阿部ブログ

日々思うこと

ロシアとウクライナ〜クリミア半島を制するものが黒海を制する

2018年09月21日 | 雑感

露国防省は、ウクライナに接する南部軍管区に T-72B3、BMP-3、BTR-82A、2S19M2 Msta-SMなど450点の陸上兵器と、Su-25SM3、An-148-100など新鋭の航空機10機とUAVなどの最新装備を配備した。ウクライナとロシアの軍事的緊張は高まるばかりである。そんな中、ロシアは、アゾフ海やケルチ海峡を通航するウクライナ行の船舶のサイズを制限するなどして、ウクライナの海上貿易に干渉しつつある。有事の際には、日本海軍が旅順港でやったように、ロシア黒海艦隊も潜水艦による艦船への魚雷攻撃や機雷敷設などによる海峡閉塞を行う可能性が高い。ダーダネルス海峡を押さえるトルコとは、エルドアン大統領暗殺&クーデター未遂以降、ロシアとトルコの関係は良好であり、シリア情勢を含め情報共有と連携を強化している。また、最新式のS400防空ミサイル導入などNATO加盟国とは思えないトルコ軍の動きに、EU特にドイツは憂慮を深めており情報活動を活発化させていると言われる。

ロシアは、黒海に於ける軍事力強化と覇権を確実にする為、鋭意戦力を強化しており、インフラの強化にも余念なく、2016年には、クリミア半島とロシア本国を結ぶケルチ海峡にCrimean Bridge建設の計画を発表。終局的目的は、「クリミア半島を制するものが黒海をを支配する」である。また、カスピ海側Kaspiyskのロシア海軍基地を拡張する為、ダゲスタンと交渉に入っている。これは2018年4月に発表しているロシア・カスピ小艦隊をAstrakhanからKaspiyskへ移駐させるに伴う動きであり、Kaspiysk港の拡張工事の第一フェーズは年内に着手する予定である。因みにカスピ小艦隊は、ロシア軍として初めて巡航ミサイルをシリアに対し実戦発射した部隊である。

2018年6月には黒海艦隊司令官が交代し、アレクサンドル・アレクセーヴィチ・モイセーエフ中将が着任。ロシア連邦英雄の称号を持つモイセーエフ中将は、1962年4月16日にカリーニングラード州グヴァルジェイスキー・ボルスコエで生まれ。A.S.ポポフ記念電波電子海軍高等学校を卒業。中将は潜水艦勤務が長く、1997年から2001年まで、ロシア北方艦隊の戦略原子力潜水艦K-407「ノヴォモスコフスク」の艦長等を務め、2007年から2009年まで北方艦隊の第31潜水艦師団司令官など歴任。

ロシア黒海艦隊は、シリア方面、及び地中海東部における中核戦力であり、9月1日から8日まで、ロシア海軍とロシア航空宇宙軍の演習を実施するなど実戦的訓練を重ねており、米第六艦隊の黒海での活動を牽制する動きか顕著である。この演習には潜水艦2隻を含む艦艇26隻とTu-160,Tu-142,Il-38,Su-33,Su-30SMなど34機が参加した。また、ロシア軍機が撃墜されたが、ロシア=イスラエルは、シリア情勢と対イラン工作に於ける連携を密にしており、ネタニヤフ首相とプーチン大統領は何度も直接会談を行っており、両国の関係は悪くない。

成層圏を飛行する高高度疑似衛星と言う無人機に注目〜AirBusのZephyrが飛行時間最長を記録

2018年09月16日 | 雑感
9.11以降、航空機によるテロ攻撃を如何に防御するかが課題となっているが、2012年以降、高高度疑似衛星(High Altitude Pseudo-Satellite:HAPS)
が注目されている。これは人工衛星と航空機の中間に位置づけられる飛行体で、高度2万メートル以上の成層圏を飛ぶ。(通常の旅客機は1万メートル程度を飛行するが、高高度疑似衛星はその倍以上の高空を飛行する。)成層圏ともなると対流圏(雲や偏西風や気流)の影響がなく、宇宙空間と同様に24時間365日、太陽光による発電が可能である。また何百億円ものコストと打ち上げリスクをかけて人工衛星を打ち上げるより格段に低コストであることから、欧米各国で高高度疑似衛星の開発と飛行実験が行われている。
米国は、いち早くマルチコプター(ドローン)など低視認性の飛行体によるテロ攻撃を、如何にして早期発見し、撃退するかを研究し、当面の脅威とリスクを低減させる為、ワシントンDC上空に2機の監視用飛行船を配置している。しかし、この飛行船は臨時対応用で、米軍は、成層圏で運用する高度疑似衛星Stratobusを、2020年までに成層圏に静止させ地上監視を行う計画を進めている。Stratobusは、重量5トンの飛行船で、250kgの積載能力と5kWの発電能力を持ち、成層圏で最長5年の連続運用が可能である。イギリス軍も高高度疑似衛星の導入を決めているが、飛行船型ではなく、Airbus Defence & Space社が開発中の有翼機(グライダーを大型/軽量化した機体)Zephyr 8を採用する。機体重量は50kgで積載能力は10kg、太陽光発電により最長1年間の長期滞空が可能である。Zephyr 8は、24時間以内に世界中の空域に進出可能で、軍事偵察が主な任務である。
現在AirBusは、最新型のZephyr Sを開発しており、2018年8月には飛行時間25日23時間57分の世界最長飛行記録を達成した。Airbusは、さらに大型のZephyr T(翼幅33m、重量140kg)も開発中である。BAE SystemsはPrismaticと共同で1年間連続飛行が可能なPHASA-35を開発中で、2019年の試験飛行に向けて準備中であり、機体は翼幅35m、重さ150kgである。
過去の宇宙開発競争による衛星の残骸や、2010年代に入ってからロシア、中国による地上発射ミサイルによる人工衛星破壊実験などにより宇宙デブリの存在が国際宇宙ステーションや人工衛星の大きなリスクとなりつつある中、比較的安価で海洋監視・観測・通信中継・偵察などのサービスを提供できる高高度疑似衛星は、新しいビジネスの新領域として注目を集めるだろう。

○主要参考文献(含むURL):
Airbus Zephyr Solar High Altitude Pseudo-Satellite flies for longer than any other aircraft during its successful maiden flight
https://www.airbus.com/newsroom/press-releases/en/2018/08/Airbus-Zephyr-Solar-High-Altitude-Pseudo-Satellite-flies-for-longer-than-any-other-aircraft.html 

Solar UAV to be developed with the potential to stay airborne for a year
https://www.baesystems.com/en/article/solar-uav-to-be-developed-with-the-potential-to-stay-airborne-for-a-year# 

常盤橋ゴジラギャラリー

2018年09月16日 | 雑感
東京駅日本橋口前の常盤橋では「常盤橋街区再開発プロジェクト」が進められている。敷地面積は3.1haで、大阪の「あべのハルカス」を抜いて日本一となる390mの超高層ビルが建設される。この建設工事現場には、「常盤橋ゴジラギャラリー」が設置されている。

※過去ブログ:東京ミッドタウンに ゴジラ ~MIDTOWN meets GODZILLA~

































































































大手町牧場に行って来ました〜この常盤橋から呉服橋一体には日本一高いビルが建設される

2018年09月16日 | 雑感
東京駅の日本橋口、所謂「呉服橋」には日本一の高さとなる地上61階、高さ390mの超高層ビル(B棟)など4棟が建設される。 事業名は大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業で、 JXやパソナなどのビルが解体され、2017年4月からにD棟(地上9階・高さ65m)が着工した。 この建設現場の大手町 JOB HUB SQUAREビル13階に「大手町牧場」がある。



































































































この大手町牧場には、牛2頭、ヤギ9頭、ミニブタ5頭、アルパカ1頭、烏骨鶏 20羽、フラミンゴ10羽などがおり、特にミニブタ君は可愛いです。フクロウさんも4羽をおり、まるで人形のようだが、ちゃんと生きて動いている。
尚、大手町牧場の見学には予約が必要です。



ロシア正教会からのウクライナ離脱とキリスト教東方正教会〜ロシアは「第三のローマ」であり「正教大国」

2018年09月05日 | 雑感

共産主義を掲げたソビエト・ロシアは「宗教はアヘン」であると主張したことから、徹底した無神論であると誤解されているが、ロシアは、東方キリスト教の影響が深く根ざす地であり、民衆の信仰心も篤く、ロシア革命も古儀式派と呼ばれるロシア正教会の一派が重要な役割を果たしたことが判明している。
2014年3月、ロシアは「クリミアを制する者が黒海を制する」との地政学的セオリーに則って半島を軍事制圧した。クリミアは、第二次世界大戦に於いて、ドイツ屈指の戦略家として知られたエリッヒ・フォン・マンシュタイン将軍率いるドイツ軍と血みどろの戦闘を繰り広げた地であり、セバストポリ攻略戦は戦史に残る激戦として知られる。このクリミア半島はロシア正教にとっても重要な地である。988年、キエフ大公国のウラジーミル大公が、初めて東方キリスト教の洗礼を受けた(受洗)した地であり、これを記念する「聖使徒ウラジーミル大寺院」が存在するからである。
キエフ大公国の国号はルーシー(キエフ・ルーシー公国)である。ルーシーは、ロシア帝国の起源であり、キエフ大公国が存在した当時の地中海世界、イスラム世界、ノルマン世界と一線を画する地域として、母なる「ボルガ川」とドニエプル川を挟んだ地域はルーシーと呼ばれていた。つまり、ルーシーは、ロシア、ウクライナ両国にとって共通のルーツであり、クリミア半島問題によりウクライナの国民感情が悪化し、ロシア正教会からの離脱を指向するのは、政治的・文化的、且つ宗教観点からは自然な成り行きだと言える。前述の通りクリミアは、ルーシーが東方キリスト教化した時の聖地であり、且つロシア帝国以来、クリミア半島は現在に至るまで重要な軍事拠点であり続けた地だからである。
現在のロシアに於いても宗教は重要な政戦略的要素であり続けている。ロシア正教会は、10月15日、東方正教会を統括するコンスタンチノープル総主教庁との関係を断絶すると発表した。これは、総主教庁が、ロシア正教からのウクライナ正教会独立を正式に承認したことへの対抗措置である。プーチン大統領は、就任以来、宗教大国を公言し、ロシア正教会との関係正常化を行ってきた。また、ロシアは、ローマ帝国、ビザンチン帝国(東ローマ帝国)を引き継ぐ、正統な第三のローマであるとの主張もしており、ヒトラーも第三帝国を掲げた背景も考えると、クリミア併合は、政治・軍事的紛争から、歴史・宗教へと拡大することで、極めて深刻な対立を惹起するだろう。イスラム教に於けるシーア派とスンニ派の対立が良い例である。宗教が絡むと軍事紛争は大規模化し、無差別テロや宗教指導者の教唆による民衆による虐殺など陰惨な事態を引き起こす可能性が高いのは、中東の状況を観ると明らかである。

現在、我々は、宗教の与える影響の大きさに瞠目している。米大統領選挙におけるキリスト教福音派が与えた影響は、結果として米中貿易戦争などを引き起こすなど甚大である。世界情勢を理解し予測するには、今後も宗教は最重要なファクターであり続けるだろう。

○主要参考文献(含むURL):
★ロシア正教の古儀式派の歴史とロシア革命における影響を知るには、下斗米伸夫の『神と革命~ロシア革命の知られざる事実』が良い。
https://www.amazon.co.jp/%E7%A5%9E%E3%81%A8%E9%9D%A9%E5%91%BD-%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E9%9D%A9%E5%91%BD%E3%81%AE%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%96%E3%82%8B%E7%9C%9F%E5%AE%9F-%E7%AD%91%E6%91%A9%E9%81%B8%E6%9B%B8-%E4%B8%8B%E6%96%97%E7%B1%B3-%E4%BC%B8%E5%A4%AB/dp/4480016570 

★国際政治と宗教全般を網羅的に把握するには、『宗教と国家~国際政治の盲点』を奨める。
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