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●複雑な気分

2010年11月15日 05時09分37秒 | Weblog

THE JOURNALの篠田博之さんの記事です。

 死刑存置反対ですが、こういう記事を読むと、篠田さん同様、やはり複雑な気分にさせられます。
 
被害者遺族であっても死刑反対の方がいます。ですので、関係者や当事者でもない者が遺族の気持ちを勝手に忖度して、死刑を支持することを私は理解できません。でも、この記事にあるような遺族の方の気持ちも、当然、理解でき、一方で、遺族の方に失礼ながら、死刑執行しても問題は解決されず、気持ちの整理もつかないのではないか、とも思われ、より一層複雑な気分にさせられます。

 記事にある中島岳志さんの記事もたまたま読んでいる途中でした。
 
事件後のマスコミや市民の本事件に関する微妙な冷め具合や、被告の社会との関係性についての事件直後の皆の思い込みとその後の裁判で明らかになった実像との差など、いろいろと考えさせられる記事でした。

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【http://www.the
journal.jp/contents/shinoda/2010/11/11.html】

11月9日アキバ事件加藤智大公判を傍聴しました。


 前回の公判に続いて被害者遺族の証言。特に9日は遺族の調書の朗読だけでなく、殺害された川口隆弘君(享年19)の父親が直接法廷に立って、1mほどしか離れていない加藤智大被告人に向かって詰め寄るという壮絶な意見陳述でした。傍聴席の最前列に座っていた私もハンカチで涙をぬぐいながらの傍聴。この日は女性判事もハンカチを出していました。
 父親の意見陳述はこんなふうに始まりました。「加藤、よく聞け。俺はトラックではねられた川口隆弘の父親だ。俺の息子がどんなに苦しい思いで死んでいったか。俺はお前を絶対に許すことはできない」。その後、息子の傷だらけの遺体と対面した時の様子、火葬した時の辛い気持、今年の成人式には息子が生きていれば出席したはずだと代わりに参加したことなどを切々と語りました。
 そして再び加藤被告人に向かい、こう詰め寄りました。「17人も殺傷したお前にとって死刑は楽な死に方だ。お前に同じ苦しみを味あわせてやりたい。お前は頭はいいのかもしれないが、人間としては最低だ。掲示板でいやな思いをしたといっても、世間の人は皆いろいろなことを我慢して生きているんだ」。
 そして最後をこう締めくくりました。「世の中には死刑に反対する人もいますが、それは身内を殺されたことがなく、遺族の苦しみをわからない人だと思います。裁判長、極悪非道の加藤をぜひ死刑にしてください」
 この前には母親の長い調書(意見陳述)も女性検察官がモニターに写真を映しながら読み上げました。亡くなった一人息子が幼少からどんなふうだったかを切々と語ったのですが、この両親にとって息子の突然の死をまだ完全に受け入れることができないでいる、その思いを吐露したわけです。
 前回の公判で読み上げられた他の被害者遺族の調書でも、身内の無残な死を受け入れられず、神経科の医者にかかるようになったとか、睡眠剤なしでは眠れないといった体験が語られていました。身内を突然、理不尽な形で惨殺されたという体験は、こんなふうに遺族を後々まで苦しめるわけです。
 私も『ドキュメント死刑囚』に書きましたが、奈良幼女殺害事件の小林薫死刑囚の裁判で幼女の両親の法廷証言の時には法廷中が涙に包まれたのですが、この両親もいまだに娘の不条理な死を精神的に受け入れることができない状況でした。
 加藤被告人に向けられた父親の証言の最後に、死刑反対論への批判があったことも、私を複雑な思いにさせました。私自身はどちらかといえば死刑制度反対論者ではありますが、息子を殺された親の「犯人に極刑を求める」気持ちは当然だし、私自身も同じ立場なら同じ主張をするだろうと思います。だからこの父親の意見には同意します。
 ただ、私が前掲著書で主張したのは、凶悪事件の犯人にとって「罪を償う」とはどういうことなのか、個々のケースに即して考えようということです。この加藤被告の場合も、もう死刑を覚悟しているのは明らかで、恐らく一審で死刑判決が出て、本人が控訴取り下げで確定させる可能性は高いと思うのですが、ちょっと釈然としないのは、それが本当に彼にとって罪を償ったことになるのだろうか、ということです。ま、このへんは難しい問題で、私も加藤被告に即してこうだと断定的に語るほど整理ができていないのですが。
 次の公判は11日。被害者遺族の証言が続きます。
 なおこの加藤被告の裁判については、『創』11月号(先月号)で北海道大学の中島岳志さんが14ページにわたって自分の見解を語っていますが、これもものすごく考えさせる内容です。関心のある人はぜひ読んでほしいと思います。

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