さむい。
急にさむい。
さむいのは苦手である。4枚も長袖を重ね着していたが足りず
とうとうセーターを出してきて着込んでいると、
えっこがやってきて、
「これなーに?」
と袖口を引っ張った。
「セーターだよ。」
「セーター?…ハイジの?。」
ハイジ?ピンクのセーターがかわいいから
連想したのかな?
「ハイジとセーター?ハイジとセーター?」
えっこが執拗に繰り返す。
「そうだねー、かわいいねー。」
わけがわからないままものすごく適当な相槌をうっていたが、
あるとき、唐突にひらめいてしまった。
ペーターか。
ハイジとペーター。
いままで「そうだねー」なんて受け流していたのに、私はえっこを捕まえて
猛烈に突っ込んだ。
「ペーターでしょ?ハイジはペーターでしょ?」
何言ってんだかわからないといえば、
「おべかっ!」
というのもあった。
「おべかっ、おべかっ」と言って興奮して一人で喜んでるんだが
なんだかさっぱりわからなかった。
そのうちえっこは、その語を発しながら人の頭(おもに姉)をたたくようになった。セリフもちょっと間のびしてきた。
「おーべーか」バシッ。
「おーべーか」バシッ。
…ああ。
「欧米」か。
「えっちゃん、靴下はこーね」
「おーべーか」バシッ。
「えっちゃん、麦茶飲む?」
「おーべーか」バシッ。
欧米じゃねぇよ。1ミリも欧米じゃねぇ。
しかし人に暴力ふるうとき本当にうれしそうに笑うんだよねぇ。
旦那のDNAじゃないなぁ…それ…。
じゃぁ一体…。