先日、近所の床屋に行くと、オヤジがいきなり「藤田さんにいいもの貰って来たぞ!」と言われた。甘いお菓子でも貰えるのかと期待すると、知り合いからへらウキを貰って来たというのだ。床屋は全く釣りをやらないのだが、栃木の知り合いのところに行ったら、部屋にへらウキが飾ってあったというのだ。私に持って帰れば喜ぶと思い、無理を言って2本譲ってもらったらしい。
実は、自分もウキを作るんだと言ったら、床屋のオヤジはちょっと困った顔をして、「プロに失礼かなー?」というので、どんな作り方をしているのか興味があるので、ぜひ見せてくれと頼んで見せてもらった。
見た瞬間は「ん・んん・・・」思わず「ノーコメント」と失礼な事を言ってしまったのを反省して、「いろいろ工夫してますね。時間もものすごくかけている」とフォローしたつもりだったか、果たしてフォローになったか・・?
そのウキは、実に色々工夫をしているものの、お世辞にも綺麗なウキとは言えないし、至る所、稚拙な作りになっている。実用性は・・・?少なくとも私は使う気にならない。しかし、いかにも釣りが好きで、一生懸命、独自の工夫で時間をかけて作ったのが良く分かる。
ボディーは7mmほどの太い茅である。しかし、肩の部分の絞りの作り方が分からないのか、肩の部分は、無垢の木を接いである。その無垢の木を削って肩にした上で、その無垢の木の肩の部分にドリルで穴を開け、グラスムクのトップを差し込んでいる。このトップを差し込んだ部分が段差になっており、この段差がこのウキの大きな難点になっている。
トップは、0.8mmのものと1.2mmのものであり、用途によりトップの太さを変えているのが分かる。
トップの塗は、蛍光塗料で厚く塗りすぎて、デコボコになっている。黒筋は、カシューで塗っているらしく、これも厚くデコボコしている。フリーハンドでトップを塗っているため、いかにも稚拙なトップになってしまっている。
ボディーの装飾は、カシューを塗って、いかにも芸術性をかもしだそうとしているのが見えるが、研ぎだして色を出しているのではなく、それらしく重ね塗りをしている。それでも何となくいい感じに仕上がっている。一部、ラメも散りばめてあり、なかなか凝っている。
足は、グラスのものと竹のものであり、色々なバージョンで作成しているのが分かる。
せっかく私のために頂いてきたウキなので、有り難く頂戴してきた。こんなに作者の手をかけて工夫して作ったあウキを捨てられるはずがない。大事に飾らせてもらうことにした。
しかし、釣りをやらない床屋のオヤジに自作のウキを譲った時の作者の心境はどうだったのか考えさせられてしまう。自分では、時間と手をかけて作った自慢のウキであるが、作者は間違いなく、自信を持って他人に譲れる程のものではないのは分かっているはずだ。どんな人の手に渡るのか?馬鹿にされないか?自分の愛情のこもったウキを使ってくれるだろうか?と考えたに違いないだろう。そう思うと、頂いた私も責任を感じてしまうのだ。 クリックすると写真は拡大します。