悠の食虫植物 ネペンテス普及委員会 (和名 ウツボカヅラを世に広める会)

食虫植物のネペンテスを広めていくためのブログ。

ネペンテス栽培記 435 ネペンテスの栽培 エキスパート編

2017年09月09日 02時52分31秒 | 悠のネペンテス栽培記
ちょっとまとめきれてない部分が多いのですが、
ネペンテスの栽培でお困りの方も多いと思いますので、
ためになるかどうかもわかりませんが、
私がどう育てていたかを書いてみようと思います。

もちろん、
私は専門家でも、
栽培のプロでもないので、
それが学術的に正しいとか、
科学的に証明されていることであるとか、
そういったものは一切書けません。

原種の種類や特徴どころか、
低地性や高地性の違いもあやふやで、
この前までは、
袋をつけさせることもままらなかった素人です。

明日にでも、
間違いでしたとなるような内容かもしれません。

ただ、
5年間、
私がネペンテスを育て、
観察してみて、
考え、
見つけ、
思ったことだけを書きますので、
かなり実践的であることだけは、
ここに約束しておきたいと思います。


今日以外はこのエキスパート編について、
もう書くつもりはないので、
なぜユグドラシルが出来たのか、
それについて書く最初で最後の記事になると思います。

なので、
途中で力尽きたらそこで終了とさせて頂きます。


来年には、
完成形に近づけるため、
まったく違うタイプのユグドラシルに移行する予定です。

今のペットボトルタイプは、
今季で終了にしようと思っていますので、
これから書くことは、
あくまで現段階のユグドラシルについて、
ということになります。


上記をご了承頂ける方だけに向けて書きますので、
そこはご了承頂きたいと思います。


では始めましょう。

ネペンテス普及委員会が送る、
ネペンテスの栽培 エキスパート編です。



ネペンテスはなぜ袋をつけるのか


ネペンテス栽培で最初にぶち当たる壁、
そして最後まで立ちはだかる難題。

それがこれ、

ネペンテスの袋がつかない問題

でしょう。


ネペンテスでネット検索する場合、
画像や購入する以外では、
目的はほぼすべてこれだと思います。

逆にこれさえクリアできれば、
もう誰も、
ネペンテスの栽培で悩まなくていいと言えるかもしれません。

ただ、
これはそんなに単純な問題じゃなかったんですね。


私もこの問題にずっとぶつかってきました。

植物の栽培にはちょっと自信があったので、
私の知識と経験が何一つ役に立たないという事実が、
非常にショックでした。


何本も植え替えなおし、
温度や湿度、
光量を変えて、
何回も観察を繰り返しました。

ネットで得た情報、
高温多湿、
適度な風、
夏場の遮光も、
忠実栽培グループを作って試しました。

ネペンテスの根に似ている水草を導入し、
伸び具合や量を比較してみたり、
養分を必要としない生態のコケに目を付け、
同じ環境を再現して成長具合を調べたりもしました。


でも袋がつかない。

どうやっても袋がつきません。

私は気に入った品種の袋がどうしても見たかったので、
枯れるたびに、
万単位の苗を買い直ししなくてはなりませんでした。


結果が出ないとどうしても心が折れかけ、
もう半ば投げ出してしまい、
結局、
現地の自生環境を再現する以外に、
素人にはネペンテスの栽培は無理だとまで思いました。


それからはもうあまり熱を入れることもなくなり、
枯れない程度にたまに水やりだけし、
葉が枯れようが用土に藻が生えようが、
ほとんどおかまいなしの放置栽培に切り替えます。


枯れたら片づけて、
おかげでスペースが出来るくらいにまで、
無関心になってしまいましたが、
ある日の朝、
凄いことにようやく気づくわけです。

それは、
いつの間にか、
ほぼすべてのネペンテスが着袋しているという事実です。


なぜ、
なぜ今頃になって、
ネペンテス達は袋をつけ始めたのか。


今までの栽培方法と、
何が違ったのか。


ネペンテスの袋のつき具合を観察し、
その疑問について考えたとき、
あることが閃きました。

今まで、
視点が間違っていたのではないか。

ネペンテスの袋がつかないのではなく、
なぜネペンテスは袋をつけるのか
その逆転の発想が必要だったのではないか、
ということです。


そうか、
そういうことだったのかと、
私は新しい視点で観察を開始しました。

袋をつける葉とつけない葉の違い、
高確率で袋をつける時の形、
袋のサイズが決定するタイミングや、
それに伴うフタが開く瞬間など、
毎日毎日、
観察を続けました。

ネペンテスは貧栄養地帯で育つ食虫植物。

その為、
周囲にいる昆虫などを捕らえて、
袋で消化吸収し、
足りない栄養分を補うと、
そのシステムについてはもちろん見聞きしています。

それはネペンテス関連で検索すれば、
どこにでも書いてある情報の一つです。

ただ、
私が本当に知りたかったのは、
じゃあ栄養分が豊富だったら、
そもそも袋はつけないのか、
ということです。


話しは少し飛びますが、
ネペンテス達が袋をつけ始め、
その理由について観察する一方で、
並行して行っていたのが、
肥料実験です。


この後に書ききれるかわかりませんが、
この肥料実験を元にしてできたのが、
ユグドラシルの初期型ですので、
本来の栽培方法とは離れてはいますが、
非常に有意義な実験だったと思っています。

批判もあり、
失った金額も大きかったですが。


観察を続けていく中で、
順調に生育を続けていくもの、
成長が止まるもの、
枯れ始めるものという、
大まかに三つのグループに分かれ始めました。

この三つのグループ分けそれぞれの観察記録は、
また機会があったら書くとして、
一番の注目株、
つまり成長グループですが、
さらにその中でも、
委縮、脇芽、高着袋率、葉の上位モードと、
細分化していき、
さらにさらに最も重要な成長カテゴリーは、
リーフ倍化
それは、
新しく出た葉が、
前回の葉の二倍以上のサイズになって出てくる現象でした。

ちなみに、
リーフジャンプという言い方が一般的かもしれませんが、
当時の私はそれを知らず、
ピッチャー形成の初期の段階を何て言うのか、
私は今も知らないので、
ずっとクラッチ形成と勝手に名付けて観察していました。


リーフ倍化は、
どのような条件を満たしたらおこるのか。

そして、
その段階でクラッチ形成が行われれば、
袋にどういう影響が出るのか。

私はその観察に夢中になりました。


そこで、
ある一つの結論にたどり着きます。

それは、
用土が重要という事実です。


それについては、
ミズゴケを含めた用土編と、
肥料がどう影響を及ぼしたか、
その肥料編に分けて書きたかったのですが、
とても書ききれそうにないのでやめておきます。

かなりおもしろい内容になる自信はあるのですが、
かなりめんどいのですみません。


ここまでお読みの方で、
栽培経験がある方は、
用土も大事だけど、
他の要素ももっと大事だと思われたり、
そもそも、
結局ピッチャーはどうやったらつくのか、
という気持ちでいらっしゃることでしょう。

ここで、
最初の段階の結論、
と言いますか、
ユグドラシルという培養装置ができた理由、
になるわけですが、
それをズバリ言いましょう。

ネペンテスはなぜ袋をつけないのか。

それは、


袋を作るのにとても時間がかかるから


ということです。


なんだそりゃとなったら、
それは先読みしすぎか、
前の私と同じで視点がズレています。

ここで重要なのは、

袋を作るのにとても時間がかかる

という事実に対して、
どう捉えるかということです。

・袋一つ完成させるのにとても時間がかかる

・袋を作り出すまでにとても時間がかかる

・袋を作る準備をするのにとても時間がかかる


どれも似たような感じですが、
全部微妙に違います。

栽培方法で誤解が出ると困るので、
なぜ袋、ピッチャーと言い方を変えているのか、
その種明かしは今回はしないことにします。


まず初心者の方は、
小さな苗や成長の早いネペンテスを除いて、
袋ができ始めてフタが開くまで、
結構な時間がかかることにちょっと驚くことでしょう。

長いものでは2か月以上は普通にかかります。

そしてちょっとネペンテスの生態がわかってくると、
今度は、
葉ができ始めてから袋を作り始めるまでに、
これまた結構な時間がかかることに気づくでしょう。

葉がピッチャーを形成し出す期間は、
長いものだと半年以上かかるものもあります。

そして、
数年間に及ぶ栽培経験のある方は、
驚愕の事実に直面するはずです。


ネペンテスは本来、
袋を作る準備をするのに、
年単位の時間が必要
という事実です。


そう、
袋がつかないという問題の真の答えは、
袋を形成するまでの準備期間が非常に長い
というネペンテスの生態の中にあったのです。


なぜそんなに時間がかかるのか。

それは単純に考えれば、
貧栄養地帯では、
ネペンテスにとって、
急激に成長することはデメリットでしかなく、
ゆっくりと時間をかけて成長する方が、
生存戦略的に正しいことだと選択し、
実際にそれは理にかなっている、
というのが模範解答でしょう。

確かに、
私の肥料実験では、
明確に成長の早さに差が出るものはありませんでした。

一見すると、
ネペンテスに肥料は必要ないということを、
逆に証明してしまったかに見えてしまいます。


が、
私はそこで、
非常に重要なことに気づいたのです。


それこそが水耕栽培計画の出発点でした。


それは、
肥料実験とは関係ないところでおこった、
成長速度の差や、
ピッチャー形成数の変化です。


時間がなくなってきたので、
端折って書きますが、
私は観察結果をもとに、
ネペンテスの生長サイクルについて仮説をたてました。


それが以下のものです。


幹→葉→袋→幹


水耕栽培に踏み切った理由である、
ネペンテスの根が、
極端に短い理由を合わせると納得しやすいと思うのですが、
時間がないので省きます。


幹から葉へ、
葉からピッチャーへ、
そしてピッチャーから再び幹へ戻るこの流れが、
栽培とどう関係するのか。

当然、
疑問に思うことかもしれませんが、
もう少し表現を変えてみると、
見えてくるかもしれません。


ネペンテスの場合、
幹と葉が一体となるような構造をしており、
頂点芽から、
葉と幹が一緒に形成されるような仕組みになっています。


あ、
この書き方について異論はあると思いますが、
わかりやすく表現するためだとこの場はご理解ください。

つまり、
ここでまず言いたいのが、
幹が葉を作っている、
ということです。

ちょっと端折りますが、
なので、
幹に十分に栄養がないと、
葉が形成できないということになりますね。

そして、
ここが肝なのですが、
私の仮説では、
ピッチャー形成は、
幹の方から養分を得てるのでなく、
葉が生み出した栄養分を使って形成されている、
ということです。

なので、
葉の展開具合や、
充実具合こそが、
ピッチャー形成のキーになる、
という仮説です。

じゃあ袋はなんのために作っているのか。

そう、
それこそが貧栄養土地帯で育つネペンテスの答え。

袋には、
袋で手に入れた高濃度養分を、
そのまま直に幹に送り返すという、
最重要ミッションがあったのです。


ここで話が戻り、
袋を作るのにとても時間がかかる、
という問題がようやく解決できてくるわけです。


私の仮説はこうです。

幹に栄養が足りないので、
次に出る葉が能力不足になる。

その葉から僅かなエネルギーだけ回収する。

その僅かなエネルギーをもとに、
また葉を作る。

それを長い時間をかけて繰り返し、
幹に養分がたまってようやくまともな葉ができ始める。

その葉が、
温度や湿度、
光の強弱を確認し、
葉に近い素材のピッチャー、
パイロットピッチャーを形成する。

パイロットピッチャーには、
蜜などで虫をおびき寄せる能力はなく、
偶然たまにかかる獲物や、
雨水に含まれる微量要素だけを養分にする。

パイロットピッチャー形成後、
袋生成の条件が満たされたと幹が判断し、
本格的な葉が展開され、
養分吸収の効率を良くするため、
太い葉脈が形成される。


これが私が考えた、
ネペンテスのカラクリです。


もう本当に時間がなくなったので、
話しは一気に飛びますが、
私は次の検証、
パイロットピッチャーと袋、
その差を自生地と比較するという実験に移りました。


自生地比較、
つまり、
本場のネペンテスと、
同等クラスの袋が再現できているか、
ということです。

つまり、
私の栽培方法が、
ネペンテスに合ってきてるかどうか、
ここではっきりさせようじゃないかという、
傲慢な試みなわけです。


それは、
何をもってして比較とするか。


候補は幾つかあると思います。

真っ先に出るのは、
やはりサイズでしょう。

植物体や葉のサイズに対して、
袋の大きさを計るだけなので、
もっともわかりやすい指標だと思います。

次に、
袋の厚みや固さですが、
これは種類によって異なるので、
明確に比べるのは難しいでしょう。

じゃあ袋の残存期間はどうか。

そもそも、
袋の数が一番ものを言うんじゃないか。

色々考えましたが、
私の住む地域は冬季の期間が長いため、
袋の状態が急激に悪化し、
やむを得ず袋を断念することが多く、
どれも検証は難しものでした。


そんな中、
自生地比較で、
私がもっとも注目したのが、

でした。


そう、
色こそが、
コンディションのバロメーターとして、
もっとも相応しいのではないか、
と。


それから、
マジで話しは飛びますが、
私がユグドラシルでもっとも注目しているところは、
発色の再現度になったわけです。



小さくても、
良く色が出てれば、
ネペンテスはかなり良いコンディションだと言えます。



模様も重要な要素です。



ツヤ、
色合い、
模様、
すべてを満たした培養装置が、
ユグドラシルだったわけです。



色の濃さで見れば、
一目瞭然ですね。



フタが開き
襟が広がるところまでは、
どの栽培方法でも一緒でしたが、
その後に一気に染まるのがユグドラシルの特徴で、
ミズゴケだけだと、
完全に色づくまでにピッチャーが完成してしまい、
なかなかこうはなりません。



襟の新鮮さと、
ボディの色づきの対比を見れば、
かなり充実した袋であることがわかります。




ちょっともうマジで寝る時間なので、
まとめに入ります。


袋が出来ないことでお悩みでしたら、
まずは栽培環境を整えることが大事です。


温度は大丈夫ですか?
適度な日照はちゃんと確保できていますか?
乾燥し過ぎじゃありませんか?
その用土、本当に大丈夫ですか?


まずは条件を満たすことがスタートです。


本気で袋を作りたかったら、
袋ができない理由をネットで検索し、
あれこれ試すよりも、
ネペンテスにエネルギーを蓄えさせるために、

環境をとにかく整え、
じっくりと育て、
しっかりと観察し、
パイロットピッチャーの生成を気長に待つ、
という長期プロジェクトの心構えが必要です。


ユグドラシルのおもしろいところ、
根は短い方がいいという話しは、
時間切れになりましたので、
今回はここまでとします。





ではでは、

また次回、

お会いしましょう。






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