op's weblog

文字通りのログ。経験したことや考えたことの断片のアーカイブ。

Stand Alone Complex

2011年03月19日 01時03分19秒 | Weblog
輪番停電と言うけれど、例に漏れず同一地区が4つのグループに入っていていつ停電するかまったくわからないまま。


それにしても、初めて昼間原付スクーターで外出したとき、物凄く快適だったことには驚いた。

通勤ラッシュや都心のような過密地帯ではまた状況が違うのだろうが(もっとも、過密度が上がると自動車を使う意味がなくってくる)、信号の電気どころか、乗物にとっても物凄い省エネになった。

信号待ちが無いからだ。

交差点に来ると必然的に徐行に近い状態になるのだが、運転者がみな気をつけてお互いの動きや顔色を見ながら余裕をもって通行しても、信号があるときよりずっと早く抜けられる。場所によっては結構順番を待ったところもあったのだが、それでもいつも40分かかる距離を結局30分弱で走ってしまった。交通量も普段と変わらず、事故や交通がらみのトラブルは数日経った今までひとつも見ていない。もちろん、スピードの出やすい大きな交差点等要所では警官が交通整理に立っているのだが、個人的な印象としては、「信号が常時必要なポイントは殆ど無い。」ちなみに危ないと思った連中は、信号があるときでも危ない動きをするタイプの運転手と、“何も考えていない子供”。だから信号のある無しは実質的に関係ない。


「信号が青だから通行する」のではなく、「安全と確認できたから通行すると判断する」のだから。


信号が働かないことで、僕は(僕も)明らかに運転時の注意力と慎重さはアップしたし、どのクルマもいつもよりスピードを出していなかった。いつのまにか信号という上位の管理システムに頼りきり、更に、とっくの昔にクレイジーなほど過剰になっている走行性能、そしてそれを取り繕うために高度な電子化、大型化が進んだ自動車やバイクによって、乗り手がいかにスポイルされ、危険な存在になっていたことか。


必要なのはつまるところ、自分と周囲を冷静に観察し続ける慎重さ、そして自分と相手を守るために尊重しあう意識だけだった。それさえ維持すれば、面倒でエネルギーを食う管理システムよりもずっと効率的な、自律的で動的なシステムが自然に実現できたわけだ。


「それは人間のことだと思う」。今丁度WOWOWで再放送している『攻殻機動隊』のTVシリーズのタイトルであり、このシリーズの一貫したテーマである『STAND ALONE COMPLEX』という言葉について監督の神山健治氏はそう語っていた。

『STAND ALONE COMPLEX』、元々独立した(自律した)要素で構成されている人間、そのより大きなフラクタル模様である人間社会。カッコつきの快適さ、を自ら選択したと思い込み、『STAND ALONE COMPLEX』であることを意識しなくなった、もしくは自らそれを放棄してしまった者は、もはや人間と呼べるのか?



自宅で過ごした停電の夜は更に快適だった。自己溶解の阿鼻叫喚渦巻くインターネットや放送メディアから自分の頭と時間を取り戻し、布団の中で小さな懐中電灯を頼りに本を読む快感と充実感。メディアに限らず、自分にとって本当に必要なものは何か、ということを久しぶりに冷静に考える時間を持てた僕は、不謹慎にも「サンキュー、停電!」。
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猫の首に鈴をつける

2011年03月14日 11時16分38秒 | Weblog
ここ数日の「そんなこと言ったって原発がなければ日本は成り立たない」と言う「一般人」の発言や、「一般人が被爆といったってこの程度」と語る、原子力科学研究者を中心とする多くの「専門家」の事故解説を見聞きしていて感じている強烈な違和感。その原因は、確実に命を縮める(即死もあり得る)と知りながら現場で作業する人たちが常にいることを前提で語る連中の思考回路だ。仕事だとは言っても彼らも人間である。まともに考えれば、いくら事件当時は英雄視されようとも、「あんな危ない所へ行くのはやっぱり嫌だ」と言い出しても不思議はない。「この程度」で済んでいるのは、そうした共同幻想に近い「セーフティネット」に辛うじて支えられている結果なのだ。

その意味では、圧力を逃がすためのバルブ解放作業や冷却のために利用した海水の処理に話が及んだとき、「とにかく最悪の事態だけは避けねば」と思わず口を濁した原子力資料情報室のエンジニアが、恐らく今までで一番正直で「誠実な発言」をした専門家だろう。

「結局無事に済んだ」と言っても、ちょっと何かあるたびに「タブー」に頼らなくてはいけないシステムに頼る状態は、やはり異常だ。
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