備忘録

舞台の感想を書いています。(ネタばれ有り)Twitterはdacho115。

『Love Never Dies』AU版

2011-08-24 04:15:05 | 他言語ミュージカル
ファントム:Ben Lewis
クリスティーヌ:Anna Obyrne
マダム・ジリー:Maria Mercedesラウル:Simon Gleeson
(キャストクレジットはマダムの方が先)

"Til I Hear You Sing"
開幕直後のSE(オケによる生演奏だけど)は改変後のロンドン版と同じで"オペラ座炎上"の画像演出は無し。
幕が上がると、ファントムが謎のオルガン付台にスタンバイしており、いきなり楽譜を丸め、オルガンを叩きつける。その後、あのイントロを歌い出し、転調後の"クリスティーヌ"の歌詞とともにクリスティーヌの肖像画が降りてくる(笑)
サビの"I"は一回目は力業。二回目観た時はきっちり上げた。
歌い終わった後は、『CATS』のグリザベラよろしく浮上していき、音楽は『POTO』からの引用。実は乗っていた台は『POTO』で"AIAY"後にファントムが乗っていたエンジェル像みたいな台で、下部部分がシャンデリアという、これでもかという『POTO』オマージュ。"Cony Island Waltz"中もひたすら見下ろすファントム。

"Cony Island Waltz"
一応、3部下が歌いだすが、最初から見世物小屋風味で、ロンドン版の過去を振り返るような演出は全くなし。二回目に観た時はスケルチのシルクハットが冒頭で脱げたため、途中で被せる人登場。やはり、あのオレンジ色のトサカはインパクトがあるので、かなりの出落ち。吊り橋に一通りのキャラが一列に並び、降りてくる。フレックの動き一つ一つで笑いが起こる。そして、兎に角派手で、映像による表現は一切なく、全て現物が登場。火を振り回したり、曲芸師が乗るような巨大車輪の自転車とか。また、小林幸子的な衣装はなし。その代わりが二幕のクリスティーヌか?また、白塗り巨漢というギャングルよりも面白キャラ登場。猿人形シンバル付きなんてのも登場。これはサルゴールを彷彿。また、マントの下に幾つもの足を持つ男が登場し、マントを剥ぐと子役が何人も登場。この男の子達は他日のグスタフ役?その子役達がメリーゴーランドに乗っている。そんなごった煮状態のコニーアイランドだが、それでも冷静に見下ろすファントム。

"Only For You"
3部下の紹介後、メグ登場。改変後のロンドン版と同じく、相変わらずのスローテンポでスタート。そのため、ALW節が分かるが、男性陣が普通にフリフリ衣装。新体操チックなピッタリ衣装じゃなくて良かった。

"Madame Giry Office"
メグとマダムのクリスティーヌを繰り返すメロディーで『POTO』でも聞いたことがあるメロディー。他にも『POTO』メロディーや"TIHYS"のクリスティーヌを繰り返すメロディーも。

"Pier69"
クリスティーヌは上手から赤い衣装で登場と微妙に地味。ただ、宝塚的な登場のため、つい拍手を期待。ラウルが若干オールバック。残念ながらグスタフは眼鏡無し仕様。ロンドン版の眼鏡っ子仕様がかなり衝撃だったので、ちょっと残念。
登場前に雷鳴が鳴り響き、雨と共に、黒い馬車が登場。でも、馬がいないのに動く馬車。あの狭い車内にいるためギャングルは窓から見える。スケルチは後ろから出てくる。で、グスタフとクリスティーヌは乗り込み、渋々乗るラウル。
その後、吊り橋に乗り、上から見下ろすファントムが『POTO』のメロディーを歌う。多分、『POTO』から歌うのはここが最初。この後、ロンドン版では映像で馬車が動いていったが、あのインスト音楽と共に巨大猿がファントムのいた吊り橋の上を馬車模型を押していく。ただ、下では上手からラウルがスタンバイするのが見える。

"The Hotel"
グスタフが貰ったサルゴールを蹴らず、アル中度も控えめなラウル。一回目に観た時はここで、グスタフが思いっきり外した。二回目はバッチリだったので、メロディーに変更は無い模様。そこはやはりファーストキャストなグスタフ。

"Beneath a moonless sky"
ファントム登場。やはり来るぞ来るぞ感強めな演出。で、ベランダに仮面が映る。
"BAMS"をかなり情熱的に歌うため、『POTO』のファントムも観たくなるポイントその1。気絶したクリスティーヌ抱えは優しく。しかし、直ぐにクリスティーヌが歌うため、起きるのが早いクリスティーヌ。
"Once upon another time"
二曲目は一転、かなりオペラチックなクリスティーヌに。

"Dear old fliends"
二幕"Bathing beauty"シーンの稽古。ここで、大道具係りが異様に登場。"Bathing beauty"の波セットを持って通ったり。次の"TBU"シーンのシャンデリアのセット用意も。
グスタフが頭の中のメロディーを弾くと、『私に似ている』と歌うファントム。そして、10歳と聞いて、『オーマイゴッド』とつぶやく。二回目は『マイゴッド』と軽目に。

"The beauty underneath"
"TBU"が始まった途端、クリスタルが何本出てきて、その中にハーピーや人魚、猿人間、爪の長い人間等がいる。そして、中央には女性が集まってきて、曲スタート。
そもそもシーン名も"Journey through coney"となっていて、"The beauty underneath"のキャストもファントム、グスタフに加えてアンサンブルも。

サビに二回ある"beauty underneath"は、音程を上げない編曲。それに伴い、グスタフの"beauty underneath"も上げない。そして女性陣のコーラスが入る。また、上半身が恐竜、下半身がケンタウルスの化石が登場。これは手押し車上半身骸骨の代わりか?

最後に顔をグスタフに晒すファントムだが、綺麗なメロディーを奏でる悲鳴(録音)。勿論『ホリブル、ホリブル』と騒ぎ、鬘無しの素頭に仮面を付けて再登場するファントム。基本的に鬘と仮面と二重構造なメイク。
で、メグがファントムの素頭に注目したり、クリスティーヌがその素頭を撫でたり。

その時のファントムの慟哭表現が半端ないので、『POTO』のファントムも観たくなるポイントその2。

そして、水晶の中から何故かマダム登場。グスタフに全て狂わされたと歌い、絶叫部ではそれに合わせて、水晶の中の化け物達も反応。銃は持っていない。


二幕

"Why does she love me?"
円形なバーで、下手に入り口がある設定。バーテンが何回かしゃがむため、つい伏線探しをしてしまう。勿論、あの音楽が鳴るまで、入れ替わりせず。
なお、ファントムは普通の鬘に仮面仕様。で、登場時はすっと立ち上がるのだが、後ろ向きでベストの端を直してから振り向くのがツボ。なお、ギャルソン・エプロンはしない仕様。

"Devil take the hindmost"
やはりファントムが高音域でないとはえない。

"Bathing beauty"
基本演出は同じだが、波セットが登場したりや水夫水着を着た男性陣にメグが座ったり。今更ながら、水着が歌詞に併せて変わっていくことに気づいた。で、最後は傘で隠すというスマートな演出。

"Before the performance"
クリスティーヌとラウルのシーンで、鏡に映るファントムの仮面がかなり不気味。音楽が変わると、扉が開かなくなり、またもベランダから登場するファントム。あの指輪を渡し、何故か退場は扉から。ベランダから出ないのは何故?
"Devil take the hindmost reprise"
所狭しとあちこちから登場する三人。吊り橋は二段階に分けて降りてくる。一回目に観た時はグスタフが弱かった。ここも二回目に観たグスタフの方がしっかり歌えている。最後、メグがグスタフを攫う。

"Love never dies"
孔雀セットは登場するが一体化はしない。
下手にファントム、上手にはラウル。で、最初上手を見ながら歌うクリスティーヌだが、ラウル退場後はファントムに向かって歌う。
"Christines dressing room"
ステージ後、いきなり乗り込むファントム。一方、起き手紙に薔薇一輪と去り方が相変わらず気障なラウル。
"Streets of cony Island"
グスタフが居ないことに気づき、コニーアイランド内を探すファントム。ここで、一通りの化け物登場。とりあえず、マダムを連れてくるが、メグが怪しいという結論にたどり着く。

"Pier"
オケピの上で桟橋がスタンバイ。
そこにメグがグスタフを連れて登場。その後、ファントムとクリスティーヌ、マダムが登場という展開は同じ。そして、説得に失敗し、発砲するが、それがクリスティーヌに当たる。
メグは動転して逃げてしまい、慌てて追いかけるマダム。
クリスティーヌがうたれた後、父親がファントムと告白され、グスタフ退場。で、ラウルを連れてきて、クリスティーヌを抱きしめ、ファントム上手に移動。このまま、オケピにダイブを期待したら、グスタフが近づき、仮面をとり、顔を触り、暗転。なお、髪は普通のタイプで、顔は客席には見えない演出。



ファントム。基本、Raminより低音域なため、大変に好みなファントム。というか、前回観たロンドン版『LND』のファントムもDerek Andrewsだったため、高音域なファントムを観たことが無いのだが。
"DTTH"に関してはラウルと音域が変わらないため、違いがそれほど際立たない。サビ部分は張り上げる。

観ていて、何度か『POTO』のファントムも観たくなる衝動に。結構、感情表現が激しい設定なため、ちょっと『POTO』のJOJ@ファントムを彷彿。
また、腰の位置が高いため、あの衣装がはえる。オペラグラスを忘れたため確認が出来なかったが、装飾の細かい衣装で結構、オシャレさんなファントム。
メイクは素顔・素頭を晒したのは、"The beauty underneath"のグスタフのシーンのみで、二幕も鬘に仮面。ラストもオペラグラスでチェック出来なかったのだが、鬘仕様で、素顔の方を客席と逆に向けていたため、あのメイクをしていたのか確認できず。終演後、ステージドアに現れるまでの時間が早いので、それほどメイクはしていないのかも。

クリスティーヌ。かなりオペラな発声。キャリアもオペラ畑な人なので、そういう人選か?そのためかなり大袈裟な演技。

マダムジリー。ラウルよりも先に来るクレジット。キャリアも『サンセットブールバード』のノーマや『CATS』のグリザベラなど元ヒロイン女優。ロンドン版を観た時、『LND』のマダムジリーに『レベッカ』のダンヴァース夫人を連想したが、こちらは『Wicked』のモリブルを彷彿。若干、悪人風味?

ラウル。ロンドン版に比べるとダメ人間度が低く、"Love never dies"後に、去っていく姿があまりに貴族。キャラ的にはこれくらいが良いのだが、『LND』的にそれではダメなような。


装置は降りてくる吊り橋があるというのが一番の特徴か。その吊り橋は二段階に分けて降りてくる仕組みで、両脇に繋がる通路があり、トータルで観ると螺旋階段なセット。"DTTHリプライズ"では、三人が遭遇しそうで会わないと効果的に使われる。また、ラストの悲劇もその上で行われ、発砲と供に手すりが外れるので、かなりビクッとなる。

もう一つの特徴が、顔に見立てた円形のセット。左半分に仮面のモニュメントがかかっているので、仮面をイメージしたセットなのだが、右目にあたる部分に目玉があり、それが青く光るのが大変に印象的。


改変後のロンドン版とシーン名が違う処がいくつかある。演出の特徴は何処かと問われると、ロンドン版を一回しか観ていないので、難しいが、敢えてあげるなら、絢爛豪華なセットで、抽象的なものを排除した具体的、写実的なセットか?ただ、Simon演出の真髄はこの後に観た『Hamlet』で実感することになるのだが、それはまた別の話。
そして、DVD化した場合、ビジュアル的に大変、派手な仕上がりになるので、売れそうな演出。

また、かなり感情表現が激しいファントムで、Benの音域に合わせた編曲になっているので、ロンドン版を観た時には感じなかったが、こちらの演出・編曲なら『POTO』のファントム役者でも成立しそう。というか、こちらのverの方がJOJ氏に合いそう。

左記のTwitterにパンフレットから説明に困る描写を写真でup予定。

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7 コメント

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sakura様 (dacho)
2011-08-27 12:19:21
拙いレポにコメントありがとうございます。少しでも、怖いファントム像を払拭して頂きますよう気合いを入れて書いてみました(笑)

舞台にいる時間は現WE版よりも長いと思います。観劇遠征なのにオペラグラスを忘れるという失態をしてしまい細かい表情は観ることは出来ませんでしたが、感情豊かなファントムでした。
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Unknown (sakura)
2011-08-27 11:39:45
dachoさま、詳細なレポありがとうございます。これほど詳細に覚えていられる、記憶力が羨ましいです。

あのTIHYSでクリスの肖像画が降りてきたら、思わず笑っちゃいますね(笑) WE版よりもファントムの登場場面が多いのでしょうか?
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SH様 (dacho)
2011-08-27 05:13:04
今年の夏もシアトルでUSツアー中の新演出レミゼに行く予定でしたが、今井@JVJの余韻を残そうかと。
また、低音好きなので、YTで"TIHYS"を聞いた瞬間、こちらに遠征を決めました。

まさかメルボルン版をDVDにするとは思いませんでしたが。

ただ、音楽音痴なので、ハイバリトンなのかまではちょっと。

出待ちが自分を含め、三人しか居なかったので、その時に聞いてくれば良かったです。
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LND (SH)
2011-08-27 00:31:45
ヴィジュアル的に相当凝っているのですね。そうかあ、そういう方面にお金を使うのもいいんだけど、もっと直す点があるだろう、と思います。

ファントムはハイバリトン位の音域の人ですか?バリバリテノールのラミンで刷り込まれているので、想像し難いです。

クリスはオペラの人ですね。歌が上手ければ演技が大袈裟、、。難しいですね。

オーストラリアまで豪版を見に行った日本人は少ないと思うので、大変貴重なレポをありがとうございました。
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LND (SH)
2011-08-26 18:00:42
レポありがとうございます。オーストラリア遠征なんて凄いです。私もこれから外出なので帰宅後ゆっくり読ませていただきます。
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Manon様 (dacho)
2011-08-26 05:16:16
コメントありがとうございます。かなり気合いをいれて書いていたら、こんなに長文に。色々言われているこちらのプロダクションですが、視覚的には楽しめました。
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Unknown (Manon)
2011-08-24 06:28:38
dachoさま おはようございます!

レポ待ってました!そして凄く面白いです。今ざっと見せていただきましたが、これから出かけないといけないのでプリントアウトして車中で読ませていただきますね。いやーなんかわくわくです。またお邪魔させてくださいね。しかしTBUとか不気味キャラとか生を観たくなってきちゃいました。
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