シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

おみおくりの作法

2015-03-19 | シネマ あ行

地方公務員のジョンメイエディマーサンはロンドンの自分の担当する地区で身寄りのない方が亡くなるとその事後処理をする仕事をしていた。さっさと火葬を済ませ埋葬してハイ終わり、という仕事の仕方もできるが、彼は亡くなった人の身の回りの物を調査して家族や親せきがいないか、どの宗教を信仰していたか(葬儀の方式のため)などをきちんと調べ、調べ尽くしても最後まで身寄りが分からなかった、もしくは身寄りがいても葬儀をするほど親しくなかったなどが判明して初めて埋葬するというとても丁寧な仕事をしていた。彼は自分が埋葬した人々の写真をアルバムに丁寧に貼っており、その様子からも彼がいかに亡くなった方々に敬意を表しているかが分かる。

しかし、上層部は経費削減のため彼の仕事に不満で20年も務めてきた役所を簡単にクビにされてしまう。その直前に亡くなった男性の調査だけはさせてもらえることになり、少ない手がかりを持ってジョンは彼の人生を追って行った。

まぁぁぁぁ何とも地味ぃぃぃぃな作品です。ジョンメイの仕事ぶりや家に帰ってからの生活が描かれているのだけど、彼は独り暮らしで特に仕事の後に友人と飲み行くということもなく、食事もいつも決まったものを決まった時間に一人で食べて終わりだ。でも、ものすごく地味な雰囲気と展開のわりに退屈はしないというのが少し不思議な作品である。

ジョンメイは残された最後の仕事をやり遂げるため、様々な人に会いに行く。亡くなった男性の元妻、縁遠くなっていた娘ケリージョアンヌフロガット、元同僚、ホームレス仲間などなど。みんな長い間会っていなかった人が亡くなったと急に知らされてわざわざロンドンまで葬儀のために出かけるなんてしたくないと言う。いくら市が費用を負担してくれると言ったって仕事だって休まなくちゃいけないし遠いしな~といったところだろう。そりゃあそうだよね。

ジョンメイが会いに行く人々は葬儀に行くことはしないまでも、生前の男性について思い出を語り、服役していたこともあるし、決して立派な人間というわけではなかったらしいけど、それでもそれぞれがジョンメイのおかげでその男性について色々とまた考える機会を与えられてまた感慨深い思いもしているようだった。

ケリーとジョンがなんとなくいい感じになるという展開があって、えーーー?こんな歳の人と???と思ったけど、ジョンはまだ40代半ばの設定だった。(それでもケリーとは10歳くらいは離れているという設定だったと思うけど)ジョンって動きもゆっくりだしあまりにも地味ですごく歳取って見えていたので少しビックリしました。

激しくネタバレしてしまうけど、ケリーに次会うときの手土産を買ったジョンはバスにはねられて亡くなってしまう。途中からなぜだか分からないけど、この展開は予想していたので、やっぱりかーとは思ったのですが、この予想はあまり当たって欲しくはなかったかも。

身寄りのないジョンの葬儀。教会の祭司以外には誰も参列者はいない。亡くなる前に最後に担当した男性に自分用に買っていたお墓の場所を譲ってあげていたジョンは合同墓地に埋葬される。そのバックで行われているその男性の葬儀。ジョンが会いに行っていた彼の身寄りの人たちが全員参列してくれていた。そして、その葬儀をきっかけに参列者たちが知り合いになり、そこから始まる人の縁もありそうな雰囲気だった。ジョンの地道な努力の成果が現れた葬儀の一方で一人ぽっちのジョン。

そんなジョンのお墓の周辺にこれまでジョンが埋葬した人たちが次々に集まってくる。というファンタジックな映像が流れてきてちょっと驚いたのだけど、ジョンが最後にみんなに感謝されていたということが分かって良かったと思う。

もちろん、これまでそんなに楽しみもなかった(であろう)ジョンがケリーと出会ってさぁこれからって時に死んでしまうという展開は悲しかったけど、映画の展開としてはアリかなとは思えた。ジョンがやり遂げてきたことが彼は死んでしまいはしたけれど報われたようなラストで良かった。

オマケ不謹慎かもしれませんが、この作品に登場する後ろが全部ガラス張りになった霊柩車がカッコ良かったです。



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