波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

下山

2012-02-29 21:43:35 | 俳句



 ☆

初日ひとつ

抱へとぼとぼ

山下る
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熊に遭ふ

2012-02-28 10:00:12 | 俳句




 ☆

雪見にと

呑気にゆけば

熊に遭ふ
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雁行く

2012-02-27 10:19:28 | 俳句




 ☆

引く雁の

また来る天の

深さかな
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毛糸編む

2012-02-26 09:22:09 | 俳句


 ☆

毛糸編む

傍らの猫

幼くて
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北国志向

2012-02-25 00:47:16 | 短歌


 ☆

スキー担ぎ

北国志向の

若者ら

永遠に消えざる

雪山を持ち








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パンの香り

2012-02-23 21:49:19 | 短歌





パンを焼く

香り流るる

路地裏を

飼主のなき

犬嗅ぎ回る
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2012-02-22 23:40:16 | ポエム





[雀]


雀よ 私はおまえの心が
読めない
それが悲しい
雀よ おまえは私の心が
読めない
それが悲しい

けれども神様は知っている
おまえの悲しみも
私の苦しみも

だから
おまえと私は友達だ






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白きがほのか

2012-02-21 14:11:32 | 俳句



 ☆


梅一枝

白きがほのか

目に痛し

薄曇る日に

うち解けなくに
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沖の船

2012-02-20 11:08:36 | ポエム



[沖の船]



真っ青な海原

はるか水平線上を

白い客船が行く

あまりにも遠方にして

距離の進捗は

はかばかしくない

一分後も

同じところにいる

二分後も

ほぼ同位置だ

それならばと

五分へだてて視線をやると

客船は跡形もなく

完全に気化してしまっていた






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黄色い布団

2012-02-19 22:27:47 | 散文


[黄色い布団]

 いつのことなのか。いずこの場所であったのか。ともに分からない。またその少女が、どこの誰であるのかも分からない。しかしそんな、ないない尽くしの夢であったが、出てきた光景には臨場感があり、繋いでいた少女の手の感触は生々しいほど残っていた。

「黄色いお布団よ」
 少女は私の手を振り解いて、散り敷く銀杏の落葉の中に潜り込んでいった。
 私は傍らのベンチに腰掛け、読みかけの文庫本に読みふける。
 どれほど時間の経過があったのか。ふと少女の声がしないのに気づいて、顔を上げると、銀杏の落葉に日は降り注いで変化はなく、少女のよすがを知る手掛かりはなかった。
 ついて来ていた愛犬が、消えた少女をいぶかり、潜っていた銀杏の落葉を、ぐいぐい鼻で押しのけていく。
 私も犬に協力して、少女が潜っていた辺りの落葉を足で掻き分けてみる。その隣り、その隣りへと探査を広げていったが、結局少女は出てこなかった。
 そもそもその少女が、誰であったのかさえ分からずじまいだった。顔さえ覚えていなかった。
 そして私は行方が掴めないばかりか、名前すら知らない少女を恋するようになっていった。名前を知らない分だけ、よけい恋する思いは募っていった。


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湖畔

2012-02-18 07:41:32 | ポエム


[湖畔]


旧い館の立つ湖畔は

無気味なほど鎮まりかえっている

たまさか 

鳥の声が

静けさを引き裂いて反響する

ギャオ

ギャーオ

あの声はいったい

なんという鳥の

どんな訴えを秘めているのだろう

夕闇が迫り

間もなく湖は

完全に闇に沈んでいく















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木の葉に化けた蛙

2012-02-17 20:35:38 | 散文


 [木の葉に化けた蛙]


 かんかん照りの夏の一日だった。僕は暑くて仕方がないので、パンツ一枚になって家の裏に続く草原に入って行った。青草を撫でて吹いてくる風に当ると、涼しいと思ったからだ。
 我家は新興住宅地の外れに位置していたので、家の裏側は未開の草原だった。草原には人の足で踏み固めた細い道ができていた。
 その細い道を行くと、道の真ん中に一匹の蛙が、どんと構えるように坐っていた。蛙は僕を、ようこそおいでなすった、というような迎え方をして、くるっと横向きになると、小道から草原へと跳ねて行った。
 僕が裸だったもので、親戚筋くらいに近しく感じたのかもしれない。
蛙は僕の前を、チモシーやクローバーなど、柔らかな草をなぎ倒すようにして跳ね行くと、前方に小さな池が見えてきた。
 蛙がこの池を住み処にしていると、すぐ分かった。蛙はけして僕から逃げて来たのではない。僕は蛙を追いかけていたわけではなく、蛙がついて来いと誘うから、ついて来ただけだった。
 蛙は僕がついて来ているか、どうか、確認するように、ときどき跳ねながら眼を後ろに向けた。黒いつぶらな瞳が、光って僕を見た。蛙は前を向いていても、後ろが見えるのだ。蛙は僕がついて来ていると知ると、よし、よしというように、頭を前後に揺すった。
 すぐ前に水面が光って、池に着いた。蛙は僕に合図を送る仕草をして、どぼんと池に飛び込んだ。
 ひとつ水輪ができて、蛙がどこに消えたのか、見えなくなった。水面には水澄ましが回って、やっぱり水輪を描いていたが、蛙の水輪にはとても敵わなかった。蛙の作った水輪は本格的で大きく、波紋が土手に立つ僕の足下まで寄せてきた。池に飛び込んだときの音にしても、しばらく僕の耳朶に響いていた。
 蛙はそれっきり陸に上がって来なかったが、蛙が僕を誘ってここまで連れてきた理由が読めてきた。あの、古池や…という有名な俳句だ。僕に俳句を作れということだったのだ。
 そう受け取ったから、僕は俳句をはじめようと思った。あの蛙が浮かんでこないので気になったが、僕は間もなく池を後にして家に帰った。
 三日ほどしてその池に行ってみると、池に木の葉っぱが何枚も浮かんでいることに気がついた。前はこれほど葉が浮いていなかったはずだが、そう思ってその辺りに小石を投げ込んでみた。するといっせいに水しぶきを上げて、葉っぱが残らず水中に潜ってしまったのだ。つまり木の葉ではなく、蛙が手足を伸びるだけ伸ばして寝そべっていたのだ。
 だからあのとき姿を消してしまった蛙も、そうっと浮かんできて、葉っぱに化けて僕を見ていたかもしれない。
 次の三行は、僕が最初に詠んだ俳句だ。


   寝そべって

   空を見ている

   蛙かな
 
                               おわり






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日脚のごとく立つもの

2012-02-16 07:48:41 | 短歌


 ◇

つつがなく

時の移ろふ

白昼を

日脚のごとく

立つものの見ゆ















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人生は遊戯場

2012-02-15 22:10:17 | ポエム



[人生は遊戯場]



青い空だ
緑の畑だ
白い海だ
みんな色々な問題を
抱えている
悩んでいる
抱えて
悩んで
抱え悩んで
生きている

自然がこんなに
大らかだと
自分なんかどこにいるのか
判定できなくなり
責任を取れとばかりに
青に飛び込み
緑に飛び込み
白に飛び込む
それを太陽が笑って見ている
―太陽は黄色か―
遠くで鳥が
黄色い声で叫んでいる
救急車の黄色いサイレンが
カーキーカーキー
迫ってくる

ここも遊戯場?

オレみたいに
頭のいかれたものには
世界はどこもかしこも
あざとい遊戯場に見えて
神の創った世界とは言えなくなっている

遊戯場といいながら
いずこも
きちんきちんと金を取ることだ
遊戯場だからといって
安心なんかしていられない
甘い宣伝文句に乗せられて
オレみたいに
暢気に遊んでいると
救急車に乗せられ
病院に投げ込まれて
頭のいかれた者とされてしまい…


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休日の大通り公園

2012-02-14 10:49:53 | 散文


 [休日の大通り公園]


 二月といいながら、暖かな陽射しの降り注ぐ三連休の中日である。
 大通り公園広場で、三つのゴム風船を持った中年男と、三匹のダックスフントを連れた中年女が鉢合わせをした。
 別に意図的にぶつかったわけではないが、女の連れた三匹のダックスフントが、そろいもそろって、男のゴム風船を見上げて、動こうとしなかったことから、三個対三匹という遊具とペットを携えた両者は、さりげなく擦れ違うことができなくなってしまったのである。
「ピチちゃん、ジャブちゃん、ランちゃん、人様のものを欲しがってはいけません」
 中年女は、三本まとめて手にしたペット達の紐を、手繰り寄せて言った。上は黒い薄手のカーデガン、下は黄色いスカートを着用し、赤いネッカチーフをそよ風に靡かせている。唇の色は、あるかなしか。上気した肌とも違う頬紅を見れば、唇にもほんのり朱がのっていると分かる。
 中年男はというと、ジョギング用のネズのトレパンの上は、薄緑のジャンパーだ。そして三本のゴム風船を持つ手には、手袋をはめている。この暖かな日和に、手袋は不要だ。
 そんなちぐはぐな出で立ちからして、ゴム風船は似合っているのかもしれなかった。今どき子連れでもない中年男が、ゴム風船を頭上に揺らしながら歩くなんて、奇妙きてれつな光景だから。
 三匹のダックスフントが、足を揃えて立ち止まってしまったのは、そんな男の風体から異様なものを嗅ぎつけたのかもしれなかった。
 男は三匹のダックスフントと睨み合っているわけにもいかないので、ゴム風船の一個を空いた手に取ると、腰を屈めて一番小さい犬の首輪に括りつけてやった。犬たちは赤い舌を出して、男の手にまつわり、思いがけないプレゼントを歓迎しているようだった。
 三匹は小さいほうから大きさの順に並んでいた。真ん中の犬が、下の子犬に風船がいって、自分が貰えない不満を、ワンと一つ吠え声に表したので、男は青い風船をその犬に与えようと手に取った。
 どういうわけか、最初の子犬は、するすると女の手を離れていき、歩道上に浮かんだ赤い風船の流れ行くままに、駆け出して行った。その走り方といったら、上に浮かぶ風船に持ち上げられるままに、前足は地面から離れて、後足だけで走って行くのだ。
「ピチちゃん、あなたどこ行くの。戻って来なさい」
 中年女は叫び声を上げるが、もうピチの耳には届かないほど、離れてしまっていた。
「大丈夫ですよ。風船は子犬の気持を読み取って、そちらへ吹かれていきますから。きっと、あっちに子犬のお家があるんでしょう」    
 男は青い風船を真ん中の犬の首輪に結んでやりながら言った。
「そうだわ、あっちは私の家の方角だわ」
 男はそれには取り合わず、
「これでよし」
 と真ん中の犬の首輪に、青いゴム風船を結んでしまった。と同時に、ジャブも婦人の手を離れて跳び出して行った。
 ところがこちらの犬は、家の方角には行かず、最初の子犬とは逆方向に駆け出してしまった。この犬も少し助走すると、前足が浮いて、後ろの二本足で駆けて行く。
 この二匹の犬の出立を見ても、いかにダックスフントが小柄で軽量であるかが分かるというものだ。それにしても、ゴム風船の浮揚力は、何と力強いことだ。
「あら、ジャブ、ジャブ、お家はそっちじゃないでしょう」
 女が二匹ともロープを手放してしまったことを見ても、いかに狼狽しているかが見て取れる。他人になつかず、自分だけになつくように躾けたはずの犬たちが、見知らぬ男の誘惑に呆気なく嵌められてしまったことに、呆れ返っていたのである。
「彼女でもいるんでしょう。あちらの方角に」
 と男は言った。
「ジャンは女の子よ!」
「それは失礼。では彼氏でも…」
 と男は言い換えた。

 一回り大きいランが、男を見上げてお座りをしていた。正確には、風船を見上げていたのかもしれない。いや、男を見、風船を見、この二者の間に視線を往復させていたというべきだろう。
 男はこの犬に、残った白い風船を与えるかどうか、考え込んでいた。与えれば、風船のさすらうままに、この犬も婦人を離れていくことははっきりしている。先の二匹の場合は、犬の心を風船が読み取って漂い流れて行くと言ったが、はたしてそう言い切れるだろうかという思いも男の中にはあった。持つものに任せて漂って行くのが風船なら、風に身を委ねて彷徨って行くのも風船の性質ではないか。この場合は、犬の意志とは逆行する風の意志だ。風の意志とは天の思いに近い。
 ここまで来ると、ランに白いゴム風船を与えて、婦人の最後の望みまで奪ってしまうのが、はたして善行と言えるのか、どうか。いささか迷っていたのである。
 一心に見上げている犬の心を裏切るのは忍びないが、落胆する飼主の心も尊重しなければならない。
 男が白いゴム風船の紐に手をかけたときだった。
「それは私にちょうだい。私も私自身の心をゴムの風船ではかってみたいから」
 と婦人が言うと、ランがワンと一つ吠えた。飼主にしてやられたと思ったのかもしれない。しかし男が、
「どうぞ」
 と白い風船を婦人に渡したときは、どっとばかりに同意の思いが体中に広がったらしく、尻尾を大きく振りはじめた。お座りしたままそうするので、地面を掃く具合に、落葉を左右に寄せてしまった。飼主に渡ったのであれば、自分が貰ったのと同じだと思い直したのである。なんとなれば、婦人は自分のロープを手にしており、このまま従って行けば、安全な住まいと、餌のあるところへ帰還できるのである。

 男と婦人は、どちらからともなく公園内の道を歩きはじめた。そこは最初の子犬が駆け抜けていった道だったが、途中から路地へ曲がった。
 そこをしばらく行ってから、婦人が呟くように洩らした。
「ここはいったい、どこかしら。私の家の方角ではないわ」
「奥様は、クズ町の何丁目ですか」
 と隣の男が言った。
「奥様じゃなくってよ。こう見えても、ミスですからね」
「丁度よかった。僕はチョンガーですよ、こう見えても」
「それでここは、どこへ通じる道なの?」
 男の言葉には取り合わずに婦人はそう言った。
「もうすぐ僕の家です」
 男がこう言ったとき、遠くの方に青い風船が路面上に浮いているのが見えた。風船の下を犬が走っている。
「あれは、ジャブだわ。そうに違いないわ」
 そこに向かって、ランが走り出て行った。一方、ジャンが走ってくる道と直角にのびている細い道を、走ってくる子犬がある。すぐ上に赤い風船が浮かんで、すーっと移動している。
「あれはピチよ。間違いなくピチだわ」
「ピチとジャブが交わる角に建っているのが、僕の家ですよ」
 ランが走り込んで、三匹が合流した。二つの風船が接近して、ぶつかった弾みで、左右に分れた。といっても、三匹の犬は、お互い舐め合うことで再会を喜んでいる。
「一体どうしちゃったの、これ。あなたがはかりごとをしたのね」
「いいえ、僕にはそんな力はありませんよ。もしはかったものがいたとしたら、ゴム風船を動かした気流、風の流れですよ。もっと端的には、天の意志です」
「そうやって、あなたと私は結ばれるってこと?」
「どうもそうらしいですね。ここまで重なると」
 間もなく、男と婦人と白い風船が、三匹の犬、赤い風船、青い風船と合流した。

           了




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