Chris's monologue

二匹+ONE?のクマンズとChris(謎の生命体)の怠惰な生活

七福神 岩手屋

2010-02-09 07:35:55 | ビバ☆オヤジ酒場

東京で、ぼくが遊ぶ場所として、もっとも好きなのが湯島天神下。
ここは東京でも数少ない江戸情緒を感じられる場所なんです。
といっても建物のことではありません。江戸を感じさせてくれるのは、ここに集まる「ヒト」がそう感じさせてくれるんです。
今回のテーマは「粋」。
他の街ではなかなか見なくなりましたね、粋なオトナを。
ぼくは、ここ“七福神 岩手屋”に来る前に、不忍池を眺めながら屋台でおでんを肴にをやってました。
ぼくが屋台に来る前に、なんか言い合いしてる、妙なふたり連れのおじさんが、おでん屋からでてきます。
聞くところによると、ご主人が追いかえしたのこと。
「勘定はいらねえから、とっとと帰ってくれ!」
くー、聞きたかったなぁ。(そんなの、むかしのドラマでしか見たことないもん)
どうやら、値段が高いと、散々飲み食いしたあとに、ぶーたれたらしいんです。
どう見ても70歳は越えてるようなおじさんたちが。
信じられないですよね。
その話を肴に(男山)をチビチビやっていると、ひとり店主を相手に飲んでいたお客さんがお勘定をしたさい、「こちらに一杯ご馳走してやって」と、お釣りからよれよれの千円札を店主に渡し、ぼくに奢ってくれました。
かっこいい!まるで映画『男はつらいよ』に出演してる気分です。
つまり、見ず知らずの無銭飲食者の飲み代を、少しでも肩代わりしようと見栄を張ったわけです。
不景気のこの時代に、なんとも勇ましい。
こんな粋なオトナが、まだ日本にいてくれるのがうれしいかぎり。
世知辛い世の中になればなるほど、こんな粋なオトナが必要とされるのでしょう。
あとにつづくぼくたちの世代は、こういうオトナを見て、それを「粋」と感じ、後世に残していかなければならないのでしょう。
そういうオトナを実際に身近に感じられる場所(少なくなりましたね)は、ここ湯島がベストポイント。

ちょっと話が長くなりました。
では、店主が惚れ込むこの一本!
看板酒で一献。


【酒豪が惚れた岩手の地酒にとっぷり酔いしれる】
 岩手屋は湯島に2軒ある。こちらはいわば支店で、菊の司酒造の酒を専門にする。七福神は菊の司酒造の銘柄のひとつだ。お店の創業は昭和47年、3年後から菊の司の酒だけで今日まで来た。この酒を置くようになったのは、ドイツ文学者にして元横綱審議委員長の高橋義孝氏に「この酒が旨いから」と薦められたことがきっかけだという。すると脇の常連が、芸大の教授でもあった建築家・六角鬼丈氏の推薦もあったと付け加えてくれた。東大と芸大、共に近い立地なのである。蔵とは、先代がすでに付き合いがあって、話はすすみ、今は全銘柄を揃えている。
 店の一番人気はてづくり七福神(大吟醸)。お燗もしてくれる。きれいに使われている古い燗付け器で店主がつけてくれる。

上部横についている注ぎ口から酒を入れて、すぐに下の蛇口をひねるとお燗になって出てくる。瞬間技なのに温まっているのかと聞くと、燗付け器の上蓋を開けて、店主は中を見せてくれた。たっぷりの――(あとは買って読んでね)
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8人も座ればいっぱいになるカウンターはL字型。
テーブル席もあり、天上には所狭しと杉玉が吊るしてある。
変わっているのは杉玉に、紙垂をつけた注連縄が巻かれていること。
菊の司酒造の特徴なんだそうです。
そしてカウンターについていた常連客たち。
これがすばらしい。
今そこの寄席をはねたあと一杯やってます。――といわれても疑わなかったと思います。
誰某師匠やタレソレセンセイなど、まあ、口はわるいが、人情味溢れる、まさに江戸っ子ばかり。
むかしの遊び人風情は、シモネタでさえ粋に感じるのが不思議。
ぜんぜん嫌らしさを感じさせないんだから、そこがまたおもしろい。
まあ、80歳を越えて現役の遊び人っていうんだから、もう拍手喝采ものですよね。
カウンターには、若輩者のぼくを除けば、みな貫禄のある大先輩ばかり。
だからといって、邪魔にするわけでもなく、粋な江戸っ子口調で語り合う常連さんのやりとりを聞いているだけで、なんともいえない心地よさ。
最後にお会計を済ました現役の遊び人さん(80歳以上)が、「ここにいるみんなに一杯ずつ差し上げて」といいだしたものだから、ほかの大先輩方がみな恐縮しちゃって、「ダメダメ先輩からそんなことされたら店にこれなくなっちゃいますよ」と、丁重に断っていました。
昼3時から寿司屋で飲んでいた遊び人さん、次はどこへハシゴ酒かな。(何度もいうけど80歳を越えてるそうです)

さて、ぼくはここで飲んで、ただヒトの話を聞いただけなんだけど、ひとつ思うことがありました。
それは、日本語の響きっていいなぁ――って思ったんです。
こんなきれいな言葉を、なぜ日本人は忌み嫌うのでしょうか。
だって朝のニュースとか見てるとそうでしょ。
どうして日本人ってニホンジンなのに、やたら横文字で話したがるのかな。あれ、とっても不思議。
ト○タのリコール問題だって。
アメリカのニュースでいうんならともかく、日本のニュースでリコールって単語使う必要ある?
なんかブレーキに問題があったみたいだけど、それの無償点検するっていえばいいだけじゃない。
しかも、それを「第一プライオリティで」なんていってたけど、プライオリティなんて長い単語使う必要性ってあるのかなぁ?しかも、車を買った購入者に対してだよ。
「第一優先で」でなにがわるいの?かっこわるいとか?いいかたの優劣を気にしてるヒトが謝罪文読み上げても、信憑性に欠けると思わない。
「優先」って二文字で短くいえるのに、わざわざ「プライオリティ」って長々しくいう理由が、ぼくにはまったく理解できません。
なんか日本語に劣等感あるのかなぁ。
そんなヒトたちは、ぜひ湯島で遊んでみてください。
日本語のリズムがいかにすぐれているかを再認識できると思うよ。

アテを注文するのも忘れ、話に聞き入ってたけど、なにかほしくなって、湯豆腐をたのんでみました。
実は、隣りに座ってた常連さんが頼んだのを見て、どうしても食べたくなったんです。
柚子が半分丸ごと入っているのは、その常連さんがやった真似。
多分、ポンズに絞って食べるのがほんとうのやり方。
けどね、ここには新兵器があって、九州の柚子胡椒(唐辛子入り)をつけて湯豆腐を食べることができるんです。
食べた瞬間、いつもならマイウー!と叫ぶんだけど、「うめーなこんちくしょうが!」っていいそうになってしまいました。
ほんとおいしいです。ぜひやってみてください。
ちょっと今回は話が長くなってしまいました。
久しぶりに、おもしろい体験をしたので、うれしくなっちゃったんだなぁ。

目印はこの赤い提灯。
東京で粋な遊びをするなら、ここがお奨めです。

さ~て、本日の脳内江戸っ子は、
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四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れる御茶ノ水、粋な姐ちゃん立ちションベン。白く咲いたか百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い。
やけのやんぱち火事場のナスビ、色は黒くて食いつきたいが、わたしゃ入れ歯で歯がたたないよ――とくらぁ!

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居酒屋
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