波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

レールを叩く

2015-02-26 21:35:22 | ポエム



☆レールを叩く




警笛を高鳴らせて
列車はトンネルに入った
しばらくして
単調に
レールを打つ音がしてくると
列車はトンネルを出て
海岸線を走っている
ほしいままに
海と空からの光を浴びて
……
闇があり
光がある
また闇に入る

問題は終局だ
光か
闇か
闇の後の光か
光の後の闇か
賭けではない
自然の成り行きでもない
運命でも
宿命でもなく
もっと深遠なものが
人間の背後にはあって
呼吸しなければならないように
周囲から押し寄せてきている
闇があって
光があって
最終はどこだ
このままで
その先に出られるか
今のままで
よいか
よくない 
よいか
よくない
車輪のレールを叩く
音だけがしている


   ☆


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その日

2015-02-24 22:37:56 | 散文



◇その日


妖怪どもが連なり歩く街

影ばかりが黒々と染みついて

擦れ違い 

歩み行くけだものたち

影は交錯し 

歪み 

拡大されて倒れていく

見えない闇の 

また闇の奥へと

かくも暗がりばかりが増長しては

対策のたてようがない



街に焼夷弾が

降ってきたのではないかと見えた

街は一遍に白昼の明るさに

呑み込まれてしまった



もう黒い妖怪どもが

歩き回ることはない

人影はまったくなく 

街に動きというものがなかった

白昼ばかりが

連綿と砂漠のようにつづいている


   ☆



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祈る水鳥

2015-02-23 21:43:03 | ポエム



祈る水鳥



川面に幾千幾万の銀貨を敷き詰め

朝日が輝きはじめる

小川には岩が頭を出している

岩の上には水鳥がのり

朝日に向かって

いくどもいくども頭を下げている

なぜか自分にないものを

グッと衝かれたようで

私は不安になる

肌に当たる飛沫は

刺されるばかりに冷たい



近づいて見ると

鳥はお辞儀をしているのではない

岩山から流れに嘴を入れて

水を飲んでいた

私はほっとし

水鳥が祈るようになったら

おしまいだ

と安堵の息をつく

だが かりそめにも

祈っているように見えたことが

痛みとなって

ずきずき我がうちに広がりはじめる



   ☆




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猫やなぎ

2015-02-20 12:56:24 | 散文





    ◇

   猫やなぎ
   赤子あやして
   喰はれけり


 赤子に玩具を買ってやると、珍しいうちは弄り回しているが、厭きるともうかえりみない。一時の執心が強ければ強いほど、熱がさめた後の、玩具へのつれなさもひとしおである。あたかも、一時心を奪われていたことに復讐するかのようである。
 玩具は部屋の片隅から、物置へと追いやられ、それっきり人の目にはつかなくなる。引越しのときなどに、
「あら、うちにこんなのあった?」
などとあしらわれるくらいが、関の山だ。
 手が離れた赤子は、デジタルのゲームにこっていて、母親の声も上の空だ。
 そんなものだ。過ぎ去り行くものの運命なんて、すべてこのようなものだ。
 それに比べると、猫やなぎなんて、たとえ儚いいのちで終わったにせよ、赤子の愛着の深さを考えれば、もって瞑すべしなのではなかろうか。

 沼のほとりに、赤子が若い母親に抱かれて来ていた。風のそよぎもここちよく、猫やなぎが膨らんできている。 
 母親は猫やなぎに近づいて赤子に示した。赤子は、猫やなぎを見せられただけではもの足りず、取ってくれとせがむ。
 母親は少しだけならいいだろうと、周囲の目を気にしながら、小枝を折り取って、子に与える。
 赤子はその柔らかくしなやかな、弾むような感触を愉しんでいたが、幼いなりに想像が膨らんでいく。
 それはそうだろう。猫やなぎのまろく小さな莟は、緑の梢となって光に流れる、未来の大きな可能性を含み持っているわけだから。それを今、眼前に見ようとしても、所詮無理というものだ。木の芽はゆるやかな季節の流れに乗って、生い育っていくのだから。しかし赤子は容赦なく、隠しているものを、いま見せよと迫るのだ。
 指で触り、こね回しても、一向にそれが見えてこないものだから、彼は狂気に駆られたようになり、つい口に入れてしまう。あたかも咀嚼すれば、その意味の解読が可能になるとでもいうように。
                                 了
    ☆




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名残

2015-02-19 11:52:07 | ポエム



☆名残



名残とは

すでに実体が通り過ぎてしまった後に

どうしようもなく残っている

気配のようなものだろうか

しかしこれからここにやって来るであろう

未来が

何故かそこにあったように思えてならないというのは

不思議というか

懐かしいというか

奇妙な感覚だ

冷静に考えれば

筋道の立たない 錯綜したものに思えなくもないが

やはりそのようにして

待ち望まなければならないのだろう

すでに見たことがあり

今も見ているかのように――


   ☆



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それはそれなりに

2015-02-18 11:36:06 | ポエム



☆それはそれなりに



それはそれなりに

なんて批評はない

宇宙が

その中のもろもろの存在が

偶然ではなく

大いなる意思で

創られてゐる限り

すべては

根源に向かつて

意味がある



我々は自分の意志で

独楽を回してゐるつもりでゐても

実際は回されてゐるのだ


   ☆

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樫の実

2015-02-15 22:44:47 | 散文








 樫の実




 あまりに外側の殻がきっちりしていて、窮屈なので、樫の実は身もだえした。そんなちょっとした身動ぎでも、ミニカップのような殻では支えきれなくなり、樫の実は地面に落ちて、跳ね飛んだ。
 跳んだ先が、少女のランドセルだったので、隙間から中へ潜り込んだ。
 知らないで帰宅した女の子は、隣の席のマサル君からのプレゼントと勘違いした。
 その明くる日は、バレンタインデーだった。女の子は高校生の姉から一個、チョコレートをちょろまかして、学校へ持って行った。
「マサル君、私のランドセルにドングリ入れたよね」
「僕? 入れないよ。僕のドングリなんか、ちゃんとあるもんね」
 そう言って自分の机を覗き込み、中からドングリの実を一個つまみ出した。
 少女は学校の帰り道、マサル君に渡そうとしていたチョコレートを、ほおばった。ほろ苦い味がして、チョコレートって、こんなに
苦かったかしらと思った。そのとき靴が何かを踏んだ気がした。地面を見ると、ドングリが落ちて散らばっていた。
「このドングリなんだわ。ランドセルに飛び込んだのは」
 少女はそこに立ちん坊をして、ぼんやりドングリの木を見上げていた。すると挨拶でもするように、頭のうえに木の実が降ってきた。 堅くて痛いほどだった。少女は頭を打って地面に転がって行くドングリを、追いかけて拾い上げた。
 チョコレートをちょこまかしたお詫びに、これを姉さんにあげようと思った。
 それとも家においてある、ランドセルにとびこんだほうにしようかな。少女は迷いながら道を急いでいた。
 向こうは意識しないうちにランドセルに飛び込んできたんだし、こっちははっきり意識している私にぶつかってきたんだもの、これはあげない。あげるのは向こうのにしょう。
少女ははっきり意識と言う言葉を遣ってそう思った。
 知らないより、意識しているほうがレベルが上なんだ。少女は本心からそう納得した。





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光の中に消える

2015-02-11 17:21:25 | 散文



   ☆



光の中に消える


 彼女を手放すことが、僕の心に何をもたらすかは分かっていた。それでも、
「天国で会おうね」
 と言うしかなかった。
 ―神の愛は冷たくて嫌い―
 との一点張りで、背を向け、肩で息をしはじめた彼女を、繋ぎとめる手立てがあっただろうか。
 ―誰よりも私を愛するか―
 とペテロに迫ったキリストの写真を前に、
 ―キリストを離れて、私に来い―
 と言ってきかない彼女なのだから。
 洗礼を受けて十年も祈りを欠かさない僕に向かって、美しい瞳をぱしぱしっと開閉させ、
―キリストよりも、誰よりも、私を愛せ―
 と言って譲らない彼女なのだ。
 彼女の目許の愛らしさや、フランス人形のような肌の色に魅せられていたから、
 ―愛しているさ、誰よりも―
 と言ってしまった。そうして教会へ行く仕度をはじめた。
 ―私を愛しているんなら、教会に行かないで―
 ―だから土曜日から今まで、こうして付き合ったじゃないか―
 今日は祈りが充てられているので、ネクタイを締め、祈りの文案を考えながら言った。
 ―あなたが教会に行くんなら、私はもう会わないわ―
 彼女はバックを手にして立ち上がるなり、そう言った。
 僕はまんまと当てが外れたと、苦い思いを噛み締めていた。
 なんとなれば、どうしても教会に行くと言えば、彼女もついて来るのではないかと期待していたからだ。祈りの文案には、
 …はじめて教会を訪れた方のうえに、神様が御手を触れて、繋ぎ止めてくださいますように… 
 と彼女のための祈りも用意していた。


 僕は二階の窓を開けて、アパートの外に出た彼女に、
「天国で会おうね」
 と声を投げかけるしかなかった。彼女はこちらを振り返って、
「あなたの天国とは違うと思うけど。神はキリストだけじゃないから」
 そう言って、彼女のほかにはこの世に存在するとは思えない、とっておきの妖美なウインクを置き土産にして、くるりと背を向けると小走りになって行った。
 そのウインクが意図的なものか、無意識に出るのかは定かでない。
 とはいえ僕は二年前、初対面の彼女の瞳に籠められたその一撃に、胸の臓腑をえぐられて恋に堕ちたのである。
「いつまでも、ウインクが武器になると思ったら、大間違いだぞ!」
 遠ざかる彼女の背に、力いっぱい声を送った。しかし、届いたかどうかは怪しいものだ。大通りを行き交う車のフロントガラスや屋根に、朝の光が反照して眩しく、さんざめく音と光の洪水の中に、既に彼女は姿を消してしまっていた。
                 了

          ☆



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