op's weblog

文字通りのログ。経験したことや考えたことの断片のアーカイブ。

ちょこっとレビュー:バイクレース版『まっすぐに蹴る』が炙り出すもの。『突っ込みハッチの七転び八起き』(八代俊二 著)

2023年01月27日 22時16分42秒 | Weblog
バイクレースが日本史上最も華やかだった時代(残念ながらそう言い切ってしまっていいでしょう)、その中心にいたライダーのうちの一人の自伝、というより回顧録、というより半分は告白本いや告発本。

いや~まさに1980年代からバイクにハマりだした者としては、この内容は面白すぎて刺激が強すぎて、こんなの出して大丈夫なの?と心配してしまう程です。グッドジョブ!

読んでみればわかりますが、すぐに想起したのがタイトルにもある『まっすぐに蹴る』。90年代日本の格闘技ブームの中心にいた佐竹雅昭氏の本ですね。

近頃はネットでMotoGPの内幕も結構記事になるので、「さもありなん」という出来事が多いのですが、多いという事はつまり時代が変わっても皆同じようなことで失敗し続けているわけです。(もちろん著者はじめ成功の部分が大きかったからこそ大きな業績を上げたわけですが。)

ただちょっと意外だったのは、あの頃スペンサーやマモラ等の(つまりホンダチームの)メカニックとして著名だったジョージ・ブクマノビッチ氏がイタリアのカジバへ移籍した後のインタビューで、「カジバの連中は複数の新パーツのテストを同時にやろうとするので正確な評価ができない。」と愚痴っていたのですが、実はホンダのワークスチームも(ある時は)同じことをやっていたんですね。

もちろん著者がWGPで走ったレーシングライダーなので、有名選手に関するエピソードや評価、トレーニング、ライディングの分析等その方面の興味深い記述も多いです。(そう言えば「敬称」に関する面白い伏線と回収があります。)「必要にせまられて」開発ライダーにもなった(なってしまった)著者ならではのエピソードも(様々な世界チャンピオン達と対比させながら)楽しむことができます。


ということで、内幕暴露の是非以外にも評価が分かれるかもしれない本ですが、徹底的に「いち当事者」の視点で書かれた貴重な資料としての価値は高く、とても人間臭い、ある意味日本人臭い、「歴史」のスナップショットとして僕は楽しむことができました。もしかしたらこれはフェンスの外、テレビの前にいた側の特権なのかもしれませんね。(この本に「登場しなかった」(ちょっと後の世代の当事者である)本間利彦氏の感想を是非聞いてみたい!)


それから、MotoGPに関するツイートでも度々指摘しているのですが、ライダー(プロアスリート)を守りともに戦ってくれる「代理人」やその他で構成する「チーム」の存在が如何に大事か必要かということがこの本を読んでもよくわかると思います。2023年は土曜日にスプリントレースを追加するという、アホな決断をしたMotoGPの興行サイドですが、ますます厳しくなる世界の経済環境、二輪の良さを消す技術の導入が続く中で、ライダー(人間)は機械(マシン)の一部として、それとも商業システムの一部として、それとも「ユーザー」が猛烈な勢いで消費する「コンテンツ」の一部として、融けて消えゆく間際にいることに気づく関係者が増えてくれることを願ってやみません。
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今日のひとこと: Microsoftはチェインバーを目指せ #ChatGPT #OpenAI #翠星のガルガンティア #ターミネーター #DUNE

2023年01月15日 22時59分51秒 | Weblog
依然事態は猛烈な勢いで進行しているので今更ですが、僕もChatGPTの用例を目にした時「いよいよ来たか」と思った一人です。

ChatGPTの最も恐ろしい所は、自然言語で対話しながら回答/結果の質を上げられることで、これは実質上ほぼ人間です。

で、「ツール」としては、「普通の仕事」で要求されるそこそこのレベルの回答/結果を早い段階からほぼ瞬時に出してしまうので、この時点で世界のホワイトカラーの大部分は事実上用済みになってしまいました。ChatGPTを「使えない」という人は、乱暴に言えば対話の仕方/質問のし方が悪いか、単に現実逃避しているだけです。

昨年から始まった急速な金融収縮で、米国を中心にIT系企業で解雇が進んでいますが、「フリー」になった人達のうち少なくない数がAIを使ったDXツールやサービスを開発するでしょうから、解雇した側が解雇される側になるのも時間の問題です。


ちなみに。MicrosoftはOpenAIに大規模な追加出資をして、「Bing検索にChatGPTを組み込む」と宣言したそうですが、この時点で検索サービスに組み込んでも、クルマの自動運転ぐらい危なっかしくて訴訟リスクばかり大きなものしかできないのは目に見えています。だから「宿願だった打倒Google」は当て馬で、Azureのメニューとしての提供と、MS Officeをはじめとする生産性ツールに組み込んでゆくことになるでしょう。


いずれにせよ、このままいくと、世界経済の大幅な収縮(失業率は高収入のホワイトカラーや専門職からどんどん上がっていきます)、国内・国際紛争・戦争の大きな要因になることは目に見えています。であれば、AIが世界の主役となる『ターミネーター』シリーズや、一度「破滅」を経験し、人間を強化することでAIを(実質的に)排除した世界をつくる『デューン』シリーズをメインシナリオと考えるべきなのか?

アニメの『翠星のガルガンティア』その意味でとても興味深い作品です。『ガルガンティア』に登場するのは「パイロット支援啓発インターフェイスシステム」として機能する汎用型AI『チェインバー』で、主人公の登場するロボット型機体に組み込まれ、機体の管制と同時に業務支援を行うパイロットの良き相棒です。ナレッジベースや分析・推論能力も凄いのですが、外部環境に合わせて学習を続けてゆきます。TVシリーズでは、『チェインバー』は主人公とともに文字通り成長してゆき、最終回では、主人公が「一個人」としての人間性とそれ故の生きたいという願いを回復するまで成長したことを確認し、自らを犠牲にすることで彼を守ります。OpenAIとMicrosoftの担当者には、少なくとも第1話と最終回は観て欲しい作品です。チェインバーは良い「指針」になるのではないでしょうか。

ところで、『翠星のガルガンティア』には更に興味深い続編が小説『翠星のガルガンティア ~遥か、邂逅の天地~』として存在します。この小説は、機械文明を高度に発展させた人類と、危機に対応するため、生物として適応・進化を遂げた人類がお互いの存在を認め合い、共に歩み始めるところで終わります。

例によってどんくさい僕は後になって気づきました。

大海原が舞台の『翠星のガルガンティア』はフランク・ハーバートの『デューン』に対する(もちろん弁証法での)アンチテーゼだったのか、と。
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今日のひとこと: 個人的キラーフレーズ? 2022年版

2023年01月12日 22時05分05秒 | Weblog
「がんばれ宇宙!」by 小松左京
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