長屋の熊さんと自称先生の会話
熊さん「先生。また、わからねえことがありまして、おせえて下さい」
自称先生「ネットで調べてみたのかい」
熊「へい。そんでもよくわからねえんで」
先生「なんでも訊いておくれ。わたしゃ大概のことは知ってるからね」
熊「じゃあ、さっそくですけどお尋ねしますが。歌の文句に『小原庄助さん』てえのがありやすが」
先「うん」
熊「あれで、『朝寝・朝酒・朝湯が大好きで、それで身上のこした』ってえ理屈がわからねえんで」
先「いいとこに気が付いたねえ。あれは、説明しなきゃあわかりにくい。教えてあげましょう」
熊「へえ」
先「あれは、まず状況を説明しなきゃならない」
熊「じょ、状況すか」
先「そう。歌に残るくらいだから、このシトは大そうな身上をのこしたんだが、この歌はその途中経過だな」
熊「途中・・・経過?」
先「ある程度、人も使いちょっとした身代を持ってからの話だな」
熊「へええ」
先「このくらいになるまでにも時間がかかってえる、ってとこだ。シトはトシをとるてえと大概早起きになる」
熊「そう聞きますね」
先「早朝に起きだして、仕事場い来て、やいのやいの小言を言い出したら、使われているものはたまらない。仕事はある程度、責任を持たせてあずけるくらいにしなけりゃな」
熊「そういうもんすかね?。人を使ったことねえから、よくはわかりませんけど」
先「そういうものだ。だけど、この時にそのまんまそれを口に出すのも厭味だ。『あたしゃ朝寝が大好きでね』とか言っとくわけだ」
熊「朝寝が大好きてえのは、いいわけですか」
先「ま、方便だな。後のふたあつは違うけどね」
熊「どういうふうに?」
先「朝湯が好きというのは、身だしなみに注意するてえことだな。ある程度の仕事は使用人に任すが、大切なお客さんには自分があたる。身だしなみは大事だ」
熊「それは、わかりやすいです」
先「おまいさんは晩酌をやるかい?」
熊「藪から棒っすね。まあ好きなほうですが」
先「それが身上に繋がらないんだな。このシトは晩酌をしないで、お客さんと朝から飲むのが大好きなんだ」
熊「ああ、そういう意味ですか。ようするに接待が好きなんですか」
先「好きこそものの上手なれ。な。接待上手だ。身上のこすのがわかるだろう?」
熊「いやあ。よっくわかりました。『部下に気を遣い、身だしなみがよくって、接待上手』ってことで」
先「よくわかったな。教えがいがあるよ」
熊「ところで先生。『身上潰した』ってえ歌詞もあるんすけど、あれは?」
先「人真似をしても上手くはいかないよってえことだ」
お後がよろしいようで。
熊さん「先生。また、わからねえことがありまして、おせえて下さい」
自称先生「ネットで調べてみたのかい」
熊「へい。そんでもよくわからねえんで」
先生「なんでも訊いておくれ。わたしゃ大概のことは知ってるからね」
熊「じゃあ、さっそくですけどお尋ねしますが。歌の文句に『小原庄助さん』てえのがありやすが」
先「うん」
熊「あれで、『朝寝・朝酒・朝湯が大好きで、それで身上のこした』ってえ理屈がわからねえんで」
先「いいとこに気が付いたねえ。あれは、説明しなきゃあわかりにくい。教えてあげましょう」
熊「へえ」
先「あれは、まず状況を説明しなきゃならない」
熊「じょ、状況すか」
先「そう。歌に残るくらいだから、このシトは大そうな身上をのこしたんだが、この歌はその途中経過だな」
熊「途中・・・経過?」
先「ある程度、人も使いちょっとした身代を持ってからの話だな」
熊「へええ」
先「このくらいになるまでにも時間がかかってえる、ってとこだ。シトはトシをとるてえと大概早起きになる」
熊「そう聞きますね」
先「早朝に起きだして、仕事場い来て、やいのやいの小言を言い出したら、使われているものはたまらない。仕事はある程度、責任を持たせてあずけるくらいにしなけりゃな」
熊「そういうもんすかね?。人を使ったことねえから、よくはわかりませんけど」
先「そういうものだ。だけど、この時にそのまんまそれを口に出すのも厭味だ。『あたしゃ朝寝が大好きでね』とか言っとくわけだ」
熊「朝寝が大好きてえのは、いいわけですか」
先「ま、方便だな。後のふたあつは違うけどね」
熊「どういうふうに?」
先「朝湯が好きというのは、身だしなみに注意するてえことだな。ある程度の仕事は使用人に任すが、大切なお客さんには自分があたる。身だしなみは大事だ」
熊「それは、わかりやすいです」
先「おまいさんは晩酌をやるかい?」
熊「藪から棒っすね。まあ好きなほうですが」
先「それが身上に繋がらないんだな。このシトは晩酌をしないで、お客さんと朝から飲むのが大好きなんだ」
熊「ああ、そういう意味ですか。ようするに接待が好きなんですか」
先「好きこそものの上手なれ。な。接待上手だ。身上のこすのがわかるだろう?」
熊「いやあ。よっくわかりました。『部下に気を遣い、身だしなみがよくって、接待上手』ってことで」
先「よくわかったな。教えがいがあるよ」
熊「ところで先生。『身上潰した』ってえ歌詞もあるんすけど、あれは?」
先「人真似をしても上手くはいかないよってえことだ」
お後がよろしいようで。