チェリスト 阪田宏彰のBlog

日々感じたこと、おすすめなモノ、お気に入りなど

Cello Ensemble 008 東京公演プログラム後半

2015-08-31 | Cello Ensemble 008
Cello Ensemble 008と近藤和明さんのコンビは「クラシックの歴史に数えられていない数々の名曲を、何度でも再演できる楽曲にしていく」という目標を掲げてスタートしました。
でもやりたい曲、知っていただきたい曲は多すぎて、せっかくアレンジしていただいた楽曲を再演する機会は多くはありませんでした、
そろそろ始めましょう。
クラシック音楽の歴史のように、再演を重ねることによって熟成が進んだ演奏をお聴かせできると思います。
いや~、一人じゃないと強気なことが言えるもんだなぁ・・・・。

というわけで再演が混ざっている後半のプログラムです。



・ひょっこりひょうたん島:井上ひさし作詞/宇野誠一郎作曲
昔懐かしい子供番組として、近くは「モーニング娘。」のヒット曲として、幅広い世代に記憶されているメロディ。
井上ひさし氏の初期作品「ひょっこりひょうたん島」は、岩手県大槌町の沖合に浮かぶ蓬莱島をモデルに書かれたそうです。
3.11の震災で町長はじめ多くの方が亡くなられた大槌町で、復興のテーマになっている曲です。
全ての被災された方々に元気に笑ってもらえる日が来ますように。
「泣くのはいやだ 笑っちゃおう!」
ひょっこり ひょうたん 島 OP



・シェルブールの雨傘:ミシェル・ルグラン
Les Parapluies de Cherbourg : Michel Legrand
シェルブールは、フランス北西部のコタンタン半島の先端にある港町です。
この港町を舞台にした「シェルブールの雨傘」はジャック・ドゥミ監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演のミュージカル映画。
全ての台詞にメロディーが付けられた完全なミュージカル作品で、語りは一切ありません。
ドヌーヴの美しさは眩いばかりですが、ミュージカルの常なのか、日本人の感覚とは違うのか、その心変わりの早さは驚異的!・・・現代的なのかも?
音楽を担当したミシェル・ルグランは御年83歳。作曲家としてだけではなく、ジャズピアニストとしての輝かしいキャリアも鮮明に記憶されています。先年取り上げた名曲「水とワイン」を作曲したブラジルの鬼才エグベルト・ジスモンチや、タンゴ界の異端児アストル・ピアソラと同じ、ナディア・ブーランジェ門下であることも興味深いですね。
Love theme from "Les parapluies de Cherbourg" (1964)



・首の差で:カルロス・ガルデル
Por Una Cabeza : Carlos Gardel
アルゼンチンの国民的歌手、カルロス・ガルデルの数ある名曲の中の一つ。
歌手として、作曲家として、俳優として、人気の絶頂期にあった1935年に、飛行機事故で急逝しましたが、現在でもほとんどのタンゴ楽団のレパートリーに彼の曲は息づいています。
亡くなった年の映画「タンゴ・バー」のために作曲され、後に「シンドラーのリスト」「トゥルーライズ」「セント・オブ・ウーマン」などにも使われました。
「セント・オブ・ウーマン」の中で、盲目で頑迷な退役軍人を演じたアル・パチーノが踊るシーンは必見です。
Por una Cabeza (Original) - Tango - Carlos Gardel



・天国への階段:レッド・ツェッペリン
Stairway to Heaven : Led Zeppelin
ハードロックの開祖「レッド・ツェッペリン」。テレビ出演を拒否し、ライブと録音のみでプレスリーやビートルズに匹敵する人気を勝ち得た伝説のバンドです。
クラシックから多くを得た彼らの数あるヒット曲の中でもとりわけクラシック的なのが、「天国への階段」です。
「静かに始まって徐々に盛り上がってゆく長い曲」というのはジミー・ペイジの言葉。
最初のテーマをひたすら繰り返す構成は、ラヴェルのボレロにも似ています。
ギターのアルペジオとリコーダーの三重奏で静かに始まる序奏を、低音楽器のみのアンサンブルでどのように演奏するのか、お楽しみに!
Led Zeppelin - Stairway to Heaven Live (HD)



・スモーク・オン・ザ・ウォーター:ディープ・パープル
Smoke on the Water : Deep Purple
ロック史上最も有名なイントロを持つと言われる、ディープ・パープルの代表曲。
レマン湖畔のモントルーカジノの中にある、ローリング・ストーンズ所有のスタジオでディープ・パープルがアルバムの録音をしていた時のことだそうです。
カジノのホールで開かれていたフランク・ザッパのコンサートの客が信号弾を打ち、天井に着火、火事になったそうです。
宿泊先のホテルから湖上に広がる煙を見て作曲された、という顛末を歌っています。
ロックシーンを彩るビッグネームが一堂に会して、とんでもない曲が生まれました。
Deep Purple - Smoke On The Water HD 1973 (Live in USA)



これでCello Ensemble 008の夏休みの宿題はおしまい!
でもすぐに北海道ツアーが待っています。
シルバーウィークの過ごし方が決まっていない方は、是非北海道へ!
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

008サントリー公演 続プログラム

2015-08-30 | Cello Ensemble 008

プログラム紹介の続きに入る前に、一つお知らせです。
9/6(日)14:00~サントリーホール小ホールの「Cello Ensemble 008 in 東京」ですが、残席が僅少となって参りました。
たくさんのお客様に来ていただけて本当に嬉しいです!
当日券も発売する予定ですが、もしかするととても少ない数になってしまうかもしれません。
もし当日券でご来聴のご予定の方がいらっしゃいましたら、このブログのコメントでも、メンバーの誰かでも、アーバンクラシック(042-371-1554)でも構いませんのでご予約くださるようお願い致します。


一曲目「春の海」は前回に紹介を済ませました。
宮城道雄の自作自演を見つけたのでご覧ください。
春の海 宮城道雄自作自演


今年は他にもクラシック作品が多く入ったプログラムになりました。
今日は前半の曲目をドバッとご紹介。


・交響組曲「シェへラザード」より「若い王子と王女」:リムスキー・コルサコフ
The Young Prince and The Young Princess from "Scheherazade" : Rimsky-Korsakov
ロシアの作曲家、リムスキー・コルサコフによって1888年に発表されました。
妻を娶っては翌朝に処刑するという冷酷な王に、千一日の間、毎夜心躍る物語を聞かせて、王の心の傷を癒し、人の心を取り戻させることに成功した王妃シェヘラザードの物語が「千夜一夜物語」です。
このシェヘラザードの物語をテーマにした交響組曲の第三楽章になる「若い王子と王女」。
全楽章の中でも特に愛されるこの旋律は、王の心にどう響くのでしょうか?


・「ロミオとジュリエット」より「騎士たちの踊り」:プロコフィエフ
Montagues And Capulets from "Romeo and Juliet" : Sergey Prokofiev
バレエが始まってほどなく、モンタギュー家とキャピュレット家の騎士達が踊るシーンの曲です。
ドラマ「のだめカンタービレ」や、シャネル「エゴイスト」のCM、ソフトバンクのCMなどで使われた有名なテーマで、エマーソン・レイク・アンド・パーマーなどのロックアレンジも存在します。
オーケストラの中でヴァイオリンですら悲鳴をあげるこの曲をチェロばかりで演奏することによって、プロコフィエフの想像を超えた悲鳴を、伴奏形をステージの両端に配置することで、ピットでは表現できないサラウンド効果を体験していただきます。


・二つの悲しき旋律:グリーグ
Two Elegiac Melodies : Edvard Grieg
グリーグ がノルウェーの詩人ヴィニエの詩に基づいて作曲した歌曲を元に 「傷ついた心」「春」の2曲から成ります。
彼の書く歌曲はほとんどの場合、歌手である妻ニーナのために書かれました。放蕩妻へのメッセージでもあったかもしれません。
各曲の題名は「胸のいたみ」や「過ぎし春」などと訳される場合もありますが、2曲目は歌詞の内容からすると「最後の春」とした方が分かりやすいかもしれません。
現在では歌曲よりもグリーグがオーケストラを指揮する際に弦楽合奏版にアレンジしたものが有名です。
今回からアレンジャーとして加わってくれた五十嵐あさか氏と作りあげる最初の作品になります。


・オスティナート(ピアノのための練習曲集から第146番):バルトーク
Mikrokosmos - 146. Ostinato : Béla Bartók
これも五十嵐あさか氏のアレンジによります。ルーマニアのジプシーバンド「タラフ・ドゥ・ハイドゥークス」の編曲を元にリアレンジされています。
近年ジプシーという言葉は差別用語と見なされ、ロマという言葉に置き換えられることが多いようです。
ただジプシーにはロマ以外の民族も含まれるため、これらの民族を無視することへの問題提起もされています。
差別は無くすべきですが、実際にあるものに目をそむけても解決にはならないだろう、という考えからあえて「ジプシー」という言葉を使わせていただきました。
バルトークは、「リストやブラームスの書いた“ハンガリー狂詩曲・ 舞曲”は西洋音楽とジプシー音楽を重ねた所を目指してはいるが、これらの有名な曲の中に、真の意味での“民謡”は一つもない。」 と書いています。バルトーク自身はハンガリー固有の農民音楽と西洋音楽の融合を目指した人です。
ハンガリー固有の民俗音楽を抽出するために、移動型民族であるジプシーの影響から抜け出す努力としたバルトークの作品を、結局はジプシーが料理して日本人が盛りつける。
移動型民族の文化が各地の文化と再交配を繰り返して力強いものになった歴史を思い知らされます。


これでコンサート前半が終了します。
結構盛りだくさん!
夏休みの宿題の総決算みたいなブログを最後まで読んでくださってありがとうございます。
次回、後半を一気にご紹介したいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Cello Ensemble 008 今年はサントリー!

2015-08-26 | Cello Ensemble 008
9月6日の日曜日、14時からです。

今日からプログラムを紹介していきます。
内実はプログラムノートのチェックをお願いしたいのです。

1曲目は、これ!

「春の海」:宮城道雄
お正月に必ず耳にするこの曲は、極めて日本的に感じられますが、作曲者が西欧音楽に影響を受けた作品で、新日本音楽を代表する名曲となっています。8歳で失明するまで祖父母と住んだ「鞆の浦」の美しい風景をイメージして作られたそうです。


鞆の浦と言えば、宮崎駿監督がアニメ「崖の上のポニョ」を構想した場所として有名になったところ。

「春の海」という春の季語から、暦の春ということでお正月に演奏されることが多いそうです。コンサートの始めに一服の涼を感じていただけるでしょうか?
おなじみ、近藤和明氏アレンジの新曲です。



これが平和な音楽になるかと思いきや、結構面白いのです。
鞆の浦の景色を想像すると、また違う曲にも聴こえたり。
是非、色々な情景を思い浮かべながら聴いてほしいです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アンテナ

2015-08-23 | ひとりごと
色々なコンサートを企画するにあたって、自分のアンテナを張りめぐらせています。
そんなにカッコよいことではなく、面白いと思うものに向かってふらふらと近寄っていく、というだけのことです。

「ゴジラ」や「ひょっこりひょうたん島」など、ほとんどの方々が知っている名曲も多く取り上げてきました。
同時にエグベルト・ジスモンチの「水とワイン」や、1970年代のロックなど、コアな音楽ファンだけが楽しんでいる作品を取り上げて広く知ってもらうという企画も大事にしています。


世界最高とも言われるアルゼンチンのギタリスト、キケ・シネシさんのコンサートを聴きに行ったのは昨年の暮れのこと。

流麗なテクニックも、ちょっとお茶目なセンスも、素晴らしいステージ。
生で聴けて本当に良かったコンサートの一つになりました。

僕の身勝手な動機である「自分の企画のためのアンテナ」には何も引っかからなかったのは、あまりにもギタリストの音楽だったから。ギタリスト、いやキケ・シネシさんが演奏することに意味がある音楽でした。
だからこその素晴らしさでした。

すっかりキケ・シネシさんのファンになっていた僕は、会場のCD販売コーナーでまだ持っていないキケ・シネシさんのCDを買い揃えていました。
するとキケ・シネシさんとは関係無さそうなCDが置かれています。
「mira」と書かれたそのCDのアーティストは、Asaka Igarashi。

いがらし?あさか?
五十嵐あさか!?


古い知人というとお年寄りみたいですが、僕よりはずっと若い女性チェリストです。
確かアルゼンチンに渡ったとは聞いていましたが。
キケ・シネシさんとも繋がっていたとは!

懐かしさと興味の相乗効果で、だいぶ予算オーバーしている財布をひっくり返して「mira」も購入しました。

キケ・シネシさんのCDはどれも面白く、それぞれに違う世界観の幅の広さに驚きました。
でも、この日の一番の収穫は五十嵐あさかさんの「mira」でした。
彼女のチェロの独奏による、彼女の楽曲のみのCDです。
高い技術力と、自由な発想。
見せつけるような技術は一切使われず、さりとて安易な癒し系の音楽では全くない。
彼女の旺盛なチャレンジ精神と、女性らしいチャーミングな一面を隠さず正直に出しているのです。
クラシックのアカデミックな教育で得たものに背を向けるでもなく、様々な音楽や音楽家に接した経験も模倣ではなく自分の言葉として表しています。
「お、コダーイ」とか、「ボサ?」とか感じながら、鼻につくところが一切ありませんでした。
これは同業者としてはとても珍しいことなんです。

早速コンタクトを取って帰国ツアー中の五十嵐あさかさんとお話ししました。
既に出来上がっていた2ndアルバムも今僕の手の中にあります。
さらに面白い。
アルゼンチンに行ったのに、なぜかモンゴルのホーメイを会得して帰ってきた彼女。
演奏しながら歌ったり叩いたり。
もはや様々な音楽は彼女の血肉となり、「五十嵐あさか」というジャンルになりつつあります。

もちろん、ただ旧交をあたためるために時間を割いてもらったわけではありません。

ここ数年のYAMATO S.Q.とCello Ensemble 008を、アレンジャーとして支えてくださっている近藤和明さんから常々言われ続けてきたこと。
「他にもアレンジャーを探してくれ!」という言葉。
実際に探してはきたのです。
素晴らしい能力を持った作曲家、アレンジャーはたくさんいらっしゃるのですが、とてもはっきりジャンルが決まっていたり、忙しすぎたり。
近藤さんとの短くはない付き合いの中で築いてきたクオリティも、高いハードルになっていました。

五十嵐あさかさんに、近藤さんの譜面を見てもらいました。
「すごく緻密で綺麗に重ねてあって、構成も完璧ですね!」
この近藤さんのアレンジと並べて演奏する曲を書いてもらいたいことを告げると、
「このクオリティは正直無理かもしれませんが・・・・やってみたいです。」
とのありがたいお言葉。

近藤さんが丹精込めて書いてくれた譜面を真剣に研究してくれたこと。
それがどれだけ高いハードルか分かった上で挑戦する気持ちになってくれたこと。
何とかこの出会いを現実的な成果に繋げたいと思いました。

今年の「Cello Ensemble 008 in 東京 vol.6」において、その最初のチャレンジが日の目を見ます。
曲はバルトークのミクロコスモスから「オスティナート」。
しかもジプシーバンドがいじった強烈なアレンジを基に書いていただきました!
Taraf de Haidouks - "Ostinato" (music video)

楽しみですね~!

五十嵐あさかさんとCello Ensemble 008の組み合わせは、9月6日の14時から、サントリーホールの小ホールでデビューします。

まだチケットをお持ちでない方!
このブログのコメント欄でも受け付けます!
よろしくお願いします!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どぼこん2

2015-08-05 | ひとりごと

「どぼこん」の続きです。

これまでのプロとしての活動は、室内楽が中心にあったと思います。
そして、これからもそうありたいと思っています。

オーケストラに呼んでいただく時、ソリストとしてお話をいただく時も、パワープレーよりはバランサーとしての役割を期待されてきたと思っています。
オーケストラの客演首席としてのソロはちょいちょいありますが、オーケストラをバックに独奏するという機会は今までに2回しかありません。
石田泰尚と共演したブラームスの二重協奏曲、そして茂木大輔さん、岡本正之さん、田中雅子さんと共演したハイドンのシンフォニア・コンチェルタンテ。
強烈な個性を持つスターに寄り添うアンサンブル奏者として依頼を受けたと思っていますし、自分でもそこに軸足を置いています。

「どぼこん」は?
どう見てもバイプレーヤーに徹していられる状況にはならなそうです。
かといって急に「スター」にもなれないし。

何を考えて僕に白羽の矢を立てたのか・・・?


少し時は遡ります。
ホームページの「monologue」に「K君」として登場する福井啓太君からお仕事をいただきました。
前川さんというピアニストのお弟子さんの発表会で、ピアノトリオやチェロソナタの共演をするというお仕事。
お弟子さん達は趣味で演奏される方々ですから、伴奏だろうが旋律だろうが、こちらから合わせにいかなければいけません。
共演者の意志に合わせながら、あたかも自分の意志であるかのように弾く。
これは僕の最も得意とするところです。
このお仕事は幸い良い評価をいただいたようでした。

後日、前川さんと一緒にチェロとピアノの小さいコンサートに出演するお仕事をいただきました。
チェロは白玉(二分音符とか全音符のことです)ばかり、ピアノの譜面は真っ黒けという、僕の好きなタイプの譜面を総出動させて切り抜けました。
実はピアノが凄いのに、涼しい顔をして美味しいところを持って行く。
これも僕の得意とするところです。
このお仕事も良い評価をいただいたようでした。

次はフルートの槇本吉雄さんのリサイタルに通奏低音として共演するお仕事をいただきました。
前川さんはチェンバロ奏者として別な顔を見せていらっしゃいました。
槇本さんはホラネロの谷藤万喜子さんの先生でもあります。
不思議なご縁です。
とても実直で、お父さんと山登りをしているような気分でした。

大抵の場合、通奏低音というのは古楽の専門家が演奏します。
曲の流れを決める大変重要な役割なので、指揮者のように頭が良い人でないと務まらない仕事なのです。
色々と難しい理論があって、僕はその本を読むといつも寝てしまいます。
でもガット弦を張って通奏低音を弾いたりすると、ちゃんとした古楽の人と勘違いされるかもしれません。
なので「通奏低音も弾く」とことは秘密なのですが、実は僕は通奏低音が大好きなのです。
感覚的なやり方で、「なんちゃって通奏低音」ですが、弾いていて楽しいのです。
難しさもよく分かってないし、気持ち良いところで気持ち良い音程を鳴らすだけ。
幸い、この日のお仕事も良い評価をいただいたようでした。

この通奏低音を聴いてくださっていたアンサンブルSAKURAの団長さんと、前川さんのご主人である指揮者の高石治先生から「どぼこん」のお話をいただきました。

何故!? そんなにソリスティックに通奏低音を弾いてしまったのか!?

通奏低音って土台ですから、子供でも弾ける音域ばっかりです。
ドボコンはバイオリンみたいな音域でピアノみたいに真っ黒な譜面を弾きます。

「僕でいいんですか!?」
「はい、お願いします」
とあっさりお答えをいただき、「時間が空いている限り」のマイルールに従って引き受けてしまいました。

「どぼこん」のソリストを通奏低音を聴いて決めるという、おそろしく乱暴な、しかし渋い判断は、凄く勇気が要るものだったと思います。
前川さん、高石先生、団長さんの顔を潰さないよう、全力で結果を出しにいかねばなりません。

今年もまた自分の限界を壊しにいく機会に恵まれました。


どんどん易き流れから外れてる・・・!?
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どぼこん

2015-08-04 | ひとりごと
都立高校の音楽の先生になって、悠々自適な人生を送る計画でした。(都立の先生ごめんなさい!)
どこで道を過ったのか・・・。

小野崎先生という信じられないくらい怖い先生に巡り会い、易きに流れる心根を粉々に切り刻まれたことに始まると思います。
まあ、ご興味のある方はホームページの「monologe」などお読みいただければ。

その後、道を過ってチェリストとして活動するようになってから、順調に易きに流れる心根は再生しました。
ところが、この根っこを育成する環境が数年前からおかしいのです。

日にちが空いていれば、極力ご依頼は断らないと決めた頃だったと思います。
難しいものには極力近寄らないで生きてきた僕に、超難曲「アルペジオーネ・ソナタ」の依頼が来たところが始まりかもしれません。

昔、母が「いつかアルペジオーネ・ソナタを聴きたいわね」と言っていました。
言下に「絶対ムリ」とすげなく断りました。
そんな難しい曲は偉いチェリストが弾けば良いと思っていました。
ところが、下山静香さんに頼まれたこの時は魔が差したのです。
決して下山さんがとても美人さんだったからではありません。

その後、これまた順調に人生計画は狂い続けます。
モーツァルトの遺作にして最高傑作「弦楽三重奏のディメルティメント」など、室内楽の難曲が次から次へと舞い込みました。
とどめはハイドンの「シンフォニア・コンチェルタンテ」をとっても偉い人たちの中で弾く羽目になったことでしょう。
その時の泣きのブログ


これでようやく元の易き人生に戻れると思っていたら、また来ました。
ちゃんとしたチェリストならば、いつかは弾きたい曲として憧れる、ドヴォルザークのチェロ協奏曲、通称「どぼこん」です。

迷彩服をきて側溝から飛び出してきそうな名前です。
平和主義の僕としては好ましくない。
実際、技巧的に難曲であることはもちろん、根性の上に根性を積み重ねるような音符の山々。

よほど美人さんに頼まれたに違いない、などと邪推しないように。
依頼をいただくまでの経緯がとても面白いのですが、この続きはまた次回。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四十路ライヴ その後

2015-08-01 | ひとりごと
3年前になるでしょうか。

ちょいちょい一緒に弾くようになっていた、高橋暁というやたらと明るいヴァイオリニストと「40`s Anniversary LIVE」なるものをやりました。


一緒に飲んでいて、
「もうすぐ40になるなぁ」
「おまえもじゃん」
「・・・・なんかやるか?」
こんな流れだったと思います。
思いつき以外の何者でもない企画でした。

ヴァイオリンとチェロだけで演奏する曲なんて、そう無いのです。
あの時も近藤さんに助けてもらいました。
蘇州夜曲、スティービー・ワンダー、ビートルズなどなど。
この前亡くなったパコ・デ・ルシアのアルモライマがメチャメチャ大変で、このブログで「ぴちだこ」という言葉を生み出して愚痴った記憶があります。

このライヴは面白かった!
と、本人たちは思っています。

2人だけで弾ききった前半に対して、後半は録音や飲み会で仲良くしてもらってる仲間たちにもたくさん出て貰いました。
多分仲間たちも「これ面白い!」と思ってくれたのだと思います。
その時、ヴィオラで参加してくれた梶谷裕子が、エレキベーシストのご主人、山田章典さんと
「Yamada Family Around 40 Anniversary LIVE!」
をやってくれます。
3年前集まってくれた仲間達が再び集結します。


そう。8/2ってもう明日!
今回も今さら告知でした。
僕はこのメンツの中で、何故かシューベルトの「鱒」を弾きます。
何年ぶりだろう・・・。

山田ご夫妻の企画する「アラフォー記念ライヴ」は、高橋暁と阪田の「40`s」とはだいぶ違う雰囲気です。
エレキベースで活躍中のご主人は弓を使うコントラバスでもかなりの腕前。
前半はクラシック畑の楽器たちに交じって演奏します。
そして後半のPops & Rockコーナーでは、ヴァイオリニスト梶谷裕子があちらの世界へ。

テリトリーが異なるミュージシャン夫婦が、こんなにバランス良く記念日を祝えるって素晴らしいですね。
ご家族の幸せな時間を分けてもらえる予感が満載です。

公園通りクラシックスというライヴハウスです。
明日の16時半、渋谷に来られる方は是非!
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする