うさぎの耳

大学卒業→社会人→看護学校→6年目ナース
読書の記録と日々の出来事。

『ダンデライオン』中田永一

2018年10月29日 17時06分00秒 | book
帯の7年ぶりの長編という言葉に、『くちびるに歌を』はそんなに前だったのかと驚きました。

中田永一さんの小説が好きなので、さっそく読みました。

テイストが不思議な感じでした。
青春小説ではなく、時間を超えるミステリーでもあり、恋愛の要素もあり、青春小説的な雰囲気もありました。

一番は時間を超えるところ。
単純に未来や過去にタイムスリップするのではなく、未来と過去の自分が入れ替わる。しかも1日未満の数時間だけ。
しかもある事件が関わっている日で、、、という話。


未来や過去に時間軸が入れ替わりながら話が進んでいくんだけど、読みにくい感じはありませんでした。


最後の種明かしというか全てが明らかになっていく瞬間は恐怖でもあり、はらはらしました。

大人の主人公が過去のある1日に戻った時に、自分が生きてきた過去、つまりはその時点に置いては未来にあたる出来事をノートに書いていて、ある程度の自分の未来が分かっている。

その地点を越えた先に話が進む時が、どきどきでした。

犯人が分かるところからの攻防は、もっとからっとしたものにしようとしたら出来たと思うんだけど、現実感というか人間の醜い部分やお互いに必死のやりとりは、ファンタジー的なお話をそのままふんわりした雰囲気で終わらせない力があって良かったです。

犯人が意外な人で、それが分かる過程もそこから相手は分かったんだなーとか、入れ替わる時間の間に起きたこととのつながりとかでつなぎ合わせたら分かったり、すべてを覚えていたり、共有していないことから起こったり、犯人を特定するまでの展開もかなり面白かったです。



結婚することは決めていたんだけど、事件の真相が分かってから、結婚をやめようと考えている彼女に結婚しようと最後に伝えるシーンは、とても良かったです。
詳しく話すとネタバレになっちゃうから言えないんだけど、分かっている未来から未知の未来へ踏み出していく二人ならではのシーンで好きです。

一気読みしました。

犯人が分かっている今、再読したらまた違う楽しみ方が出来そうな小説。
二度読みしたくなる気持ちが、読み終わったら分かるわーという感じです。

面白かった!

タイトルにふれていなかったけど、たんぽぽの綿毛がたくさん飛んでいるシーンが象徴的に何度か登場します。
ダンデライオンの由来なども書かれていて、へぇーっとなりました。

最近、小説読んでないのでどっぷり小説の世界にはまれてリフレッシュしました!