〈 きつい仕事、外国人頼み・・受け入れ停止、農家困惑 〉
朝日新聞2014・12・25
メロンの産地として知られ、約7000人が農業で働く茨城県鉾田市。
市内の外国人技能労働実習生約1600人の多くが、農業で働く。
騒ぎはこの夏に起きた。
「JAほこた」の組合員農家が中国人実習生に対し、残業代を払っていなかったことが発覚。
東京入国管理局は7月、27家に実習生の受け入れを5年間停止する処分を出した。
実習生は、「割増し賃金の不払いがあった」と訴え、組合長は辞任に追い込まれた。
「JAほこた」は、管理団体として、実習生を受け入れ、受け入れ労働環境をチェックするのが仕事だ。
農家の怒りの矛先は「JAほこた」に向かった。
「農家を適切に指導しなかった」との理由だ。
だが「JA」にも言い分がある。
労働基準法は残業に対し、割増し賃金を払うよう、義務づけるが、天候で作業時間が変わる農業は適用されてこなかった。
「JAほこた」によると、同じ姿勢だった東京入管は一転して、割増し賃金の支払いを求めるようになった。
昨年3月農林水産業が、農業でも割増し賃金を支払うよう求めたことがきっかけと見られる。
制度の運用がころころ変わり、現場に説明がいきとどかず混乱した。
そもそも管理団体は、同じ地域や業種で設立されることが多く、雇い主と管理団体トップが同じであることも珍しくない。
実習生問題に詳しい弁護士は「管理団体が受け入れ団体と監視役の両方を担っていることが、劣悪な待遇を放置する一因だ」と指摘する。
管理団体とともに、農家に指導する立場の「国際研修協力機構」に対し「JAほこた」は昨年500万円の賛助金を支払ったが、巡回するだけだったという。
処分を受けた農家は、実習生に代わる担い手がみつからない。
「JAほこた」は言う。
「農業をしてくれるなら、実習生はもちろん、外国人労働者でもいい。
選択肢を増やしてほしい」。
〈 国民不満抑制策へ転換・・シンガポール 〉
1990年代から積極的に外国人を受け入れてきたシンガポール。
中心部のインド人街に、夜になると多くの人が集まる。
外国人労働者支援団体による給食プログラムだ。
建設現場や工場で、怪我をしたり、賃金が未払いだったりして、収入のない労働者が、コインを受けとり、レストランで食事と交換する。
バングラデシュ人のアクラム・フセインさんは、昨年5月、工事中に大怪我をし、2か月で12回も手術をした。
だが、手続きが煩雑で、十分な保険金も受け取られない。
「シンガポールに来なければよかった」と嘆く。
シンガポールは日本をしのぐペースで少子高齢化が進み、外国人労働者は今年6月で約134万人と、人口の4分の1を占める。
政府はいま、外国人抑制策に乗り出している。
11年の総選挙で、与党が議席を減らした背景に、外国人労働者の多さに対し、自湯が脅かされる国民の不満があるとされる。
今年8月、管理職や専門職の一部について、国民のみに2週間の求人を出すことを義務づけた。
外国人労働者のトラブルも増えている。
労働者を支援するNGOでは、「自国民と等しい条件で雇えば問題は起きない」と指摘する。
〈 政府が前面、ブローカー排除・・韓国 〉
日曜日の午後。
ソウル市内にある「韓国外国人力支援センター」で、韓国語の授業が始まった。
東南アジアなどから来た労働者が、韓国人講師から言葉を学ぶ。
センターは政府が設立し、社団法人に運営を委託している。
「ただで教えてもらえて、本当にありがたい」。
最前列のフィリピン人男性は、笑顔で語った。
韓国で働くのは2度目。
最初は2005年から3年間。
南東部の工場で働いた。
就労期限がきたので、台湾に移り、昨年再び韓国に戻った。
今は仁泉市内のカーアクセサリー工場で働く。
「韓国人との間に賃金の差別はないし、部屋も食事も会社が提供してくれる。
とても満足している」。
男性は、韓国が2004年に導入した「外国人労働者の雇用許可制」に基づいてやって来た。
韓国政府と外国人労働者を送り出す国が「覚書」を結び、両国の公共部門が労働者選定にかかわる。
「覚書」の締結先は、当初の6か国から15か国に増えた。
受け入れ期間は基本的に3年間だが、一定の条件を満たせば最長で通算9年8か月働ける。
少子高齢化が進む韓国では現在、他の制度の適用者も含め、約85万人が製造業や農・畜産業で働いていると見られる。
韓国ではきつい肉体労働などを避けるムードが広がり始めるなかで、1993年、日本の「技能実習制度」に似た「産業研修生制度」を始めた。
だが、労働者としての権利が保障されず、低賃金で働かされる例が続出、不法滞在者も急増したため、現在の制度に移行した。
政府が前面に出て、悪質なブローカーなどは排除され、在留外国人に占める不法滞在の割合も、2004年の27・9パーセントから今年9月には11・8%に低下。
日本政府も、「技能実習制度」の見直し策として、送り出す国との取り決めの締結を検討する。
中島・慶大教授は「企業や団体が自らの利益のために制度を利用するのは当然で、日本は制度を抜本的に見直す必要がある。労働力として受け入れればトラブルにも両国で責任をもって対応するようになる」と指摘する。
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