秋風

アキバ系評論・創作

月下の舞姫vol.1

2009-08-16 21:17:53 | Weblog
「ようこそリアル秋葉原へ」
 真新しいブレザーの制服に身を包んだ小柄で長い黒髪直毛の少女がいたずらっぽく笑う。
 身長142㎝の痩身で一見小学生だが秋葉原駅前再開発で新築された高層ビル内にある高校に通う女子高生である。
 
 一般的に秋葉原というとJR秋葉原駅近くの電気街だが正確には東京都台東区に在る狭い一角でほとんど店舗はない、はっきり言えば失礼ながら寂れたエリアである。
http://maps.google.co.jp/maps?f=q&source=s_q&hl=ja&geocode=&q=%E7%A7%8B%E8%91%89%E5%8E%9F&sll=35.698683,139.774219&sspn=0.018646,0.026865&ie=UTF8&z=15&iwloc=A

 秋葉原について詳しくはwikiにて。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%8B%E8%91%89%E5%8E%9F

 手には何やらA4の紙を数枚握りしめた初老の男が愕然としてワナワナと震えている。
 たった今、幼いが利発そうな女子中学生?と思わしき(実態は女子高生)彼女に地図を見せ道を訪ねたところである。
「そんな!? こんな寂しい何もないところなのか? ビルもボロい!」
「おじさん、住んでる人もいるんだからそんな大声で失礼なこと言わないで」
「だまされた! 悪徳不動産屋め!」
 手にしていた書類を地面に叩きつける。そのせいでもないだろうが側の桜がハラハラと散る。

「でも契約しちゃったんでしょ? 『超お買い得秋葉原空き店舗物件!』のセールストークで?」
「退職金が! 老後の人生設計が!」
「ここのビルの一階のテナントって月に一回くらいこんな風に……」
「今もっとも活気のある秋葉原でメード喫茶をやれば儲かるって新聞の記事に!」
 新聞などの正規表記ではメイドではなくメードである。

「いつの記事? もうメイド喫茶は過当競争で大変だっていうし、そもそも下見もしないで契約しちゃったってのが」
「黙れ、小娘!」
 怒鳴られた彼女は走ってその場を立ち去る。小柄でストロークは短いはずなのにとても速い。
「今なら割り引くって言うから……すぐに埋るって言うから……」
 誰も聞いていないがその初老の男は涙声で呻いた。

「もしもしお父さん? また騙された人がうちの前で騒いでいたから寄り道して帰るね、うん、いつものゲーセン」
 携帯電話で父親に連絡すると彼女は中央通りに面したその界隈で最大のゲームセンターに向かう。
 彼女の父は件のボロビルのオーナーであり上の階に店舗を構えている。彼女も両親と一緒にそこに暮らしている。
「はぁ、せめて昭和通りに面していればね……」

「よう、あゆちゃん」
「エースパイロットのあゆ姫が来たぞ!」
キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゜Д゜)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)-_-)=゜ω゜)ノヨォ━━━!!!!
「あれ? みんな居るんだ」
 空いているカプセル型操縦席に素早く潜り込む。
 あゆは実力を認めてくれて自分を慕ってくれているのは嬉しいけれど取り巻きの中心に居るのはあまり居心地がよくないと思っている。
 親しい女の友人は勿論居るが男ばかりのゲームセンターのフライトシミュレーターフロアには来ないし心無い陰口を言われているのもわかっていた。

「さてっと」

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