雨の日にはJAZZを聴きながら

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The Nuttree Quartet 『 Standards 』

2008年02月21日 22時36分10秒 | JAZZ
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John Abercrombie、Jerry Bergonzi、Adam Nussbaum、Gary Versace ら4人によるユニット “ The Nuttree Quartet ”の第一弾。発売はスイスに本部を構える新興レーベル“ Kind of Blue ”。このレーベルは、≪ 世界最高位のスタジオで世界最高位のミュージシャンによる演奏 ≫をモットーに、2トラックライブ録音に拘った品質本位の作品を制作しています。発足は2006年で、現在(2008年2月)までに25作品をリリースしていますが、個人的に記憶に残っている作品としては、2006年のフィル・ウッズの『 American SongBook 』、2007年のマーク・ソスキン『 One Hopeful Day 』や Los Angels Jazz Ensemble 『 Expectation 』 などでしょうか。どれも格調高い内容、抜群の音質、そして丁寧に作り込まれたパッケージで、所有することの喜びを味わえる素晴らし作品でした。

さて、本作ではゲイリー・ヴェルサーチはピアニストではなく、オルガニストとして参加しています。ジョンアバもバーゴンジーもオルガン大好きアーティストであるのはご存じだと思います。ジョンアバは90年代にジョンアバ=ナスバウム=ダン・ウォールのオルガン・トリオでECMに3作品を残していますし、バーゴンジーも同時期にバーゴンジー=ナスバウム=ダン・ウォールという全く同じ布陣で数多くのオルガン・トリオ作品をDouble Timeに残しています。そしてジョンアバは昨年あたりにジョンアバ=ナスバウム=ヴェルサーチのトリオでギグっていますし、さらにはジョンアバとバーゴンジーは昨年リリースされたバーゴンジのリーダー作『 Tenorist 』(Savant)(前項あり)で共演しています。“友達の友達はみな友達”といったところでしょうか。たぶんそんな経緯もあって、今回のカルテット結成に至ったと思われます。

タイトルが示すようにスタンダードやジャズメンのオリジナルを10曲演奏しています。聴くまではハードでファンキーかつグルービーな演奏を予想していましたが、やはりダン・ウォールではなくヴェルサーチがバッキングすると全体の音の印象がだいぶ変わるものです。スタイル的には似ていますが、ヴェルサーチの方がより洗練されていてクールにソロを決めるタイプです。右手のスピード感はウォールに軍配があがりますが。もともとヴェルサーチはピアニストだったので、やはり左手のベースラインはちょっと輪郭がぼけていま一つコード感が希薄な感じがします。同じピアニスト出身のオルガニストでも,ラリー・ゴールディングスあたりは左手も強力ですけどね。ただ、ジョンアバの浮遊系、スペース系の音響には非常に相性が良いようで、気持ちのいいノリを演出しています。バーゴンジーはいつもの調子でブリブリ・ゴリゴリの極太フレーズを連射し、なかなか良いのですが、90年前後の一連のRed Records作品あたりの凄さを知っている耳には、やはり少々物足りなさを感じてしまいます。バーゴンジーとジョンアバって、技術的には超一流なのに、日本ではあまり人気はありませんが、思うに,これぞバーゴンジーのキメのフレーズ、これぞジョンアバのキメのフレーズ、といったものがほとんどないんですよね。いわゆる盛り上がったところでの独特のストック・フレーズみたいなものが皆無なのが、彼らの印象を希薄にしているのでしょうか。つまりは、ストック・フレーズや手癖に頼らず、常に真剣に即興に取り組んでいるということなのでしょう。パット・メセニーでも、信じられないくらい巧いけど、ストック・フレーズの連結でソロを乗り切っている節がありますものね。バーゴンジーは近年、Savantから『 Tenor of The Times 』(2006)(前項あり),『 Tenorist 』(2007)と2作品をリリースしましたが、単純に好き嫌いで言い切ってしまうと、今回の最新作が一番好き、です。最後に、2月25日にヴェルサーチの新作がCriss Crossから発売になるみたいです。タイトルは『 Outside In 』。ドニー・マッカスリン(ts)を加えたオルガン・カルテットのようです。