シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

レヴェナント~蘇りし者

2016-05-12 | シネマ ら行

上映時間が長いし、アレハンドロG.イニャリトゥ監督の作品はずっと好きだったけど、「バードマン」はワタクシはいまいちだったし、映像も暗そうだし、どうなんだろう?という気持ちはありつつ、やっぱりずっとずっと見てきたレオナルドディカプリオがアカデミー賞を取った作品は見逃せないというちょっとご祝儀鑑賞的な気持ちもあって見に行きました。

アメリカの開拓時代、白人がネイティヴアメリカンたちを蹂躙していた時代。毛皮商人たちはネイティヴアメリカンと暮らすヒューグラス(レオ)をガイドに荒野で毛皮を取っていた。そこをネイティヴアメリカンに襲撃され仕方なくボートを捨て山道を行くことに。その道中の狩猟中にグラスはクマに襲われ瀕死の重傷を負う。仲間を捨てては行けないとグラスを乗せた担架を運んで歩く一行だったが、道が険しくグラスの容態も悪くなるばかりで、ヘンリー隊長ドーナルグリーソンは報酬を出して、グラスを看取るための数人を残し後は全員先に進むことにした。

残ったのはグラスとネイティヴアメリカンの妻の間の息子ホークフォレストグッドラックとグラスを慕っていた若者ジムブリジャーウィルポールター、そして報酬目当てのジョンフィッツジェラルドトムハーディだった。

フィッツジェラルドはグラスが死ぬのをいまかいまかと待っており、なかなか死なないグラスに2人きりになった隙に「楽にしてほしいだろ。してほしいならまばたきをしろ」と迫る。目をつぶったグラスの口に布を詰め込む。そこへグラスの息子ホークが戻り口論となり、フィッツジェラルドはホークを刺殺してしまう。体が動かず抵抗できないグラスは息子が殺されるのをただ見つめるしかなかった。

ホークの死体を隠した頃ブリジャーも狩りから戻ってくるが、フィッツジェラルドは「ホークはどこかへ行ったままだ。下からまた追っ手が来ているのが見えた。すぐに逃げよう」と嘘をつき、グラスを半分土に埋めてその場を去る。

どうせ放っておけば死ぬだろうとタカをくくっていたフィッツジェラルドだったが、グラスは土の中から匍匐前進で這い出していた。ここからのレオがすごい。あんなに死にかけて匍匐前進で進んでいく主人公っていままでいたかな。動くたびに体中に激痛が走って「うー、ぬー、ぐおー、はぁはぁはぁ」みたいはうめき声と息遣いだけの演技。なんかもうよく分からないけどとにかく痛い。

しかも体だけじゃなくて自然にたった一人放り出されてるから、そこでのサバイバルが半端ない。歩けるようになるまでは腕だけではいずり回って、首の傷を自分で焼いて、木の杖でなんとか歩けるようにはなったものの、彼もネイティヴアメリカンに襲われそうになって川を流れて逃げ出したり、食糧がないから死んだ動物の骨にこびりついた肉をむさぼったり、木の根っこを食べたり。そしてほとんど一人きりだからセリフもなく、聞こえてくるのはレオの息遣いとうめき声だけ。それでも映像のすごさとレオの緊迫感で退屈はしなかった。でもやたらと生肉とか生魚とか食べていたんだけど、火は普通に起こせるみたいだったから、焼けばいいのに、、、と思ってしまいました。めちゃくちゃお腹空いてたから?

生々しいシーンがたくさんあって圧倒されるのだけど、中でも一番すごかったのはフランスの一行から奪った馬に乗っていて、ネイティヴアメリカンに襲われて馬と一緒に崖から転落するシーンがあるんです。馬は死んでしまうんですが、グラスはなんとか生き残る。そして、極寒の夜を過ごすためにその死んだ馬の内臓を取り出して、服を脱ぎ馬のお腹の中に入って寝るあのシーン。あそこはもうダメな人は吐きそうになるかもしれません。ワタクシは馬のお腹あったかいから手をあったまればいいね。なぁんて思いながら見ていたら全身入って行っちゃったから、わー、ワタクシ甘かった。と思いました。朝になって、その馬に別れを告げるグラスがさりげなかったけど、ちゃんと感謝しているのが分かりましたね。

息子を殺されたグラスとしてはフィッツジェラルドに復讐したいと思うのは当然だと思うけど、ワタクシはグラスを置いて行こうとしたフィッツジェラルドの気持ちも分かります。あんな場所でネイティヴアメリカンに殺されるかもしれないという状況で、お金を稼いで家族の元に無事に帰りたいという気持ちは分かるし、そのためにはグラスが足手まといだったことも分かります。それでもあの時ホークを殺す必要はなかったと思うし、ホークを殺したフィッツジェラルドの心の底にはネイティヴアメリカンへの差別心というものがあったのかなと思います。それとそもそものフィッツジェラルドの凶暴性というものもあったんだろうと思います。

最後にグラスが自らの手でフィッツジェラルドを殺さず、その運命を天に任せたというところはなんだか少しほっとしました。こういう復讐劇だとたいてい「もうさっさと殺せよー」って思うし、犯人を殺しても死んだ者は帰ってこないとかそういう慰めは、ワタクシはあんまり納得できなくて、それでも溜飲は下がるんじゃない?って思うんだけど、今回はなぜだかほっとしました。なんでなんだろ。あそこまで過酷な状況で生き残ったグラスが他者の命を奪うというのがイヤだったのかな。

まぁとにもかくにも壮絶・過酷な作品でした。レオよく頑張った。もちろんその他のキャストも撮影クルーも大変な経験だったと思います。色んな賞をもらったり、作品自体の評価も良く、報われたと思っているんじゃないでしょうか。

オマケ(追記)レオがついに主演男優賞をとったということで、その陰に隠れてしまったような形になっていますが、イニャリトゥ監督の2年連続アカデミー賞監督賞受賞ってすごいことですよねー。史上3人目だとか。とか言いながらワタクシもすっかり書くのを忘れていて追記しています。すみません。



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