私的図書館

本好き人の365日

吉野弘さんへ

2014-01-30 21:57:17 | 日々の出来事

お酒を飲む習慣のない私ですが、常に日本酒は買い続けています。

料理に使ったり、風邪を引いた時に飲んだりもしますが、主な目的は献杯のため。

限りあるものに対して、敬意を表するため。

 

今月、2014年の1月15日。

詩人の吉野弘さんが亡くなりました。

「祝婚歌」や「夕焼け」など、日常のどこにでもある風景にとけ込んだその言葉の数々は、心にとてもしみわたり、近代抒情詩の中でも私の好きな作家さんでした。

「祝婚歌」をドイツで披露したら大変喜ばれたという記事もどこかで読んだことがあります。

 

 正しいことを言うときは

 少しひかえめにするほうがいい

 正しいことを言うときは

 相手を傷つけやすいものだと

 気づいているほうがいい

      -「祝婚歌」より-

 

1926年(大正15年)、山形県に生まれた吉野弘さんは終戦後、茨木のり子さんらの「櫂」に同人として参加、その後詩作活動を続け、晩年は静岡県で暮らしていたそうです。

電車の中でお年寄りに席を譲る姿を見つめた「夕焼け」は、私も大好きな詩。

 

いつもの通り、電車では若者が席に座り、老人が立っている。

その中で、お年寄りに席を譲る女性。

一人に譲り、二人目にも譲り、しかし三人目が自分の前に立った時、彼女はうつむいて席を立とうとはしませんでした。

 

 固くなってうつむいて

 娘はどこまで行ったろう。

 やさしい心の持ち主は

 いつでもどこでも

 われにもあらず受難者となる。

      -「夕焼け」よりー

 

こんなやさしい視線で人々の日々の暮らしを見つめ続けた吉野弘。

15日夜、富士市の自宅で肺炎のため亡くなりました。

87歳でした。

 

命についてとやかくいえるほど生きてもいないし、人様に何かいえるほどの経験も積んでいないけれど、吉野弘さん、ありがとうございました。

いちファンでは何もできないけれど、ご冥福を祈り、人知れず献杯させていただきました。

不謹慎かも知れませんが、悲しみで献杯するのではありません。

敬意を表するためです。

 

ありがとうございました。

 

 

 


訃報 永井一郎さん

2014-01-27 23:10:01 | 日々の出来事

突然のニュースに驚きました。

日本の声優の重鎮として、長年アニメ作品に命を吹き込んでこられた永井一郎さんの訃報。

2014年1月27日。

宿泊していたホテルで倒れている所を発見され、病院で死亡が確認されたそうです。

享年82歳でした。

 

あぁ・・・

 

初代ガンダムのナレーションやサザエさんの波平役など、演じた声は数知れず。

声だけでキャラを立たせることのできる不世出の才を持った方でした。

主に脇役が多かったのですが、永井さんが声をやっていると安心して見ることができたものです。

私がこの世に生まれるずっと以前から活躍されていた方なので、多分、その声を聞く機会は親戚やなんかよりよっぽど多かったはず。

あまりに大きな存在でした。

 

本当に、本当に長い間、様々な作品、様々な場所で楽しませてもらいました。

こころよりご冥福をお祈り致します。

ありがとうございました!!

 

 

 


『赤毛のアン レシピ・ノート』

2014-01-24 00:50:43 | モンゴメリ

最近読んだ本です。

『赤毛のアン』の作者として有名な、ルーシー・モード・モンゴメリが実際に使っていたレシピ帳をもとにした一冊。

 

『赤毛のアン レシピ・ノート L・M・モンゴメリの台所から』 (東洋書林)



モンゴメリが生きた時代、結婚式のお祝いとしてオリジナルレシピを渡すほど、当時は各家庭のレシピは大変珍重されていました。モンゴメリも一族に伝わるレシピをせっせと書き写し、オリジナルのレシピも書き加えて、自分のレシピ帳を作っていたのです。

小説家になっていなかったら料理人になっていただろう、と語るほど料理をつくることが好きだったモンゴメリ。

そのレシピは、モンゴメリの死後も一族の間で大切に保管され、その数は400以上にのぼるそうです。

その中から約90種類ほどを選び、モンゴメリやその一族、当時の料理道具などの写真、母として、妻としてのモンゴメリや幼少期のエピソードなどを加えて作られたのがこの本です。

 

私はコタツに入って読んでいたのですが、時間が経つのを忘れるくらい楽しく読みました♪

当時の空気というか、扉を開けたらすぐそこにモンゴメリが暮らしたプリンス・エドワード島の景色が広がっているみたいな匂いを感じたぐらい☆

赤い道を馬車が走る、その土煙が見えたような♪

すぐに影響される性格なんです(苦笑)

定価が2500円とかなりお高いですが、私は古本屋で450円で手に入れました!

 

プディング、アイスクリーム、クリスマスケーキ、ピンク・レモネード、チキン・モールド、子羊肉のシチュー。

『赤毛のアン』に登場するメニューのレシピもあります!

モンゴメリのご子息であるスチュアート氏が恋しがった、母親の「モックチェリーパイ(まがいチェリーパイ)」とか食べてみたい!

 

 おいしいものを食べることも

 それを一生懸命作ることにとりくむことも好き

         ―L・M・モンゴメリ―

 

友人やお客をお茶に招いたり、牧師夫人としてピクニックやガーデンパーティを手伝ったり、毎日の食事にお茶のしたく、忙しさの中でもモンゴメリはそんな時間を愛しました。

小麦粉、バター、料理ストーブ、家、海岸、小川に小道、森や湖、家族の笑い声、そして猫たち。

食べるって、本当に生きることの基本なんですよね。

 

レシピ本としてだけでなく、当時の台所をのぞくことができる貴重な一冊。

『赤毛のアン』ファンはもちろん、多くの人に楽しんでもらえる本だと思います。

 

あぁ、お腹空いた(笑)

 

 

赤毛のアン レシピ・ノート―L.M.モンゴメリの台所から 赤毛のアン レシピ・ノート―L.M.モンゴメリの台所から
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2000-02

松田奈緒子 『重版出来!』

2014-01-20 21:18:41 | 日本人作家

最近読んだ本です。

 

松田奈緒子さんの、『重版出来!』1巻(小学館)

 

「重版出来」と書いて、「じゅうはんしゅったい」と読むそうです。

マンガの単行本など、出版物の売れ行きがよくて版を重ねることを重版っていいますよね。

出版社ではこの重版が決まることを、「重版出来」といって喜ぶそうです♪

 

主人公は大学で柔道一筋に頑張ってきた女子。

就活で選んだ職場は出版社。

運よく(♪)社会人としての一歩を踏み出した彼女は、マンガ雑誌編集部に配属され、個性豊かな編集部員にマンガ家さんに、営業さん、書店員さんと出会いながら、出版の、本を作る仕事にどんどん頑張っていきます!

 

はっきりいって絵はヘタです(笑)

目の描き方一つにしても統一感がなくて、同じ作品の登場人物とは思えないほど。

でも、それがとっても味がある!

 

年老いたベテランまんが家。

ネットでの誹謗中傷。

やる気のない営業マン。

出版社の内部事情、本屋さんとの関係、編集部と営業部の闘いとか(笑)、そういった内輪ネタも充分面白いのですが、なんといっても本に携わっている人たちの、「こんないい作品もっとみんなに知って欲しい!!」という情熱が伝わってくるのがイイ!

 

「雑誌が失(な)くなるってことは多くの人の人生が変わるってことだ。」

 

作品を描く人。

それを載せる雑誌を作る人。

その雑誌を売り込む人。

そしてその雑誌をお店で売る人。

自分の才能をしぼり出し、徹夜して原稿が出来るのを待ち、靴の底をすり減らして書店を回る。 

いい作品が売れるとは限らない。

たくさんの人がつながって、応援してくれる人に喜んでもらえるように、本気で本気で考えて考えて工夫して工夫して、行動する。

どんなに有望な作品でも、出版数が少ないと平台に置けないから棚差し(背表紙しか見えない)になって気付かれることもなく返品されてしまう。

発売日が有名な何万部も売れるタイトルとかぶったりしたら、書店も商売だから大量に売れる作品を優先して、小さな部数の新人の作品は木っ端微塵に吹き飛んでしまう。

 

何が売れるかなんてわからない。人知をこえた、もうそれは運みたいなものなのかも。

 

こんな絵なのに(失礼!)、読んでいて何回も感動で涙ぐみました!

本好きの人のみならず、このマンガはきっとたくさんの人が面白いと思うはず!

いいなぁ、こんな仲間に入りたいよ♪

 

著者 : 松田奈緒子
小学館
発売日 : 2013-03-29

『言の葉の庭』

2014-01-20 00:34:28 | 映画

新海誠監督の最新作、2013年公開の作品『言の葉の庭』を観ました。

『ほしのこえ』という、ほとんど一人で全部作ったという作品を観てからずっと追いかけている監督さんですが、代表作『秒速5センチメートル』は今でもトラウマになっているくらい印象的な作品。

大成建設のTVCMも作っているので、名前は知らなくてもその作品は見たことがあるかも知れません(ボスポラス海峡トンネル篇とかです)。

 

劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD 劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2013-06-21

 

雨に濡れる新宿御苑。

そこの東屋で偶然出会った高校生の男の子と、OLらしき女性。



新海監督の特徴は、その緻密な描写と、独特の青春を背負いきれていない内向的なストーリー。

今回、特に「雨」の描写が素晴らしかったです!

リアルを追求していながら、リアル以上の色彩と動きで画面に映し出される自然描写は、アニメーションでしか描けない、どこにもないけれどリアルな世界!

高感度カメラで撮ったような雨が、リアルタイムで降り続くんです!

いやぁ、面白いもの見せてもらった♪

 

技術的な挑戦も見ていてすごく面白かったのですが、物語も新海節が出ていて心に残りました。

特に男の子が、勝ち負けじゃなくて、向かっていかなきゃいけないものにちゃんと向かっていくシーンが好きです。

それも息を整えて!

人間なんてそんなに強くなくて、迷ったり不安になったり、そんな揺れ動くもので、しっかり向かっていく男の子を描いているからこそ、次の場面で不安に揺れ動く様が観客の心をつかむんだと思います。

この共感性はすごい。

 

新海監督の作品って、どこか「決心」のドラマなんですよね。

登場人物が心の内で何かを決める。

それを中心に物語が描かれる。

だからこんなに心に響くのかな?

 

雨や虫の声を雑音ととらえるか、そこに音以外の何かを感じるか。

それはもう感性の問題。

46分という劇場用作品としては短い作品ですが、短さを感じさせない充実の内容でした。

よかった~

次回作も期待です。

 


芥川賞、直木賞決定!

2014-01-16 21:54:57 | 本と日常

2014年最初の日記が芥川賞、直木賞発表になってしまいました(苦笑)

年々行動力と集中力が落ちてきています。

そのくせどうでもいいことに割く時間はあって、今日も「イカの眼球の構造」について調べたりしていました(イカやタコに心臓が3つあることは知られていますが、人間など脊椎動物にはある視界の”盲点”がイカにはないそうです! 初めて知った!)

 

さてさて、第150回芥川賞、直木賞ですが、芥川賞には小山田浩子さんの『穴』(新潮9月号)が、直木賞には朝井まかてさんの『恋歌』(講談社)と、姫野カオルコさんの『昭和の犬』(幻冬舎)が選ばれました。

朝井まかてさんて、朝井リョウさんと親戚か何か?
スミマセン、短絡的に知ってる名前をいってみただけです。
あまり作家さんに詳しくないので。(笑)

知っているのは姫野カオルコさんくらいかな?

正直あまり読んだことがありません。ゴメンナサイ。

 

ともかく、受賞おめでとうございます。

 

私は昨年の年末からずっと、新井素子さんの『イン・ザ・ヘブン』と、梨木香歩さんの『冬虫夏草』を読んでいます。

あと時々ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『チャーメインと魔法の家』(ハウルの動く城3)。

映画ではレンタルしてきた新海誠監督の『言の葉の庭』を観ました。

 

今回の受賞作は本屋さんに寄った時に、また手に取ってみたいと思っています。

末井昭さんの『自殺』と、松田奈緒子さんの『重版出来!』も読みたいし、また大きな本屋さんに行かないと。

行きたいと思うだけでなかなか行動に移せないんですけどね。

雪が降るとどうしてもおっくうになってしまって(笑)

 

  為せば成る 為さねば成らぬ 何事も

        成さぬは人の 為さぬなりけり

                 ―上杉鷹山―