この薄明りの中で

ぶり大根が食いたい。
白いご飯とぶり大根。
なんでか急に、ものすごく。

栄漁丸さん。
いいぜ。
分かった。
連絡を下さい。
いつでもいいよ。
ドンと来い。
月曜、たまたまそっちの方行くぜ。
それまでに、目に入るといいんですが。

090-6680-7854
cheapdust-vo@softbank.ne.jp

明日は、キャップと仕事だなぁ。
大切な仕事がたくさんある。

寝ようかな。

最近、ろくな夢を見ない。

長靴も買わなくては。
ツルハシで切れてしまった。

この長靴には思い出がいっぱい詰まってる。
いい思い出とは言えないけど。

仙台では何も買えなかった頃、
我妻とタケチンと俺の分の三足を、新潟のホームセンターで買った。
ガソリンを何リットルもタンクローリーで運んだ頃だね。
「長靴も買ってきてくれない？」
「何センチ？」
「２８」
「マジで？でけ！タケチンは？」
「２８」
「うそ！」
俺は足が小さい。手も。
本気を出すと２４．５でいい。
ただ、甲が高いので２６を履く。
なんかカッコ悪いし、２６を履く。
三人お揃いの長靴。
嫌だったなぁ・・・。
別段、大事にはしてなかったけど、いつもコレを履いてた。
つま先めっちゃ強いから、色んなモノを蹴りで壊したっけね。

そのホームセンターから出てくると、車の上に電池のたくさん入ったビニール袋が置いてあった。
「被災地でお役立てください。」
とメモが書いてあった。
仙台ナンバーの車を見ての配慮と優しさ。

すげー感動した。
嬉しかった。

ガソリンスタンドでは、いっぱいオニギリを握ってくれて、最後に渡してくれた。
本当に腹が減ってたから、全部食べたかったけど、数個ずつ分けて、次の日に取っておいた。
車の中で一個だけ食べようとタケチンと食べた。
何かを食べたら安心してしまい、ゆきえさんの事を思い出して泣いて食べられなかった。

それと、シュークリームを買って帰った。
「シュークリームだ！すげぇ！」
店員に笑われた。
少し店員と会話をしたら、仙台の状況がそんなことだとは知らなかったと、涙ぐんで謝罪された。
すこしオマケしてくれた。
チョコレート一枚で、大人も泣く頃だったからシュークリームなんて、本当に神の味。
甘いものなど、本当に何もなかったから胃に沁みた。
美味しかったなぁ。忘れられない。
出来る限り、無理して多く買った。
実家にも届けて、ばあちゃんにあげた。
「本当は、ばあちゃんがアンタに買ってあげなくちゃいけないのにね・・・。」
と泣いてたっけ。
ガソリンやら、食い物やらも実家に届けて、買い物ができる素晴らしさを感じたものだ。

どこに行くんでも長靴。
何をするんでもタオルと軍手。

長靴をこんなに履いた日々もない。

グチャグチャになってしまった実家の部屋に入るには二階のベランダから飛び移らないと入れない。
「ばあちゃん。長靴取ってぇ。俺、ここから行くから。」
「やめな。落ちたらどうすんの。」
「落ちないように靴を履きてぇんだよ。早く取ってよ。」
無事によいしょと飛び移った。
怖かった。
真っ暗だし。
昼間は犬の保護と食べ物を海沿いに運ぶ事を優先してたから、実家の事はいつも夜だった。
あの頃、いつ寝てたんだろう？？
「いつもはオシャレなアンタが長靴履いて、よく頑張ってる。頼もしいなぁ。ありがとうね、了ちゃん。」
その言葉が忘れられない。

そのばあちゃんが、最近ボケちゃった。

後悔のないように、接していかなくちゃいけないなぁ。
と漠然と思ってる。

ちょっと贅沢になってきてる。
薄明りで十分だ。
薄明りの中で、誰もやらねぇことを企もう。

そして、そのうち寝てしまうだろう。