たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

土が育てる心 <自然栽培で農業と福祉連携>を読みながら

2017-08-23 | 心のやすらぎ・豊かさ

170823 土が育てる心 <自然栽培で農業と福祉連携>を読みながら

 

おそらく日本人の大半は戦後初期まで身近に田んぼがあり、その泥状の土の感触を体に染みつけ、そこに生息する多様な生き物とふれあっていたように思うのです。

 

私自身幼い頃そういう経験があったかどうか記憶が曖昧です。でも当地にやってきて自然農を知り、実際に体験してものすごい感動を得ました。ぬるぬるした土の中で作業し、さまざまな昆虫たちが身の回りで活動している様を、汗だくだくで楽しんでいたように思います。

 

毎日朝刊<くらしナビ・ライフスタイル自然栽培で農業と福祉連携>は、その田んぼの土を舞台に、自然栽培農業により、福祉・企業との連携を着実に各地に普及させている新しい動きを取り上げています。

 

キーワードは「農福連携自然栽培パーティ」と「一反パートナー」です。コンセプトは<全国の障害者施設に無農薬、無肥料の自然栽培による農業を広める活動>です。メンバーは障害福祉サービス事業所と企業です。仕掛け人は「パーソナルアシスタント青空」代表の佐伯康人さん、その取り組みを助成したのはヤマト福祉財団です。

 

今回取り上げられたのは、前橋市の障害福祉サービス事業所「菜の花」を利用する障がい者と、ボランティア参加したカシオ計算機とグループ会社の社員や家族ら40人余です。むろん、農業指導をするのは地元農家の方。

 

<「自然栽培パーティ」が今春から始めた「一反パートナー」の第1号に同社が名乗りを上げた。>この「一反パートナー」が<障害者らが育てた米を収量にかかわらず企業や団体が一定金額で買い取る仕組みで、事業所の安定収入につながる。>

 

ある意味、棚田オーナー制や消費者の共同購入制などで培われてきた仕組みをうまく活用しているようにも思うのです。農地での生産活動に参加して、収穫を得つつ、農家の所得の安定に寄与して、その棚田景観の保全を図ったり、食の安全を守る機能を、福祉分野にも適用し、企業に求められている社会貢献とも親和性がある仕組みではないかと思います。

 

この仕掛け人の佐伯氏を導いたのは<青森県弘前市のリンゴ農家、木村秋則さん(67)だ。「太陽のエネルギーで土の中の微生物を育て、自然の栄養素で作物の力を引き出す」という木村氏の言葉などから、<自然栽培の農法に活路を見いだした。>というのです。

 

この自然栽培により障がい者自身、その働く楽しさに加えて賃金アップという、大きな収穫を得たのではないかと思います。<「みんなが土に触れて楽しそうに仕事をするようになった」と佐伯さん。B型事業所の全国平均工賃は月額約1万5000円(15年度)に過ぎない。青空の場合、利用者(約20人)の工賃は現在、月額平均約5万円となった。>

 

それだけではありません。<カシオ計算機の小林誠CSR推進部長(59)は「障害者の賃金向上と耕作放棄地の再生、安心安全な食。自然栽培パーティにはこの三つの要素がある」と今後に期待する。>と耕作放棄地の再生、安心安全な食の2つを付け加えています。

 

私は重大な要素をうっかり取り残されたのではないかと思うのです。それは企業の社員と家族の心の豊かさを育むことです。それは親子が土と自然の中で触れあうことにより、普段失いつつある心の自然な触れあいの機会を取り戻すことにつながると思うのです。夫婦一緒であれば、大事な絆を維持、改善する場にもなるでしょう。

 

そして忘れてはならないのは、障がい者とともに作業することにより、お互いがそれぞれを思いやる気持ちを育むことにつながると思うのです。むろん一回限りではそう簡単にはいかないでしょう。継続こそ力となり、本当の豊かな心育む場になるのではと期待するのです。

 

余談ですが「一反オーナー制」は、これだけでは法的な性格・仕組みがはっきりとしませんが、基本的には農地法改正で賃貸借は一部規制緩和されましたから、農地は農家が所有したままで、「菜の花」が一定の条件で借地しているのではないかなと推測します。カシオ計算機はその農地のうち一反だけ収穫について一定の金額で買い取るという契約になっているのでしょうか。オーナー制といっても土地所有にはつながるものではないと思います。

 

そんな法律論は別として、心ある人たちは、豊かな自然を守るため、また、心豊かな気持ちを育むため、様々な法規制とは別の独創的な法的仕組みを作り上げてきたことを、長い歴史が証明しているようにも思うのです。法律は強固なバリアですが、志があれば突き抜けられるものです。そしてそこに新しい価値を生み出し、心のバリアを破ってより心地よい関係づくり、自分づくりができるのではと思っています。

 

今日はこの辺でおしまい。