阿部ブログ

日々思うこと

イスタンブール西部開発と第三空港プロジェクト

2013年03月19日 | 日記
相変わらず、トルコにおいてはシリア国境地帯で軍事的緊張が高まりこそすれ、脅威が減少することはない状況が続いているが、イスタンブールの西部地区の新規都市開発プロジェクトが始動している。このイスタンブール西部開発の延長線上には黒海経済圏の盟主としての地位を確実にする国家意志を感ずるのは、気のせいではないだろう。

ご存じの通りイスタンブール(5,343平方km)は、ボスポラス海峡を挟んで欧州半島とアジア大陸に跨って位置する歴史ある文化・観光都市で、イスタンブールだけでトルコの全GDPの22%と政府税収の約40%を生み出すトルコ経済の中心である。特に近年、イスタンブールへの観光客が激増している。イスタンブール県文化観光局の統計によれば2012年1~8月間にイスタンブール を訪れた観光客の数は、昨年の同じ期間に比べて17.8%増加の614万8千人に上った。 因みに昨年の同期間の観光客数は521万7千人。

経済発展著しいトルコの中心としであるイスタンブールでは、人口が2000年代以降急速に増加しており、1980年の615万人から2011年には13,48万人に倍増している状況であり、都市機能はこの人口増大に整備が追いついていない。特にイスタンブールの乗用車台数は200万台の大台を超え、高速道路などの交通インフラ整備は、後手後手で慢性的な交通渋滞、深刻な排気ガスによる環境問題などが年々深刻化している。

このようなイスタンブール西部で新都市建設プロジェクトが始動した。新都市は、イスタンブールのテルコス湖近郊に建設予定の第三空港とその周辺地域であるイェニキョイ=アクプナルから、南部のバシャクシェヒルを含むキュチュクチェキメ湖にまで至る。この新都市開発地域である約4万ヘクタールの新都市建設予定地域における無許可建築物が一掃される協定が、環境・都市計画省、交通海事通信省、集合住宅局(TOKİ)、土地・住宅・不動産投資共働会社(Emlak Konut GYO)の間で調印され無許可、無人建築物など都市建設に邪魔な建築物が一掃される事となり、開発の下準備は完了した。

現状で明らかになっているのは、黒海沿岸の北部地域に建設される第三空港(約9000ヘクタール)とその周辺地域約2万5000ヘクタールの用地に、公共空間を含む住宅群、スポーツセンターを含む教育施設と産業技術研究開発センター等が計画されている。また別に4400ヘクタールの用地がプロジェクト予備地域として指定されている。

このイスタンブール西部開発プロジェクトで重要なのが、第3空港プロジェクトである。黒海の近くにあるアルナヴトキョイ=ギョクテュルク=チャタルジャの道路が合流する交差地、約3500ヘクタールの土地に建設される。この空港は現状の計画通りに行くと、合計6つの滑走路を持つ世界で最大規模の空港の一つになるだろうと言われている。
(※:建設予定地のイェニキョイ(アルナヴゥトキョイ郡)と、アクプナルキョイ(エユップ郡)は、イスタンブール周辺の貯水の約22% を占めるテルコス湖に近い位置にある)

第三空港プロジェクトは段階的に進められ第一期工事は2017年に完了する予定で、最終的に150万人の旅客収容力をもつ巨大空港となる。第一期工事の入札日は、今年(2013年)の5月3日で、入札にはトルコ国内の企業グループなどが札を入れるべく様々な動きがみられる。因みに第三空港の建設は、イスタンブール第三橋と同期を取り同時期の完成を目指している。

今年のトルコの航空旅客数は1億4400万人で、旅客も通過を含めて1500万を超えると予想されており、前述の通りイスタンブールへの観光客の増大を踏まえて、歴史ある都市として国際競争下にあるイスタンブールにとって、第三空港の位置づけは非常に重要である。

第三空港の建設に伴い地域の開発も進む。空港や航空会社関連など雇用の拡大とイェニキョイ=アクプナルキョイ周辺の人口は増加するだろう。この人口増加に対応する為、新しい住宅地、商業施設やホテルが建設されるだろう。また空港とイスタンブール市街地への移動の為、高速道路の建設と広軌鉄道の敷設が必要となる。

イスタンブール北部都市開発プロジェクトは、環境・都市計画省が主体で実施され、上記の協定に調印した各組織・団体は、開発地域にて、それぞれに割りあてられた開発業務を実行するが、既に土地・住宅・不動産投資共働会社が不動産の入札を行っている。「第二回イスタンブル・カルタル土地売却による利益分配に関する入札」では合計41社のうち18社が応札に応じている。
何れにせよイスタンブールの西部開発プロジェクトは始動したばかりで日本企業にもまだチャンスはありそうだ。

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