波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

雪解川

2015-05-15 21:22:11 | 掌編小説
★雪解川


 一年前のちょうど今頃だった。
 雪解けと大雨で増水した川を、丸太にのった猫が流されてきた。
 その猫をKは、丸太からもぎ取って助けた。一瞬の出来事だった。あと一秒遅かったら、猫は流れ去っていた。
 猫は必死にKの腕に捕まって、家に来るまで離れなかった

 その猫は現在、三匹の子猫の親になっている。子供にいのちの恩人だと教えているらしく、Kが帰宅するとき、三匹と母猫は、そろって玄関に迎えに来ている。
 鍵を回す音を聞いているらしく、Kがドアを開けるなり、いっせいに四匹の緊張が崩れて、花開くのだ。
 玄関からリビングに来る間は、Kと四匹の行進になっている。先を進むKを抜かせば、親が先頭で、大きさの順に子猫がつづいている。
 四匹とも、挙げた尻尾の先がカギ型になっている。そこをひくつかせて、行進曲のリズムをとっている。アレは、たぶん、四拍子だろう。

                 おわり







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