みたいのにー」

「分かりました」 野瀬がすぐにまたどこかへ行った。 その後姿を見ながら琴音が更紗に言った。

「野瀬さんって出来たマネージャーさんなんですね」 

「でしょ、私のワガママをちゃんと聞いてくれるのは野瀬君くらいよ」

「あ、更紗さんがワガママって言ってるんじゃなくて・・・」

「ふふ、いいのよ。 分かっててわざとワガママを言ってる所もあるから」

「え? そうなんですか?」

「不思議よね。 野瀬君だけには甘えられるの」

「あの? 聞いていいですか?」

「なぁに?」

「お二人は・・・恋人同士?」

「まさかー?! ぜんっぜん違うわよ」 そこへ野瀬がやってきて

「更紗さんの仰るいい雰囲気っていう所からは少し外れますけど10分も走らないで空いている所がありますのでそこに行きましょう。 もう嫌って言っても駄目ですよ。 キープしましたからね」

「はい、はい。 じゃ、琴音さん行きましょ」 そう言って更紗は歩き出し野瀬は車を取りに行った

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