歯科医物語

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「サル痘」

2022-06-24 23:25:24 | ☆歯科医物語
サル痘とは
 サル痘は、サル痘ウイルスによる感染症です。
 実験動物として採集されたサルの一部が感染し発症していたことが最初の発見契機であったため、サル痘と呼ばれますが、本来のウイルス保有動物は土着のリスやネズミ(げっ歯類)などです。それらの保有動物から直接ヒトに、あるいは保有動物からサルを介してヒトに感染します。


発生地域
 サル痘のヒトへの感染事例が初めて報告されたのは、1970年のザイール(当時;現在のコンゴ民主共和国)でのことでした。
 それ以降アフリカにおいて、コンゴ民主共和国をはじめとするコンゴ盆地から西アフリカにかけての熱帯雨林地域で、サル痘のヒト感染事例が散発しています。
 2018年までに、アフリカの10か国から発生報告がありました:コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、カメルーン、中央アフリカ共和国、ナイジェリア、コートジボワール、リベリア、シエラレオネ、ガボン、南スーダン。
 1996-1997年にはコンゴ民主共和国で大規模発生がありました。
 2003年には、アフリカからアメリカ合衆国に輸入されたペットのげっ歯類がサル痘に感染しており、ペット業者が同じくペットとして販売していたプレーリードッグに感染が拡がりました。これらプレーリードッグを飼育した飼い主など数10人が感染し、同国の広範囲の州で患者が発生しました。



感染経路
 ウイルスを保有しているリス、ネズミ(げっ歯類)、感染したサルなどの動物の、血液や体液に触れることでヒトに感染します。またそれらのリスやネズミ(げっ歯類)の肉(ブッシュミート)を加熱不十分な調理で喫食した場合も感染するおそれがあります。
 感染した患者の同居家族などの濃厚接触者にも、咳や痰、皮膚の病変への接触などを介して、ヒトからヒトへ直接感染することもあります。しかし連続してヒトからヒトへ感染した事例は報告されていません。



症状
 サル痘ウイルスが属するウイルスのグループ「オルソポックスウイルス属」には、かつて世界で猛威をふるった痘そう(天然痘)ウイルスも含まれ、実際サル痘と痘そう(天然痘)は症状もそっくりです。
 ただし、サル痘での致死率は下記のとおり痘そう(天然痘)よりは低く、かつ、痘そうと違って連続したヒト-ヒト感染はこれまで報告されていません。
 サル痘に感染してから5-21日間(平均12日間)の潜伏期間を経て、発熱、強い頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛、強いだるさで発症します。
 発症から1-3日後には水疱(みずぶくれ)が顔に出現し、やがて全身に広がります。水疱は顔以外では特に手のひらや足の裏にできやすく、口の粘膜や眼、生殖器にも出現します。出現から10日ほどでかさぶたになります。かさぶたが消えるまでは3週間程度かかります。
 症状だけでは痘そう(天然痘)とサル痘を区別することはできません。ただし、痘そう(天然痘)は1980年に地球上からの根絶が宣言されています。
 アフリカでの発生例では、致死率は数%-10%程度と報告されていますが、2003年の米国での集団発生時には死亡例はありませんでした。
 1980年に根絶が宣言されるまで世界で猛威をふるった痘そう(天然痘)の致死率は20-50%でした。



治療法
 サル痘に対する特異的な治療法はありません。症状に応じた対症療法を行います。



予防法
 サル痘に特化したワクチンはないものの、痘そう(天然痘)ワクチン(別名:種痘)に一定の予防効果があります。


 サル痘患者との接触者等に対し、痘そう(天然痘)ワクチンを接種する場合がありますが、1980年の根絶宣言以降、痘そうワクチンは市場に流通しておらず国家備蓄となっているため、接種機会は限られています。
 流行地に滞在中は、リスやネズミ(げっ歯類)に触らないよう、またそれらの動物の肉(ブッシュミート)に触ったり食べたりしないよう注意する必要があります。


 

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