『ドラゴンボール』鳥山明の短編4作品 サクッと楽しめる傑作、本人の「お気に入り」も
「鳥山明」の真骨頂が味わえる珠玉の短編作品たち
全世界で愛される、鳥山明先生の大ヒットマンガ『ドラゴンボール』 完全版 第1巻(集英社)
今や世界が、いや地球が認めた天才である鳥山明先生ですが、1995年に代表作『ドラゴンボール』の連載を終了して以降は、長期にわたる連載作品は執筆せず、短期集中連載という形で作品を発表していることは、多くのマンガファンならご存知のことと思います。 【画像】1冊で完結! 「鳥山明」の魅力がギュッと詰まった短編マンガたち(5枚) これがまた短期集中という形式ゆえということなのか、どれもこれも瞬間最大風速がとんでもない傑作ぞろいで、単行本も全1巻ながら読み応え十二分。ということで、今回はそんな鳥山明先生の傑作短編作品を紹介します。
●鳥山明先生が一番好きな作品『COWA!』 『ドラゴンボール』の連載終了からおよそ2年数か月ぶりの1997年に発表されたのが『COWA!』です。全14話の短期集中連載で、お化けと人間が共存する世界が舞台です。
主人公のパイフーはおばけの子供で、遊びざかりの男の子。そんなパイフーたちが住む村に「オバケ風邪」が大流行。これを治すために、はるか遠くに住む魔女から薬をもらうべく、人間の丸山さんと一緒に出発します。 まさに童話的な世界であり『ドラゴンボール』の熱心なファンからすればその作風の変化に多少なりともショックを受けたでしょう。絵柄もまたかなりデフォルメされています。この『COWA!』について鳥山先生は「すべての作品の中でいちばん大スキなマンガであります」と述べています。鳥山先生が純粋に好きな世界観が閉じ込められている、とってもハートフルな作品です。
●短編の旨味がギュッと詰まった『カジカ』 『ドラゴンボール』以降の鳥山作品のなかで、もっとも「少年マンガ」らしい作風となったのが本作『カジカ』です。
1998年連載開始で全12話と、こちらもコンパクト。生き物を1000匹助けないと解けない呪いをかけられた主人公の少年カジカが、竜の卵を悪党から守るべく戦う物語です。 竜に尻尾の生えた主人公、連載当初は『ドラゴンボール』の再来か? と期待する声も大きかったですが、前述の通りこちらは全12話で終了です。竜の血を飲んだラスボスにまさかの変化が……最後まで迫力十分。まさに短編の旨味を凝縮した傑作です。
●主人公は魔王の息子!『SAND LAND』 2000年に連載開始の『SAND LAND』もまた全14話と短いですが、「鳥山明の魅力が全て詰まっている」として、短編のなかでも一番に推す声が多い作品です。
タイトルが示す通り、舞台は砂漠。水源を確保している国王が、その水を高値で売りつけているというディストピア。意を決した老齢の保安官ラオがどこかにあるという「幻の泉」をさがすため、魔物に協力を仰ぐことを決意。魔王の息子である主人公ベルゼブブとともに干上がった川を遡っていく珍道中です。 倫理観が真逆のベルゼブブと保安官ラオが徐々に友情を築いていく過程や、対立する国王軍たちのメカニック、モンスターのデザインもまた秀逸で、鳥山先生の真骨頂である「ワクワク感」が尋常でないのです。そして最終話に待ち受ける衝撃……確かにこれは短編のなかの最高傑作といえるかもしれません。
●あえて古臭い内容、その理由は…『銀河パトロール ジャコ』 『SAND LAND』から13年後の2013年に連載された『銀河パトロール ジャコ』を紹介して、この記事を締めさせていただきます。
工学博士の大盛が住まう孤島に宇宙船が不時着。そこから現れたのは銀河の平和を守るパトロール隊員であるジャコ。どうやらエリートらしいのですが、とりあえず大盛の家に厄介になることに……何でしょう、この全体から漂うノスタルジックな雰囲気。 当時の鳥山明先生のコメントでは、これは意図的な演出だということ。そして、最後にその理由が明かされるとのことで、それを踏まえた上で本作を読み進めていくと「ああ!(途中でわかっていたけれど)こうつながっていくのか!」と、時間を超えた感動が味わえるのです。鳥山明ファン必読の一冊といえるでしょう。
鳥山明先生は他にも、「ネコマジン」シリーズや
読み切り「KINTOKI-金目族のトキ-」など、ご自身のペースで作品を発表し続けています。できれば本誌でもう一度短期連載をやってほしい……そう思ってしまうのはファンのわがままでしょうか。
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