秋田県由利本荘市の海岸に、北朝鮮の漁船らしき船が漂着して、8人の乗員が保護された事件は全国ニュースでも報道された。さらに係留していた問題の船舶が一夜明けたら無くなってしまったという冗談みたいなオチもついた。首都圏在住の一般的な国民からすれば、「へえ」というニュースでしかないかもしれない。でも現地に住む僕のような身からすれば、これは大きな問題を抱えている深刻なニュースだと思う。まず、最初に報道を見たとき、僕は大きな違和感を覚えた。その違和感は、「船の漂着は午後11時50分頃で、地元の住民からの通報連絡があった」という報道に対してだった。当時秋田県沿岸部は雪と雷混じりの暴風状態だった。天候が良ければ釣り人がいる可能性もあるが、あの天候で現地の人が海に近づくなんて考えれられない。なにしろ海に攫われたら一巻の終わりなのだ。そして、そんなことは地元新聞社は勿論、当地に拠点を持つ報道機関であれば百も承知の筈だ。にもかかわらず、「通報」または「地元民からの連絡」という表現に固執しているところに怪しさを感じた。
この件については、程なく真相が分かった。地元の方が発見通報したのではなく、漂着した北朝鮮の漁船員が、上陸後に数キロ離れた民家まで移動し、インターホンを押したという。漂着場所から数キロ離れたところには、住宅地(新興住宅地)がある。8人のもの人間が上陸して数キロを誰にも発見されることなく歩いている。迎えの車があれば難なく密入国も成立する。
上陸場所は都会ではない。夜の11時過ぎといえば、民家は寝静まり、インターホンが押されることなどない。仮に押されるとすれば、生命に関わるような緊急事態以外はあり得ない。しかも出てみれば、朝鮮語を話す漂着したような集団。北朝鮮問題の渦中にあるなか、対応された住民の恐怖は想像して余りある。報道側も、そこが問題化することを避けるため、「住民が発見して通報した」という表現を使ったことは明白だ。
この問題については、書きたいことが山ほどあるが、あまりに長くなり意味不明な文章になりそうなので、問題点を箇条書きにて記す。
<根本的な疑問点>
○本当に漁民なのか、工作船及び工作員の可能性はないか。
○本当に保護された8人だけなのか。一部の乗員が上陸して国内に潜入した可能性はないか。
○一ヶ月漂流したという説があるが、あの粗末な船でそんなことが可能なのか。飲料は?食料は?排泄物は?
○防波堤に着岸しているが、故障した船で何故そんなことができるのか。(着岸するだけであれば、もっと平易な場所がある)
○証拠物件の船をマリーナの係留施設に曳航することができる筈なのに、何故現位置に留め置くのか(実際、船は翌日消失した)
<対応に関する問題点>
○警察署がどう対応するか、マニュアルも指針もないと思われる。事件なのか事故なのか、テロの危険性があるのか、考慮すらしていない。
○第二波、第三破の上陸があれば実質的に対応できない。上陸し放題となる。
○住民が発見した際、どこに通報するか周知がされていないし、受け入れ部署もない。
○警察は基本的に事故として対応している。周辺に不審者が潜伏していないか、調査も不十分。
○証拠物件の管理がずさん。もし工作船で武器や危険物があればどうするのか。本当に漂流かどうかは証拠物件で検証しないといけない。
○警察の対応は、野次馬を近づけないというだけの対応であり、誰から誰を守ろうとしているのか不明。
まだまだあるだろうけど、日本海の海岸線の(ほぼ)無人地帯は数百キロメートルにも及ぶという。大型船であれば補足は可能であろうが、比較的小型の木造船であればレーダー監視もままならない。そもそもかつては海岸から北朝鮮の工作船で日本人が拉致されているのだ。日本国内の幹線道路はNシステムが網羅し、商店街なども監視カメラがカバーしているが、広大な海岸線は隙だらけなのである。漁港や船着場、船が着岸できる場所などに少しづつでも監視カメラの設置を進めるべきではないだろうか。同じような木造船が仮に100隻も上陸し、各船に10人の工作員がいれば、一気に千人の工作員が潜入することになる。今回の海岸にも、仮に100名単位で上陸されれば警察による治安維持も困難だろう。
つまりは、朝鮮半島からは方法を駆使すれば木造船で日本に上陸することができる。相手が軍艦であれば防衛行動に出るだろうが、漁船が大挙日本を目指してきたとして、それを阻止する覚悟と方法があるのだろうか。そして朝鮮半島有事の際に、それは現実となるのだ。まずは事態の想定と、警察、消防、海保、自衛隊の役割分担、対応マニュアルの策定が急務である。そのうえで広大な海岸線を管理するデバイスの整備を進めてほしい。北朝鮮が上陸した際の日本側の反応をみるために敢えて行った実験の可能性もある。国会で「もりかけ問題」とか下らないことを延々と続ける暇があれば、国民の財産生命を守るための討議をするべきかと思う。
追伸①:警察の調査に協力して船を出した地元民間の船舶関係者が、北朝鮮船がテトラポットに囲まれた防波堤に着岸できたのは、「偶然が重なった奇跡としか思えない。故障していない(かつ高性能の)自分の船でやったとしても、100回トライして2回できるかどうか」と証言した。
また現地を見にいったら、パトカーに婦警さんが乗っていて、誰かがくると面倒そうに「移動して下さーい」とかやっていた。いち地方警察署を責めるのは酷だが、緊張感の欠如は明らかだ。現場には規制線が張られているが、その規制線ときたら・・・。これを見て入らない相手だと良いが・・・。警察は野次馬を排除することしか頭になかったようだ。誰に対し誰を守るのか、その根本を見直せと言いたい。
追伸②:秋田県警の対応について、秋田県の佐竹知事が批判した。「しっかりと船を調べないと。調べれば痕跡があるから。地元の漁民の方も言ってたが、移動できるときに移動して証拠の保全をすべきだった。住民に不安を与え、捜査の機会を逃したのは疑問が残る」。全くもって完全に正論かと思う。
追伸③:案の定というか、秋田県男鹿市でも砂浜に漂着した別の北朝鮮船舶が発見された。内部から8人の遺体が発見されたが、関係者によると船は漁船構造ではないと言う。密航等を試みた可能性もあるということだ。