「孤独のグルメ」はSeason10に突入 テレ東“最強コンテンツ”なのになぜゴールデンに昇格しない?
「孤独のグルメ」公式Twitterより
俳優の松重豊(59)が主演する「孤独のグルメ」(テレビ東京)のSeason10がスタートした。視聴者の食欲を刺激することから“夜食テロ”とまで称される日本を代表するグルメドラマだ。大晦日には「NHK紅白歌合戦」のウラ番組としても健闘するコンテンツだが、2012年1月の番組開始以来、レギュラー放送がずっと深夜なのはなぜなのか。 【写真をみる】初回ゲストに登場した石田ひかり ***
Season10の初回(10月7日)は通常より30分遅い24時42分スタートの予定だったが、「世界卓球2022」の延長でさらに20分押しの25時02分に始まった。民放プロデューサーは言う。 「それでも視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)は、世帯2・3%、個人1・1%で、同時間帯で首位。数字的には低視聴率と思われるかもしれませんが、深夜ですから個人の占有率は20・1%で群を抜いています」 翌週14日の第2話は、さらに困難が立ちはだかっていた。 「『孤独のグルメ』は24時12分スタートと通常に戻りましたが、日本テレビは金曜ロードショーが『るろうに剣心 最終章 the Final』のため放送時間が延びて24時20分から『news zero』が、フジテレビは『プロ野球セ・リーグ クライマックスシリーズ ヤクルト×阪神』の60分延長で24時から『全力! 脱力タイムズ』が、テレビ朝日は24時20分から『タモリ倶楽部』が放送されました。そんな中でも、世帯2・5%、個人1・3%とさらに上げてきたのです」 何たる強さだ。やはり魅力は、井之頭五郎を演じる松重豊の食いっぷりの良さだろうか。
ドキュメンタリーの要素
「まず挙げられるのは、それでしょうね。Season1から主演を務める松重さんは、当時49歳、来年1月には還暦を迎えます。劇中でのあまりのドカ食いに、『よく食べますね』と驚かれるのが定番です。しかし、さすがに最近は『キツい』とボヤいているそうです。本来はそれほど大食漢ではないそうですが、それでも現場では、本当に残さず食べているというから驚きます。お約束の追加注文は、松重さんのアドリブだそうですし」 Season10のスタート前の9月30日には、「放送直前SP」が放送された。その中で松重は、「撮影前日の夜から胃腸を整える(つまり食べない)」と答えていた。 「彼の食べっぷりと共に番組の魅力になっているのは、出てくるお店がすべて実在するということでしょう。しかも大衆食堂が多く、圧倒的な庶民目線です。実際にある店と料理を題材にしつつも、店主や従業員たちは役者が演じるというドキュメンタリー風ドラマであり、そのキャスティングも本物かと思わせるほどソックリでいい」 番組の終わりには原作者の久住昌之が舞台となったお店を訪ねるミニコーナー「ふらっとQUSUMI」が用意され、ドラマの答え合わせの
ような番組構成になっている。 「実在のメニューなんだなーと感慨にふけりつつ、実際の店主や従業員の出演で、さっきまで演じていた俳優がそっくりであることを思い返して驚嘆するのです」 料理の映し方も絶妙だという
細く長く儲ける
「照明を当てすぎたり、湯気を出しすぎたりといった、わざとらしさがないところも好感が持てます。すべて自然に流れてゆく、ゆったりとした心地よさこそ、『孤独のグルメ』が人気の理由だと思います」 そこまで人気なら、ゴールデンに昇格してもおかしくないはずだが。 「テレ東の深夜ドラマは製作委員会方式が多いのですが、『孤独のグルメ』だけは《製作著作・テレビ東京》です。つまり、オールライツを握っているわけです。この番組は主題歌(久住がギターを務めるバンド・The Screen Tonesが担当)などのサントラ、ネット配信、DVD、ムック本など、“金のなる木”になっています。ですからテレ東としては、番組を長く続けて欲しいのです。そのためには、ゴールデン昇格などして早く飽きさせるようなことはしたくない。細く長く儲けたいというのが本音でしょう。とはいえ、キラーコンテンツであることはよく分かっていますから、大晦日には『NHK紅白歌合戦』のウラで活躍してもらうわけです」 大晦日の22時から23時半まで、「孤独のグルメ」大晦日SPが放送されるようになったのは2017年からだから、今や定番化しつつある。 「昨年は紅白のウラで、視聴率6・6%を獲得。近い時間帯で見ると、日テレの『笑う大晦日』が5・6%、テレ朝の『あざとくて何が悪いの? SP』が4・4%、TBSの『THE鬼タイジ』が3・6%、フジテレビの『RIZIN』が4・3%と、いずれにも勝利しています」 同時間帯では民放首位と言っていい。 「それもあって、大晦日SPのみならず、最近は元日にも放送するようになりました」 21年の元日には「孤独のグルメイッキ見SP」が朝9時から15時半まで放送された。さらに、この年の大晦日には「孤独のグルメイッキ見 大晦日SP」が朝7時45分から13時半まで放送され、夜には「大晦日SP」。そして翌日となる今年の元日には、朝9時から夕方17時55分まで「イッキ見SP」が放送された。年をまたいで2日間、実に16時間以上が「孤独のグルメ」だった。 「昨年大晦日の『イッキ見』(11:40~13:30)の視聴率は7・7%、今年元日の『イッキ見』(14:00~17:55)は7・9%も取りました。還暦を迎える松重さんですが、当分は放してもらえないでしょう。テレ東はまだ公表していないものの、今年の大晦日と来年の元日も放送するとみています」