じいちゃん、ばあちゃん

アヴァンギャルドの打合せを行い、店内の内装からコルトンボックスについての話しに及び、百聞は一見に如かずとカルチャーブリッジに足を伸ばした。
この動き、何だか懐かしい気がする。
カルチャーブリッジの内装は被害の甚大な若林区の中でも、シンプルな空間にしたためか被害が殆ど無く、家が倒壊したオーナーの香野先輩が被災者を集めて馬鹿話をするという、いい溜まり場になっている。
皆、それこそ死ぬほど辛い日々を今でも過ごしているのに、俺の活動を支持してくれて、尚且つ褒めてくれた。
そして、俺の体を気遣ってくれた。
皆の方が辛いのに、明るく、たくましく笑ってた。
胸がいっぱいになった。
皆、家が流され、友人、家族、親戚を失い、避難所での生活を強いられていたのに、とても力強く笑ってた。
俺はまだまだやれると思った。
だから、いっぱい稼いで使うべき仲間にドカンと使おうと思った。
それでいいじゃないかと、心から思う。
生きてるだけで、丸儲け。

一組のお客様が子どもを連れて来ていた。
何かをあげたくて、車を探したら、少しだけ物資があった。チョコとお菓子。
心配とも違う。
なんか、子どもを見ると、勝手に【我慢】を想像してしまう。
飯は食ってるのか。
栄養は足りてるのか。
おやつは食べれたのか。
なにか我慢とかしてないのか。
自分が食べ物に困ったのなんて、一時だった。
でも、その一時であったとしても、こんなに想像してしまう。
じいちゃんやばあちゃん達は、もっともっと大変だったんでしょう？
そりゃ、俺達に飴だの煎餅だのアリッタケをよこそうとするはずだ。
「いらないよ～」
と言っても、お年寄りは何かをくれようとする。
未だに、インタビューで施設にお年寄りのお話しを聞きに行ってもあれやこれやと持たせようとする。

今日ね、その意味が分かった気がした。
苦労や苦難は人の辛さを想像する力が身に付く近道。
海外に行って不自由をすると、日本で外人に優しくなる。
ヒッチハイクをすれば、その辛さや乗せてくれた有り難みを知るので、多少は人に親切になれる。
苦労を知ると、いささかではあるが、辛抱強くはなる。
人生でここまで【生活】に対して、特に食べることに対して不安になったことはない。
一文無しで旅に出ても、何とか帰りつけば、３日我慢すれば何とかなる。という甘えがあった。
今回は間違いなく、人生で初の一度だけあるかないかの最大の【ピンチ】だった。
大した日数じゃなかったけど、何も買えない。金なんて意味がない。食べ物のストックもない。電気もない。ガスもない。水もない。電波もない。情報もない。ガソリンもない。
これは間違いなくピンチだった。
星君がガソリンをバイクに入れてくれて、
「俺の分もりょうちゃん動いて。」
と言われ、分け与えるという有り難さを知った。
甘いモノが食べたかった。
バイクで走って街の電灯を見て、本当に希望の光に見えた。
報道は目安でしかなく、動かなきゃ情報は入らないと知った。
テレビを見て、映画だと思った。
探し回ったゆきえさんが、帰らぬ人となり、力が抜けてバイクで死にかけた。

でも、もう想像すら出来ない程の空襲という恐怖も追加され、もっと大変な日々を、じいちゃんやばあちゃん達はずっと過ごして今の社会を創ったのだと知りました。
沿岸部の友達はまだまだ辛い日々を過ごしてます。
家族を失った方々の気持ちは想像するしかない。
同情のレベルではどうにもこうにもならないのだ。
だから、子ども達を見ると、やたら色々と想像してしまう。
何かをあげたくなる。
子ども達を、皆で育てよう。
皆で彼等を育てよう。
ドロ掻きでも何でもする。
だから、さっさと皆で飲みにでも行こうぜよ。

そういう風に思わないと、じいちゃん達に負けそうだ。