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「かわいい」と日本文化のユニークさ(1)

2010年12月13日 | 母性社会日本
これまで「かわいい」文化と平和の関係ということで何回か書いてきたが、書いているうちに結局、日本文化のユニークさということで挙げた4項目がすべて、現代の「かわいい」文化に何かしら関係をもっているようだと思えるようになった。そこでこの4項目を「かわいい」論の視点から、もう一度、整理して復習しておくのも役に立つような気がする。

とりあえず、その4項目の確認。

(1)狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている。

(2)ユーラシアの穀物・牧畜文化にたいして、日本は穀物・魚貝型とで言うべき文化を形成し、それが大陸とは違うユニークさを生み出した。

(3)大陸から適度に離れた位置にある日本は、異民族(とくに遊牧民族)による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験をもたず、また自文化が抹殺される体験ももたなかった。

(4)西欧の近代文明を大幅に受け入れて、非西欧社会で例外的に早く近代国家として発展しながら、西欧文明の根底にあるキリスト教は、ほとんど流入しなかったこと。

まず(1)の、日本人の深層に生き続ける縄文文化については、以下で触れてきた。
日本文化のユニークさ03:縄文文化の名残り
日本文化のユニークさ12:ケルト文化と縄文文化
日本文化のユニークさ17:現代人の中の縄文残滓
『「かわいい」論』、かわいいと平和の関係(3)

1万数千年も日本列島に続いた縄文文化は、母性原理の優勢な森の文化であり、しかも稲作文明が流入してもそれと併存したり、融合したりしながら、日本人の心に生き続けた。その稲作文明は牧畜を伴わなかったため、豊かな森が残った。そのためもあり、砂漠、遊牧、牧畜を背景とする一神教の文明は、ついに日本列島に根を生やすことができなかった。近代文明は、男性原理に立つ一神教であるキリスト教から発展したが、日本は、近代文明を受け入れながらも、はるか縄文文化から続く母性原理の文明を捨て去ることがなかった。この母性原理の文明と「かわいい」文化とは、深層でつながっている。

次に(2)の穀物・魚介型の日本文化の関連は、以下で見た。
日本文化のユニークさ04:牧畜を知らない
日本文化のユニークさ05:動物とつらなる命
日本文化のユニークさ06:人間中心主義でない

要するに、日本に本格的な牧畜が流入しなかった、また遊牧民族との接触がほとんどなかったということなのだが、それによってキリスト教的な人間中心主義の生命観とは違う、縄文的な生命観、自然観が保持されたということである。動物と人間を厳然と区別する生命観は、日本人には受け入れられなかったのである。もちろんキリスト教が日本に普及しなかった理由はそれだけではないだろうが、人間=神の似姿として人間だけを特別扱いする思考が、日本人になじまなかったのも確かである。

人間と動物を区別するもっとも大切な能力は「理性」である。そして「理性」が発達していない子供は、不完全な人間とみなされたのであり、西洋では「子供っぽいものを退けることが至上命題とされた」(ドナルド・リチー)のである。西洋に発する近代文明は、「かわいさ」に高い価値を置く日本の文化とは対照的である。「かわいい」文化は、西洋文明がはるかケルト時代に忘れ去った何かを思い出させる、衝撃的な新鮮さがあったのではないか。

(3)異民族による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験を持たなかった。これについてはすでに論じたが、次回、補足しながら触れてみたい。(4)についても次回触れる。

《関連図書》
古代日本列島の謎 (講談社+α文庫)
縄文の思考 (ちくま新書)
人類は「宗教」に勝てるか―一神教文明の終焉 (NHKブックス)
山の霊力 (講談社選書メチエ)
日本人はなぜ日本を愛せないのか (新潮選書)
森林の思考・砂漠の思考 (NHKブックス 312)
母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)
日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)
アーロン収容所 (中公文庫)
肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公文庫)
日本人の価値観―「生命本位」の再発見




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