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秋風

アキバ系評論・創作

月下の舞姫vol.22

2012-09-10 23:59:37 | Weblog
「あゆーっ、さっきそっくりな娘と歩いていたけど誰?」
「あの制服、私らの(出身中学)よね?」
あゆが教室に入ると仲のいい洸(ひかる)と恵子が駆け寄る。ふたりとも身長が160cm台後半で142cmのあゆより25cmくらいも高い。
洸は秋葉原のアニメショップでアルバイトをしている。モデル体形でアイドル店員らしくクラスの男子にも人気が高い。クラス委員に立候補してなったが新入学早々アルバイトで休みがちで一昨日の『嵩谷の乱』(クラスの男子命名)の顛末は昨日恵子に聞いて知った。出身中学は地元で生粋の秋葉っ子でもあり危険なヲタクの探知能力がある。あゆと恵子とは高校の入学式で知り合い仲良くなった。

恵子はあゆと同じ中学出身。昨日休んだ授業のノートのコピーを持ってきてくれた。授業をバイキング料理のように任意に選択する単位制高校ではあるが初年度前期はほとんど必修授業なのでノートのコピーが一般的な全日制高校のように普通にできたが来年はこうはいかないかも知れない。
恵子はずっと陸上部なだけあってスリムで引き締まった体形をしている。また家業の酒屋をよく手伝っているがそれで学校を休むことはない。

「あの子は秋月サヨリといって遠縁かな?」
「なんで疑問形なのよ?」
洸が笑いだす。
「え? おじさまの隠し子?」
恵子が変な深読みをして小声で囁く。
「話せば長くなるけど東南アジアの日系人でたぶん遠縁、制服は私のを貸したのよ」
「「ふぅん?」」
あゆは周りで他のクラスメイトが聞いている状況を考慮した。
詳しく話すと昨日の警察沙汰の事まで話さないといけないので説明をはしょったが恵子と洸は客商売で培った勘が働いたのかその時はそれ以上聞かなかった。
あゆは大人の対応が出来るふたりに感謝した。

単位制三部制高等学校昼間部は13時から始まるが最初の5分はSHR(ショートホームルーム)で教室のモニター等を通じて伝達事項などがある。今日は特に何もなかった。
更に5分後から50分の授業10分の休み時間と続き4時限目が終わるのは
17時で30分後には同じ教室で夜間部が始まるので速やかに移動しなければならない。

月下の舞姫vol.21

2012-09-10 00:10:35 | Weblog
「わぁー、屋上って気持ちいいね! 普段から解放すればいいのに」
「安全管理上そうはいかなのよ、怖いでしょ?」
あゆが通っている単位制三部制の都立秋葉原高等学校をサヨリが見学する事になりあゆの副担任が案内する事になった。
あゆの母は店舗を開店させるべく戻った。
弁護士とあゆの父は最後の詰めとして崇谷家側と正担任を交え和解交渉をしている。

あゆが屋上の低い手すりを掴みながらやや身をのりだしつつ思わず歓声を上げる。
サヨリはあゆのスカートのベルトを掴みバックアップしながら遠くを見ている。
副担任の女の先生は高いところが苦手らしく三歩離れたところから背を向けて答える。手にはマスターキー用大型キーホルダーを握っている。まるでホテルの客室キーだ。
「怖くないですよ、サヨリは……本職のパイロットが怖いはずないか」
「地上から約300フィート、天気もよく気流も安定してて飛行日より」
秋葉高は30階建ての高層ビルの中にあるが普段は誰も屋上に出られない。
サヨリはあゆと一緒に屋上ヘリポートの中心に立ち間合いを計っている。緊急用ヘリコプター発着の為に高いフェンスなどがない。
「も、もういいでしょ? 次はどこを見たいですか? 秋月さん達」
副担任はそこから一刻も早く離れたいのか学校案内パンフレットを取り出す。
「屋上塔屋の屋上が見たいです、Googleマップの航空写真を見ると何かオブジェっぽいものが有りますよね?」
あゆが更に高見を目指す。
「日本の高性能な避雷針を見たいです」
サヨリは更にその上を目指す。
「き、企業秘密です!」
副担任が悲鳴を上げる。
「うち都立じゃないですか」
「PMC(民間武装警備会社)の装備?」
「秋月のあゆさんの方はそろそろ授業ですから教室に行きましょう!」