大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第142回

2014年10月17日 14時44分46秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第140回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ






                                             



『みち』 ~道~  第142回




社長が2人の社員を連れて1階へ降りて行ったと思ったら1階の工場に置いてあった幾つかの大型のストーブのうちの一つを持って上がってきた。

「おーい、これからエアコンは使わないでストーブだからな。 経費節約だ。 会長から何も言わせないようにしていこうな」 工場長から聞いて行動に出たのであろう。 

だがコレは琴音にとってはとても有難い事だった。 エアコンは事務所が暖かくなっても芯からは暖まらない。 それに比べてストーブは身体の芯から暖まる。 コレで足元の寒さもいくらかは回避できる。

琴音の仕事は年末の準備を始めなければいけない。


仕事を終え ロッカーを開けた途端『007』 の着メロが鳴った。

「あ、野瀬さんだわ」

「もしもし」

「あ、織倉さん? 仕事終わりました?」

「はい。 丁度ロッカーに居る所です」

「今日時間あります?」

「沢山有り余ってます」

「彼氏とのデートも無いんですね?」 笑っている様子が携帯から伺える。

「そんな物ありませんよ」

「じゃ、僕近くに来てるんですけど縄文談義しませんか?」

「縄文談義という事は更紗さんは?」

「更紗さんは今日、和尚と会ってるんですよ」

「そうなんですか」

「あ、僕と二人じゃ嫌ですか?」

「そういう意味じゃないです」

「良かった嫌われていないんですね。 それじゃあ、どうしましょう。 部屋にお迎えに上がりましょうか? それとも会社に伺いましょうか?」

「自転車で会社に来てますから置いていくのも後で困っちゃいそうなので部屋で待ってても良いですか?」

「はい。 それじゃあ・・・そうですね、あと40分くらいでお迎えに上がってもいいでしょうか?」

「はい。 それでお願いします」 携帯を切った琴音は急いでマンションに向かった。

着替えを済ませ一段楽した頃にチャイムが鳴った。 ドアを開けると野瀬が立っていた。

「今回は大人しく部屋に居てくれましたね」 野瀬の第一声だ。

「この間野瀬さんに貧乏性って言われましたから」 クスッと笑った。

「あ、根に持ってるんですか?」

「そうじゃないですよ。 ただ、ちょっと位はドシンと構えていようかなと思って」

「これ位でドシンとは言いませんよ。 まだまだ更紗さんのドシンの足元にも及ばないな。 それじゃあ、行きましょうか」 クスクスと笑いながら車に向かった。

「何か食べたい物はありますか?」 先を歩く野瀬が少し振り返って聞いた。

「特には無いです」

「経費だから遠慮しないで言ってくださいよ。 更紗さんからも織倉さんの食べたい所に連れて行くのよ! って言われてますから」 後部座席のドアを開けた。

「それじゃあ、この間のお野菜の美味しい所でもいいですか?」 車に乗り込む前に琴音が答えた。

「あ、あそこが気に入りました?」

「はい。 とっても美味しかったんですもの」

「それじゃあ、あそこにしましょうね」 後部座席のドアを閉め運転席に乗り込んだ。

「今度はどんなお野菜があるのかしら 楽しみだわ」 

「そう言ってもらえると お連れする甲斐がありますね」 シートベルトを締めた野瀬がアクセルを踏んだ。

そして車中から既に縄文談義が始まった。 運転をしている野瀬の後頭部を見ながら

「縄文人はかなり広い範囲を移動していたみたいですけど今の時代みたいに車も無いのにすごいですね」

「あ、それって勾玉の事ですか?」 バックミラーで琴音を見た。

「はい。 東北や北海道でも糸魚川の翡翠で作られた勾玉が見つかったって読みました」 相変わらず野瀬の後頭部を見ている。

「やはり日本人なら 翡翠といえば糸魚川ですよね」 チラチラとバックミラーの琴音を見るが琴音はずっと野瀬の後頭部を見ている。

「あ、野瀬さんもそう思います?」 嬉しそうにした視線がやはり野瀬の後頭部だ。

「後頭部が突き刺さるなぁ」

「え? 頭痛ですか?」 野瀬の後頭部に話しかける。

「ほんとに織倉さんは天然なのか何なのか」 そう言いながら車を道路の端に寄せ、シートベルトを外し車を降りたかと思ったら後部座席のドアを開けた。

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