1978年にバザリア法というものが公布されたイタリア。精神病院を廃止して、地域の精神保健サービス機関で精神病患者のケアが始まる。
1983年、ミラノ。熱心だが過激すぎて労働組合を追い出されたネッロクラウディオビシオは、精神病院を追い出され行き場のなくなった患者たちの協同組合に派遣される。日がな一日何もすることがなく、薬でぼーっとしている元患者たち。単純な切手貼りの仕事を割り当てられてはいるが、生きがいを持てないまま日々を暮らしていた。
ある日、ネッロは切手すら満足貼れないと担当のデルベッキオ医師ジョルジョコランジェリから思われていたジージョアンドレアボスカとルカジョヴァンニカルカーニョが切手で芸術的な模様を作っているのを目にする。それをきっかけにネッロは彼らにも何かできることがあるのではないかと協同組合で会議を開き、寄せ木細工の団体を立ち上げることにする。
精神病患者たちに責任ある仕事は無理だとデルベッキオ医師には反対されるが、彼らの薬を減らして頭がぼーっとしないようにしてやるべきだと主張するフルラン医師ジュゼッペバティストンの力を借りて、恋人サラアニータカブリオーリのコネもフル活用して、ブティックの店舗の床を寄せ木細工で仕上げる。その出来栄えの素晴らしさから次々と仕事が舞い込むようになるのだが…
ネッロが最初から患者たちに対して敬意を持って接していたのがすごく好感が持てた。ネッロのその態度のおかげで患者たちもすぐに心を開いてくれる。いままで自分たちの意見が重要視されたこともなく、薬のせいでずっとぼけーっとしていた患者たちが、会議を開き意見をきちんと聞いてくれるネッロに絶大の信頼を寄せるのも当然と思える。
このお話がどこまで本当の話に沿っているのかは分からない。ひとつひとつのエピソードに関してはフィクションの部分が多いのかな。ユーモラスな描写が多く、あったかい気持ちになるシーンが多い。コメディ仕立てにはなっているが、精神病患者の抱える家族の悩みや性の悩みなどもまっすぐに表現して、逃げることなく見せているし、日本でありがちな「精神病患者は天使」みたいな必要以上の美化もないところにリアリティがあって良かった。
そして、何よりも患者たちを演じる役者たちが誇張しすぎず、彼らの特徴を捉えていて素晴らしい。
後半、ひとつの悲劇が訪れ、それに関しては悲しい出来事だったけど、それはジージョが自分の人生を生きた結果であって、薬でぼーっとしていたほうが良かったとは思わない。ネッロも含めて彼らはくじけそうになるが、それでもやはり立ち上がって前に進む姿に感動した。それを後押ししてくれたのがデルヴェッキオ医師だったことも嬉しかったな。彼は患者たちの自立に反対していたけど、それは患者たちのことを考えてのことであって、組合が成功したら、ちゃんとそれが患者たちに良い影響をもたらしたことを認めてくれた。
この物語を見ているとやっぱりどんな人でも、誰かから必要とされたり、責任を任されたりすることが、人生において大きな意味を持つのだなと感じる。
あまり、難しいことは考えず素直に受け入れるだけで感動できる物語だと思います。
オマケバザリア法に関しては現在の日本の状況も含めて色々と興味深いトピックでありますので、興味ある方はググッてみてください。
「映画」もいいけど「犬」も好き。という方はこちらもヨロシクです。我が家の犬日記「トラが3びき。+ぶち。」
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