たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

水銀と人の歴史 <水俣条約 発効 水銀汚染、根絶へ課題は>などを読みながら

2017-08-16 | 廃棄物の考え方

170816 水銀と人の歴史 <水俣条約発効 水銀汚染、根絶へ課題は>などを読みながら

 

今日のテーマをある少年の感動的な更生をめぐる記事に注目して取り上げようとしたら、ウェブに掲載されておらず、テーマを変更しました。

 

今日「水銀に関する水俣条約」が発効されたということで、毎日朝刊は1面で<水俣条約発効 水銀製品、原則禁止へ>として、<世界最大規模の有機水銀中毒事件「水俣病」の被害を繰り返さない決意を込めた日本の提案で、条約名に「水俣」の地名が冠された。日本は条約に沿った水銀規制を盛り込んだ水銀汚染防止法制定などの準備を経て、16年2月に条約を締結した。>と「水俣」という地名を冠した含意を取り上げています。

 

ただ、<国連環境計画(UNEP)によると、人為的に大気中へ排出されている水銀は年間約2000トン。半数以上が途上国でのASGMや、石炭など化石燃料を燃やすことによって排出される。>ということですから、その現在の環境や人への影響はそれほど大きいともいえません。<条約事務局によると条約を締結したのは、14日現在で73カ国と欧州連合(EU)。>という加盟国の数は関係国もさほど多くないと一応はみてよいのかもしれません。

 

条約自体、<発効に伴い、水銀を含んだ蛍光灯や電池などの製品の製造や輸出入が2020年までに原則禁止されるほか、今後15年以内に水銀鉱山からの採掘もできなくなる。また途上国での零細小規模金採掘(ASGM)での水銀使用も減らすよう求める。>ということで、世界全体の経済への影響はさほど影響があるとは考えにくいように思います。

 

より詳細は環境省の<水銀に関する水俣条約の概要>や、その<条約解説>で大筋は理解できると思います。

 

毎日朝刊は13面で特集し、<水俣条約 発効 水銀汚染、根絶へ課題は>として、日本とフィリピンのNPO、それに環境省の担当者にそれぞれの視点から水銀汚染の根絶が容易でないことと、その対策を語ってもらっています。

 

だいたい水俣病自体、いまなお解決されていない事実を私たちは忘れてはいけないでしょう。水銀自体の毒性も問題ですが、さまざまに利用されることにより化学変化し、特定の健康被害の原因物質を特定するのに多大な時間がかかった経験を活かす必要があるでしょう。また、微量摂取の場合の慢性毒性では他の疾病との識別を困難にすることがあることも注視しておく必要があるでしょう。一旦、排出されたら、さまざまな生態系プロセスで多様な影響があることも、忘れてはいけないでしょう。

 

<NPO「水俣病協働センター」理事・谷洋一さん>は、<日本政府の姿勢の最大の問題点は、水銀中毒の人体への影響を極めて過小評価していることだ。>と強調しています。

 

年間数10トン前後の水銀を輸出していることにについて、谷氏は<水銀の回収や管理については、日本国内で出る水銀はやはり国内で処理し、保管すべきだ。輸出された先の国々で汚染につながることはやめなければいけない。国内のどこで保管するのかを含めて、そうした水銀処理のシステムを早急に確立すべきだ。>と、安易な有毒廃棄物の海外移転を非難しています。

 

また、<比NGO「バントクシックス」職員、アーリーン・ガルベスさん>は、条約は<新規水銀鉱山の開発禁止。既存鉱山からの産出は発効から15年以内に禁止>としつつ、途上国の経済や地域の生活を維持するため、<零細小規模金採掘(ASGM)は使用を削減>としたことに関連して、水銀が危険なものであることを<フィリピンのような貧しい国では、教育を受けていない人はその恐ろしさを知らない。知識がないまま使用し、健康被害を引き起こしているのが現状だ。条約を通じて多くの国が協力し、貧しい国にも水銀についての教育と規制が広まってほしい。>と訴えています。

 

これを読んでいて、わが国も古代から水銀を利用して長い間、虐げられた人たちがその有毒の犠牲になってきた、そして水俣病も多くの献身的な医師や弁護士、無数の支援者のおかげで問題が明らかにされたのは長い年月をかけ、ようやくでした。

 

少し横道にそれますが、水銀は金、銀、銅などのアマルガムとして重宝され、東大寺大仏の金メッキでも大量に使われ、労役を課された賎民たちに多くの健康被害を生じさせたのでしょう。帚木蓬生著『国銅』ではその点も描写されていたと記憶します。

 

わが家から遠望できる雨引山の背後には丹生都比売神社が鎮座していますが、丹生は水銀のある場所として古来、地名とされてきましたが、その世界遺産ともなった神社は元は水銀を祀っていたとも言われ、その後は豊作のための雨乞いを祈るようになったとも言われることがあるようです。

 

縄文時代以来長い間、水銀は有用性があるものとして利用されてきたわけです。で、現在も途上国を中心に金の精製に利用されているのです。

 

ガルベスさんは<フィリピン国内では金の混じった鉱石や砂を採り、そこから金を精製する「零細小規模金採掘(ASGM)」の現場で水銀が使用されている。水銀を金鉱石などと混ぜると合金ができる。これを熱すると、水銀だけが大気中に蒸気となって飛散し、より純粋な金ができる仕組みだ。>と指摘します。

 

映画「ブラックダイヤモンド」では暴力集団が略奪してきた子どもを使って、新たな殺戮を繰り返すとともに、河で金を見つけさせ、密輸して兵器などの資金源にしている状況を描いています。

 

ダイヤモンドや金、だれが欲しがるのでしょうか。よくその生産方法や過程が適法におこなわれている保証を国際的には求めていると言われていますが、それを担保するだけの法制度は途上国、とりわけ紛争地帯や秩序が安定していないところでは、そのような制度があっても意味をなさないでしょう。

 

その意味では、金やダイヤモンドを利用し、消費する人が、どのような意識をもつかが問われているように思うのです。

 

<環境省水銀対策推進室長・西前晶子さん>の指摘は、環境省職員としては的確な内容だと思いますが、現状の問題に対してどこまで有効に働くか、注視していく必要があるでしょう。

 

中途半場ですが、今日はこの辺でおしまいです。