ちょっと待って!

見たこと聞いたこと、すんなり納得できません。あ、それ、ちょっと待って。ヘンじゃありません?  ヘンです。

聞いてくれへん

2012-02-22 23:57:56 | Weblog
「あんたが来るの、丁度一カ月めやな」
 と母は言いました。
「先月は11日。今日は10日」
「11日や」
 と、見ていた新聞の折り込みちらしを差し出しました。母は、ヘルパーさんに買って来て貰うものを、毎日チェックしているのです。
「ああ。ほんま。11日やな」
 私は約束も休日もない生活ですから、日にちをよく忘れます。新聞は日にちを確認せずに読んでいますし、チラシを見て、特価品をスーパーへ買いに走るということもありません。
「今日は魚を買うて来て貰らおと思うててん」
「あ。鮭の切り身、買うてきたよ」
 昨日、我が家の近くのスーパーで、鮭の切り身三枚入りのパックや、どら焼きやパンを買ったのです。駅から母の家へ来る途中で、おはぎも五つ買いました。
「きれいな鮭やなあ。晩のおかずにするわ。ふたつは冷凍にしといて」
「お昼に、おはぎ食べる?」
 餡と黄な粉のを小皿に取って、あとは全部仏壇へ持って行きました。
「私はなんのために生きてるのやろな」
「長生きの見本や。認知症も既往症もなしで、あと何年生きるか、お姉ちゃんと私の見本」
 母は、昨年の夏、100歳になりました。指の力が無くなって好きだった縫い物が出来なくなったので、今までイヤがっていたケア・センターへ、週一回だけ行くようになりました。
「お姉ちゃんは私より元気や。まだ車にも自転車にも乗るし、1週間に二回は来てくれる」
 母も姉も大阪で、母は北の端、姉は南の端で暮らしています。私は、大阪から和歌山に入った処にいますので、月一度来るのが精一杯です。姉まかせで安心しています。私が行くと、母は四時間ぐらい喋っています。
「この話、もうしたかなあ」
 と言いながら、同じ話を3度、4度、繰り返します。
 テレビは昨年、新しいデジタルを買いました。電気屋に電話して持って来て貰えばいいのにマミ(孫)に「買って来て」と頼みました。マミが39インチのを買って来て取りつけてくれたのですが、「もっと大きいのがええわ。変えて来て」と言ったら、別に42インチのを買って来て、39インチは自分の家へ持って帰ったという話、何度聞かされたでしょう。
「テレビはいろいろのもん見れるけど、ひとりは寂しいで。わたしの話聞いてくれへんし」

写真は、金の成る木の花。12月。