大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第143回

2014年10月21日 14時39分55秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第140回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第143回




「助手席に移動してもらってもいいですか?」 後部座席に座っている琴音を覗き込んで言った。

「え? はい、いいですけど・・・」 車から降りると野瀬が助手席のドアを開けた。

「どうぞ」 琴音を助手席に座らせたかと思うとドアを閉め、すぐに運転席に戻りシートベルトをして車を走らせた。

「あの? 頭が痛いのは?」 今度は後頭部ではなく、前を向いて運転をしている野瀬の横顔に話しかけた。

「あははは! まだ気付いてないんだ。 縄文談義もいいけど織倉さんの天然を聞くのも面白い」

「天然って?・・・」 分けがわからなそうにしている琴音をチラッと見て

「後部座席に居た時、ずっと僕の後頭部を見ながら話してたでしょ」

「はい」

「その視線が突き刺さって痛かったんですよ」

「え!? あ、ごめんなさい。 全然気付かなかったわ」

「いいですよ、いいですよ。 きっと更紗さんもこんな所の織倉さんも気に入ったんだろうな」

「考えが浅いだけです」 前を向き直った琴音を見て

「落ち込まないでくださいよ。 僕が苛めてるみたいじゃないですか」

「深く考えられないんですよね。 どうしてなのかしら」 視線が下に落ちた。

「それが織倉さんの良い所なんですよ。 それに織倉さんのそれって聞いてる方からしてみれば 『和む』 なんですよ」

「言い方にも色々ありますね」 

「捻くれないでくださいよ。 褒めてるんですから素直に受け取ってください」

「じゃあ、とりあえず褒めていただいたんでしたら有難うございますという事で」 やっと野瀬を見た。

「はい、それでいいんですよ。 何の話だったっけ? あ、そうだ 糸魚川の翡翠でしたね」

「はい」

「織倉さんなら糸魚川、翡翠と言ったら何を連想します?」

「すぐに浮かんでくるのが・・・奴奈川姫(ぬなかわひめ) なんですけど・・・」 琴音が全て言い終わらないうちに

「わぉ! 期待通りの答えだ!! もしかしたら縄文の神々の事も知ってるんですか?」 少し興奮気味に聞いた。

「え!? 私、今とっても言いにくかったんですけど野瀬さんも縄文の神々のことを知ってるんですか?」

「もう、嬉しいなぁ。 運転なんかしてられないですよ。 早く着かないかなぁ」 ハンドルを空で右に左に切るように触りだした。 

「子供みたいですね」 

「え? そんなこと言われたの初めてですよ。 恥ずかしいなぁ」 車はスピードを上げようやく店に着いた。

「何食べます?」 ウエイターが持ってきたメニューを琴音に見せた。

「そうですねぇ・・・あ、これが美味しそうだわ。 白菜のグラタンこれにします」

「身体も温まりそうですね。 セットでいいですか?」

「はい。 野瀬さんは・・・」

「僕は肉です」

「やっぱりそうですか」

「あー、もう嫌だなぁ。 更紗さんに言われてるみたいじゃないですか」 そう言いながら野瀬が注文をした。

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