波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

応酬

2015-05-16 18:08:49 | 掌編小説



★応酬



農家の庭木で鶯が鳴いた。
負けずに雄鶏が鳴いた。
鶯は首をかしげて黙った。
麓の村から時々湧き上がる鳥の声を、うるさいと思っていたが、
その鶏はここにいたのか。
鶯はぶつぶつ言いながら山へ帰った。
自分のとった行為が、敗北なのか、幻滅なのか、
考えていた。
人は敗北ととるだろうが、本当は幻滅さ。
そう呟いて、木の葉に降りた露で喉を潤すと、鶯は美声を張り上げて
歌い出した。その声が届いたとも思えないのに、麓の村から返礼のように、
  コケコッコー
と雄鶏の声が返してきた。


       おわり

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