小松左京「偉大なる存在」(集英社文庫 昭和58年)
SF短編5作を収録。そのなかの「袋小路」について。
前回の川上弘美「大きな鳥にさらわれないよう」と設定として似ているかもしれません。行き詰まっている人類とそれを打開しようとしている人工知能。ま、よくある設定といえば設定なんでしょう。設定は似たようなものですが、描かれていることは違ってまして、「袋小路」は同じく小松左京「神への長い道」を思わせます . . . 本文を読む
人間は変われない。というか変化を嫌う。という話のつづき。
変化とは自分とは異なる存在の出現ともいえ、ならば変化を嫌うということは異なる存在を排除しようという動きである、とも言えるんじゃないかしら。
「自分と異なる存在を、あなたは受けいれられますか」
「わたしは受けいれるつもりですよ」
というやり取りが作中にありますが、この「受けいれるつもりですよ」と答えた人は異なる存在を目の当たりにしたとき、 . . . 本文を読む
前回は小説内の台詞だけを取り上げたので内容紹介はしませんでした。今回もある台詞だけを取り上げるんですが、その台詞が発せられる舞台装置の説明はあったほうがいいかと思い、内容紹介をしておきます。
裏表紙の紹介文にはこうあります。
遠い未来、衰退の危機を認めた人類は、「母」のもと、それぞれの集団どうしを隔離する生活を選ぶ。異なる集団の人間が交雑することにより、新しい遺伝子を持ち、進化する可能性がある人 . . . 本文を読む
川上弘美「大きな鳥にさらわれないよう」(講談社文庫 2019年)
まだ読んでいる最中なんですけどね。気になる言葉が出てきたものですから。
おれは、生きてることの意味について考えたことなんて、めったにないよ。だって、おれは現に生きてるんだもの。その意味を考えるより、生きてること自体からあらわれる、もっと具体的なことを考える方が楽しくないか? たとえば、研究所のれいの知り合いのように、食べることが . . . 本文を読む
追記ってえますか、以前の記事の紹介ですね。
前項で「悩まない」って話をしましたが、「悩んでも仕方がない」って記事を以前に書いていたのを見つけましたので。
https://blog.goo.ne.jp/cdt63430/e/ea90e84dd8a497c3b161b21c507a4544
これはこれでひとつの考え方ですね。って、なんだか他人事(ひとごと)みたいなモノ云いですけど、過去の自分なんて . . . 本文を読む
杉浦日向子「うつくしく、やさしく、おろかなりー私の惚れた『江戸』」(筑摩書房 2006年)
以前にもこの本のことを書いた記憶があります。記事を遡ってみたら昨年11月の投稿。このとき読み始めたところで、そしていまだ読み終わってない。1冊読むのにどんだけかかるのんって話ですが、ま、あわてないあわてない。ひとやすみひとやすみ。ってなアイキャッチのアニメがありましたねえ。急いだからってどうなるもんでもあ . . . 本文を読む
古今亭志ん生 (5代目)は、りん夫人との縁談話に対し、「かせぎもないし、財産もないし、着るもんだってありゃァしないよ。江戸時代にいた林子平てえ人の親戚みてえなもンだよ」と念を押した。
とWikipediaにあります。出典は「びんぼう自慢」。「びんぼう自慢」は若いころ読んだことあるけど憶えてないなあ、この部分は。ま、この部分に限らず内容は憶えていませんけどね。
で、Wikipediaのどの項目を読 . . . 本文を読む
保坂和志「残響」からは離れてしまって勝手なこと書いてますが、ご容赦を。
で、似たようなことを考える人々の末席にあたくしもいまして、全部ここにあるんだろう、なんてやっぱり考えるわけです。あたくしは記録とか記憶じゃなくて最初から手札は揃ってるって感じですかね。その手札を私たちは1枚1枚開けている。こういう言い方も、やはり記録や記憶とおなじなのかしら。ま、どっちでもいいんですけどね。
私たちは物質世 . . . 本文を読む
ある場所である人がかつていろいろなことを感じたり考えたりしたことを物質的に確かめることは可能なのか、と保坂和志は登場人物に考えさせているわけですが、文庫の解説を書いている石川忠司はトーマス・ベアデンによればそれは可能であるとスカラー波の話をしています。
スカラー波ってなんですか? で、調べてみる。以下、Wikipediaより。
スカラー電磁波(スカラーでんじは)は、ニコラ・テスラが発見したという . . . 本文を読む
保坂和志「残響」(中公文庫 2001年)
保坂和志の小説はストーリーを説明したところで意味はないですよね。ストーリーなんてあってないようなものですから。といって何の説明もしないんじゃわかんないし。
ま、とりあえず版元の内容紹介を引用します。
離婚し借家を引き払ったカップルとその家に入居した別の夫婦。交わらない二組の日常を斬新な手法で描く。
確かにこういう話なんですけど、これじゃ何にも説明した . . . 本文を読む