シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ヘルプ~心がつなぐストーリー

2012-04-04 | シネマ は行

ずっと前から楽しみにしていた作品です。まず、「アグリーベティ」で強烈な役をやっていたオクタヴィアスペンサーがアカデミー賞助演女優賞を取ったのが何よりも嬉しかった。そして、予告編でちょっと見せすぎじゃないの?と思って不安だった物語のほうも予告編で見るよりさらに素晴らしく嬉しい誤算でした。

1960年代、アメリカ・ミシシッピー。黒人差別が色濃く残る地域。大学を卒業し作家を目指しニューヨークの出版社への就職に失敗して地元に戻ってきたスキーターエマストーンは高校時代の同級生たちと再会する。彼女たちは裕福なお嬢様たちで、結婚して婦人会に入り、子供を産み、ブリッジをして遊ぶという絵に描いたような生活を手に入れていた。彼女たちの子どもを世話するのはお手伝いさんの黒人メイドたち。パーティの準備も家のこと全般をするのも彼女たち。彼女たちは雀の涙の賃金で白人家庭の“所有物”として働いていた。自分たちも子供のときにはそのメイドたちに面倒を見てもらい、自分が親になったら子供の面倒を見させている彼女たちに、“不潔だから”と家の外にトイレを作りそこで用を足させる法案をグループのリーダー格のヒリーブライスダラスハワードは考え付く。複雑な面持ちでその提案を聞いているスキーターだったが、ヒリーの家のトイレを使用したメイドミニー(オクタヴィアスペンサー)がクビになったのをきっかけに黒人メイドの実態を本にしようと考える。報復が怖い彼女たちは口をつぐむがその中の一人エイビリーンヴァイオラデイヴィスがついに重い口を開いてくれる。

エイビリーンがスキーターに話してくれるようになり、その後ミニーもインタビューに応じてくれる。そして、他のメイドたちも最終的にスキーターに話をしてくれることになった。このメインストーリーとともに進むのがヒリーの家をクビになったあとにミニーを雇うことになる白人女性シーリアジェシカチャスティンとの交流だ。シーリアはヒリーの高校の時の元カレと結婚したためにヒリーのグループから無視されている。シーリアはヒリーたちのような上流階級の出身ではないので、ヒリーはそれを理由にしているが、実際にはただの逆恨みだ。シーリアは家事が苦手なので旦那さんに愛想を尽かされないようにミニーに助けを求めてきた。シーリアは上流階級の人たちとは違ってミニーを差別しない。ミニーが断ってもミニーと同じテーブルでご飯を食べる。そんなシーリアとミニーの交流にほっとさせられる。

スキーター自身も自分を育ててくれた黒人メイドコンスタンティンシシリータイソンのことを書こうとするが、彼女はスキーターが大学に行っている間に実家の母アリソンジャネイにクビにされていた。コンスタンティンは歳を取ったから親戚の家に行ったとごまかす母だったが、やがて真相があきらかになる。

率先して差別をするヒリーのような人、差別するつもりはないが他の白人の手前そうせざるを得ないスキーターの母親のような人、その状況に疑問を持つスキーターのような人、無邪気に差別のことなど考えないシーリアのような人。この物語には同じ差別する側の立場さまざまなタイプの人が登場する。ヒリーのような人もそれが普通で育ってしまった感があり、ある意味では憐れなのであるが、それは差別される側からすれば知ったこっちゃないってことになるだろう。ミニーやエイビリーン、その他のメイドたちの話を聞けばそんな憐みなど吹き飛んでしまうほどの扱いをされていることが分かる。

メイドたちがスキーターに語ることによって黒人差別のひどさが明らかになるのだけど、この作品のすごいところはここまで重いテーマにも関わらず、ところどころに笑えるシーンが盛り込んであるということだ。ミニーがヒリーにした“復讐”に関してはある意味笑えない!のだけど、笑っちゃいけないのかもしれないけど!やっぱり大笑いしちゃうのだ。内容は言わないほうがいいと思うので伏せますが、その一連のシーンではちょっと認知症の入ったヒリーのお母さんシシースペイセクが超いい味出してます。この“復讐”をネタにかなり笑えるシーンが続くのだけど、ワタクシはその中でも"Two Slice Hilly"(2切れのヒリー)が一番笑った!(見た方には分かります)

かなり笑ったんですが、実はかなり泣きもしました。もうだだ泣きってくらいに。泣けるシーンはたくさんあるんですが、特にエイビリーンが白人を憎みつつも白人家庭の小さな娘に注ぐ愛情にはかなり泣きました。母親はメイドに子育てを任せっぱなしで子供を抱きもしない。自分が帰ったあとはまた自分が来る次の日の朝までおしめも替えもしない。そんな子供にエイビリーンは精一杯愛情をかけて面倒を見ています。「彼女(その家の母親)は母親になるべき人間じゃない。私がこう言ったと書き留めて」とスキーターに言うシーンが印象的でした。そして、不当に解雇されたときもその子の母親に向かって「“私”の子をお願いするわね」と言って去っていくエイビリーンの深い愛情に心を打たれました。

主演女優賞はメリルストリープに持って行かれちゃいましたけど、ヴァイオラデイヴィスの抑えた演技も素晴らしかったし、いわゆる悪役を演じたブライスダラスハワードの憎たらしい演技もすごく良かった。正直ここまで良い演技ができる人っていうイメージはなかったんです。ヒリーの役は非常に難しい役だと思うんですが、すごくうまく演じていたと思います。そして、新星ジェシカチャスティンも良かったなぁ。ここんとこ立て続けに色んな作品に出てますよね。なんと脚本も書く才女だそうなんですが、シーリアの役もともすればただのアホに映ってしまう難しい役どころだと思いますが、彼女が演じるとすごく愛らしいんですよね。スキーターのお母さんのアリソンジャネイも良かったしなぁ。とにかく女優陣のレベルがすごく高いです。エマストーンは可愛いのに口の形が惜しいね。喋ると急に可愛くなくなる…演技は上手だと思いますが。

上映時間146分と長めですが無駄なシーンは一切ないばかりか、まだまだ見ていたいような気持ちにさせられるお話でした。実は頭が痛くなるくらい泣いちゃいましたよ。


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