「これがフライングフィッシュか。パイロットがむき出しで昔の戦闘機みたいね」
お風呂上がりあゆは店舗の備品のウォーターサーバの冷水を飲みながらやはり店舗のパソコンでサヨリの乗機を検索していた。
「あくまでも飛翔可能なパーソナルウォータークラフト(水上バイク)、あるいは表面効果翼艇(WIG)という事になっている」
サヨリも勧められた冷水を飲みながら答える。あゆと話していて普段使っていなかった日本語の勘も戻りいつの間にか普通の話し方になっていた。
「なぜ飛行機扱いではないの?」
「我が国のような海洋国家が戦闘飛行艇を大量に保有していると周辺諸国との軋轢が生じる」
「海賊取り締まりという良いことをしているのに?」
あゆの父が難しい顔で答えを探しているサヨリにお代わりの冷水を差し出す。
「桃太郎みたいな善玉悪玉の簡単な話じゃないんだよ、あゆも高校生だそろそろ視野を広げないとな」
「ふーん……サヨリはもう高校出てるも同じだし働いてるし凄いよね、私も世の中の役に立つ仕事に就けるかな? 日本を出てパイロットもいいなバおバカなクラスメイトもいないし、あー明日は結局学校どうするの? 根本的な解決にはなってないよね?」
「だめよ、危ないわ、特に戦闘機パイロットなんて」
あゆの母が母親らしい事を言う。普段は娘の話に意見はしない方だが新型iPadを差し出しながら続ける。
「サヨリちゃんはさっきの脱衣所のピストルといい訓練された軍人さんなんだからあゆは単純に真似しようとしても怪我するだけよ」
「う、うん」
「どうしたんだ? おまえ?」
あゆの父が割って入る。
「うちの子が、あゆが遠くに行ってしまいそうで」
「嵩谷家の事もあったし今日はそんな気分にもなるさ、学校の件は明日また一緒に行こう。なにも心配せず今日はもう休みなさい」
「はい、お休みなさい、サヨリ一緒に寝よう」
パタパタと先に自室に向かうあゆ。
「おやすみなさい」
サヨリがペコリと頭を下げる。
「「おやすみなさい」」
秋月夫婦が応える。
「おばさま」
サヨリが頭を上げあゆの母を真っ直ぐ見る。
「な、何?」
思わずたじろいでしまう母。
「戦闘パイロットには簡単になれませんよ」
「ああすまんね、パイロットの矜持に触れてしまったか」
あゆの父がまた割って入る。
「これくらいできないと」
不意にサヨリがその場で後方宙返り、いわゆるバック転を決める。
「おー凄いな、さすがだな」
ぱちぱちと拍手する父、絶句する母。
「何やってんの? シーツとタオルケット取り替えたよ、サヨリ早く」
軽く会釈して音もなく無言で走り去るサヨリ。
「すっかり仲良しになったなあのふたりは」
「……あゆはできますよ……」
噛み合わない夫婦の会話。
「何が?」
「危ないからさせませんがさせないようにしていますが新体操の真似事でバック転できますよ、あゆは」
「一時、新体操教室に通っていたよな、何で止めたんだっけ?」
「教室が潰れたんですよ、経営不振で」
「ああ苦悶式学習塾に合気道に弓道と重なってお店を手伝ってくれなかったな」
笑う父、青ざめた母、楽しそうな笑い声をあげるあゆ、表情が乏しいながらも微笑むサヨリ。満月の夜。
お風呂上がりあゆは店舗の備品のウォーターサーバの冷水を飲みながらやはり店舗のパソコンでサヨリの乗機を検索していた。
「あくまでも飛翔可能なパーソナルウォータークラフト(水上バイク)、あるいは表面効果翼艇(WIG)という事になっている」
サヨリも勧められた冷水を飲みながら答える。あゆと話していて普段使っていなかった日本語の勘も戻りいつの間にか普通の話し方になっていた。
「なぜ飛行機扱いではないの?」
「我が国のような海洋国家が戦闘飛行艇を大量に保有していると周辺諸国との軋轢が生じる」
「海賊取り締まりという良いことをしているのに?」
あゆの父が難しい顔で答えを探しているサヨリにお代わりの冷水を差し出す。
「桃太郎みたいな善玉悪玉の簡単な話じゃないんだよ、あゆも高校生だそろそろ視野を広げないとな」
「ふーん……サヨリはもう高校出てるも同じだし働いてるし凄いよね、私も世の中の役に立つ仕事に就けるかな? 日本を出てパイロットもいいなバおバカなクラスメイトもいないし、あー明日は結局学校どうするの? 根本的な解決にはなってないよね?」
「だめよ、危ないわ、特に戦闘機パイロットなんて」
あゆの母が母親らしい事を言う。普段は娘の話に意見はしない方だが新型iPadを差し出しながら続ける。
「サヨリちゃんはさっきの脱衣所のピストルといい訓練された軍人さんなんだからあゆは単純に真似しようとしても怪我するだけよ」
「う、うん」
「どうしたんだ? おまえ?」
あゆの父が割って入る。
「うちの子が、あゆが遠くに行ってしまいそうで」
「嵩谷家の事もあったし今日はそんな気分にもなるさ、学校の件は明日また一緒に行こう。なにも心配せず今日はもう休みなさい」
「はい、お休みなさい、サヨリ一緒に寝よう」
パタパタと先に自室に向かうあゆ。
「おやすみなさい」
サヨリがペコリと頭を下げる。
「「おやすみなさい」」
秋月夫婦が応える。
「おばさま」
サヨリが頭を上げあゆの母を真っ直ぐ見る。
「な、何?」
思わずたじろいでしまう母。
「戦闘パイロットには簡単になれませんよ」
「ああすまんね、パイロットの矜持に触れてしまったか」
あゆの父がまた割って入る。
「これくらいできないと」
不意にサヨリがその場で後方宙返り、いわゆるバック転を決める。
「おー凄いな、さすがだな」
ぱちぱちと拍手する父、絶句する母。
「何やってんの? シーツとタオルケット取り替えたよ、サヨリ早く」
軽く会釈して音もなく無言で走り去るサヨリ。
「すっかり仲良しになったなあのふたりは」
「……あゆはできますよ……」
噛み合わない夫婦の会話。
「何が?」
「危ないからさせませんがさせないようにしていますが新体操の真似事でバック転できますよ、あゆは」
「一時、新体操教室に通っていたよな、何で止めたんだっけ?」
「教室が潰れたんですよ、経営不振で」
「ああ苦悶式学習塾に合気道に弓道と重なってお店を手伝ってくれなかったな」
笑う父、青ざめた母、楽しそうな笑い声をあげるあゆ、表情が乏しいながらも微笑むサヨリ。満月の夜。