秋風

アキバ系評論・創作

月下の舞姫vol.7

2009-11-04 22:57:34 | Weblog
「申し上げる事は全て述べました。ご判断は先生方にお任せします」
 職員室の隣の会議室であゆは凛とした声で堂々と事情を説明した。
 あゆの前の会議用長机の上にはA4用浅型書類ケースが置かれその中にはあゆの足用デオトラントスプレー、カンペンケースそして男子生徒が振り上げたペン型カッターが置かれている。
 校長は不在で連絡を受け急ぎタクシーで高校に向かっている。
 会議室には場を仕切っている教頭、あゆ達の正担任ベテラン男性教諭、副担任の新人女性教諭があゆの近くに座っている。
 小柄なあゆが頭ひとつ以上大きい男子生徒をアクション映画よろしく制圧した事をまだ信じられないといった様子で何かおっかなびっくり接しているのがあゆには滑稽だった。

 刃傷沙汰未遂をやらかした男子生徒は足用デオトラントスプレーを目に喰らったので洗眼がてら保健室で事情を聞かれている。非常に興奮していたのでこちらは保健の先生こと女性養護教諭は勿論、生活指導や体育教諭2名さらに男性教諭3名が付き添っている。半数は授業を休講して駆り出された先生たちである。

「事情はまぁ分かったがやはり目にスプレーはいかんよ失明したらどうするんだ」
 それまで黙って話を聞いていた教頭が開口一番、頓珍漢な事を言い出してあゆは少なからず失望した。
「相手は刃物ですが?」
「君は柔道の有段者なんだろう?こう……空気投げというか……」
「稽古した武道は合気道ですし段位は取っていません」
 あゆは少し苛立った態度を隠さなかった。
「強暴だな君は」
「何ですって?」
 いよいよ語気の荒くなったあゆに正副担任は困惑するばかりだった。

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