シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

宮尾登美子自伝的四部作

2011-03-07 | 

「櫂」13歳までの幼少期。
「朱夏」満州に渡り引き揚げるまで。
「春燈」13歳から17歳まで。
「仁淀川」満州から引き揚げてから、農家での生活、執筆を始めるまで。

執筆の順番も時系列ではなく、ワタクシが読んだのは「朱夏」「櫂」「春燈」「仁淀川」とこれまたバラバラで、「春燈」と「仁淀川」の間に、「岩伍覚え書」という彼女の父親の日記をまとめたものを読んだので、さらに時間軸がバラバラだった。

宮尾登美子の書く小説は文体が読みやすく、内容も興味深いものが多いので好きだ。

中でもこの自伝的小説はとても興味深い。彼女が芸妓の紹介をやっている家に生まれついたことや、母親とは実の親子ではなかったこと、彼女自身の性格もあり、波乱に満ちた人生を送っている。ワタクシの場合は初めに続いているものと知らず「朱夏」を読んでしまったが、その後の「櫂」「春燈」と彼女の人生の空白を埋めるように読んでいくことができ、もともと執筆が時系列でないことからか、バラバラに読んでもなんの違和感もない続き物になっている。

そして、さらに「櫂」よりも以前の父親の人生の空白を埋めるのが「岩伍覚え書」で、これは父・岩伍が記した日記をまとめたものだから、彼の生い立ちというものではないが、芸妓の紹介業をやっている上で起こる一般人にとっては非日常の世界が繰り広げられ、岩伍の独特の文章もあり、これまた非常に面白い読み物になっている。

母親にあまりに過保護に育てられてきた彼女は、我の強い子に育ち、わがままな部分も多いに持ち合わせてはいるけれども、現代に生きるワタクシたちにとっては当然のような主張もたくさんあり、手に負えない子でありながら共感できる部分もたくさんあった。戦前に生まれた子にしては周囲に流されず、自分の主張をきちんとできる子であった彼女にはやはり並々ならぬ才能があったということなのかもしれない。

宮尾登美子の半生、それとともに生きた両親や周囲の人の人生を4冊に渡り読んできたことで、登場人物に対する愛着も湧き、「仁淀川」で母親が亡くなるシーンでは電車の中で読んでいたにもかかわらず泣いてしまった。

宮尾登美子の著作の中ではこの他に「篤姫」「鬼龍院花子の生涯」「一弦の琴」など素晴らしい作品が多いが、著作が非常に多い方なので、まだまだ読んでいない作品がたくさんあるのでいろいろと読んでいきたい。


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「本」もいいけど「犬」も好き。という方はこちらもヨロシクです。我が家の犬日記「トラが3びき。+ぶち。」



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