波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

望遠鏡

2015-06-11 01:15:46 | 掌編小説


☆ 望遠鏡


 孫の望遠鏡を持ち出して、海を見ていた祖母が言った。
 ~~傷ついた鴎が、片方の翼を立てて、苦しがっている~~
 孫が祖母から、望遠鏡をひったくるようにして確かめると、ヨットが白い帆をへんぽんとひるがえして、快さそうに海面を滑っている。 
 この望遠鏡は、祖母に買ってもらったものだというのに、孫は情けなくなった。飛んでいる鴎はいないかと、視界を空に移した。
 折よく、海の上を飛翔する一羽の鴎を発見して、
 ~~おばあちゃん その鴎は今、空に飛び上がったよ~~
 と言って、望遠鏡を祖母に渡した。
 ~~カツオ よーく見んかい あれは飛行機じゃんか~~
 孫が望遠鏡を覗くと、確かに一機が、空に浮かんで白く輝いている。音はまったくなく、月のように空に浮かんでいる。 

               おわり


     ☆


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