何か新しい場所に行くと思い出す感情がある。
10代の頃の恋を思い出す。
といっても中学のときは誰、高校のときは誰、大学では・・・っていうことではなくて、あのとき抱いていた恋愛感情の根底に流れていたもっと大事なものを思い出す。
あれは真夏の熱射病のようなもので、結末なんて判りきっているのに、浮かされて熱されて解けていく。
恋の結末は2つしかない。
愛になるか、失うか。
少なくとも10 . . . 本文を読む
2番目に欲しいものを探しに大きい街へいきました。
腕時計です。
小さい文字盤は針だけ。
やたら長い革製のバンドは細く二連に。
留め具はゆるいのですぐはずれてしまう。
去秋に行った飲み屋で亡くしてしまいました。
その飲み屋には何度か出向いて探したのですがありません。
飲み屋で亡くしたのではなく帰りのセンター街あたりで亡くしたのかもわかりません。
どちらにしろ絶望的であることに間違いはありません。 . . . 本文を読む
小さい頃から自転車が絶対の交通手段だった。
自転車こそ世紀の大発明だと思う。
2人乗りにはたくさんの思い出がある。
まだ我が家に乗用車が来ていなかった頃。
保育園に送迎するため、地元を走りとおした2年間。
前に弟、母の背中に妹、ハンドルを握る母、後ろに私。
気候のいい季節は、手をつないだ4人が林の中を歩いていた。
高校から駅までの長い道。
スカートがめくれないように、それでも豪快に。
彼 . . . 本文を読む
渋谷の街は眠らない。土曜日、23時。
ハチ公前は相変わらず人でごったがえしてて、犬の姿がみえない。
待ち合わせ場所の意味を成してない。
スクランブル交差点。
所在なげに大スクリーンを眺める。
酔っぱらう若者。
路上の段ボール。
足早に歩くサラリーマン。
駅に向かう人より街へ出る人のほうが多いんじゃないか。
交差点を渡った人々はセンター街に道玄坂に吸い込まれていく。
吸い . . . 本文を読む