和貴の『 以 和 為 貴 』

日本は唯一の神国〔1〕 石田梅岩


石田梅岩 『都鄙問答』より

■ 鬼神を遠ざくと云う事を問ふ

人はなぜ祈るのか

〈梅岩が答える。〔前述のつつき〕
貴人を祈ることは人の真の道に合致しているが、道に適っているなら祈る必要などないはずだ。道に適っていないという思いがあるから祈るのである。あなたは、孔子の教えである儒教がわが国の神道と異なっているというが、それは間違いである。どんな聖人の書も、このような迷いから解き放つためのものだ。答えを求めて書物を頼って、さらに迷うとしたら、むしろ書物など読まない方がましでではないか。

わが国では、昔から神国を動かす補助手段として儒教を用いてきたことを知るべきだ。礼を欠き義に背く賄賂を、わが国の神々が歓迎するはずもない。神は清浄潔白の源ともいうべき存在なので、神明というのである。およそ神を信仰するのは、心を清浄にするためだ。ところが、礼に反し義に背くさまざまな願いを抱いて、朝に晩にと神社へ足を運び、さまざまな賄賂の手段を弄して神に祈る。不浄な思惑で神の清浄を穢す者がいたら、それこそ紛れもない罪人で、神罰を受けるのがふさわしい。
「天に対して罪を犯したら、もはや祈る余地などない」(子曰わく、罪を天に獲るときは祷る所なし)と『論語』(八佾篇)にある。天命以外に望むことはすべて罪だと聖人孔子はいうのだ。

願いの多くは、自分勝手なものだ。自分勝手なことをすれば、他の人に悪い影響を及ぼす。他人を苦しめるのは大罪である。罪人になって、どうやって神の御心に適うことができよう。

神は、人を差別せず、誰にも平等に接する。一方に悪く、一方に良いという形で願いを叶えたら、それは依怙贔屓である。願いが叶う場合と叶わない場合をほかの譬えでいうと、親から子へ家督を譲るのに似ている。子どもの側からの願いは不要である。子どもの身持ちが固かったら家督を継ぐが、身持ちが悪ければ家督は継げない。願いが成就するか否かも、これと同じだ。

天の命は自分次第だということを知るべきだ。神の心は鏡のように澄んでいる。依怙贔屓をする私心があるはずもない。なのにあなたは、願いが叶うことがあると、神が受け入れてくれたからだという。それを聞いた人たちは、「誰それは、どういうものを神に奉納したから願いが聞き入れられた」などと言い合うのである。そうやって取り沙汰していくうちに、ついには神が賄賂を取っているとみなし、冒涜するような情けない事態になりかねない。そんなふうになってしまうのは、天命ということを知らないからだ。



石田梅岩(一六八五 ~ 一七四四年)江戸中期の思想家。石門心学の始祖。丹波の人。本名、輿長。小栗了雲に師事。実践的倫理思想をわかりやすく説き、町人層に歓迎された。著書『都鄙問答』は、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助が座右の銘とした書である。


【 所 感 】

天命とは、真理・道理にかなった生き方を意味するわけでありますが、そもそも真理・道理とはなんであるのかを知り実践に及ばなければなりません。昨今、ネットも普及し、真理や道理の意味を知ることが容易とはなったものの、これだけ進んだ文明社会のなかにあっては、実践するには極めて困難な世の中ともいえます。然るに、文明社会のなかであっても、ひとりひとりが不義の心に侵されることなく、正しく義を全うする心を育むことが大事だと思われます。

聖徳太子は、冠位十二階の中で、"義"の位を、下から二つ目に大切な心とされましたが、儒教が日本に伝来した当初は、"義"の位は上から二つ目に大切な心とされていました。ですから、わが国では、"義"の心さえあれば、"信"や"礼"は後回しでも良いという解釈もできるのです。"義"の前に"信"や"礼"があるのとないのとでは、全く違ってきます。

例えば、支那では「誰からも信頼され、礼儀正しく、義を重んじる。」(信・智・礼・義・仁)
    日本では「言動は荒く、嘘をつくが、義に篤い。」(智・義・信・礼・仁)

と、かなり緩いのです。これは臣民だけでなく農民などの一般庶民にとっても、さぞ有難いことだったでしょうから、こうした緩さが太子以降1400年以上もの歴史を紡ぐことに繋がったのではないでしょうか。

しかしながら現代日本では、冠位十二階の精神もすっかり忘れ去られ、政・官・財すべてが不義の心に侵されている状況(知識優先)において、皇室の命運および日本国そのものが危機的状況に於かれている気がしてなりません。




(大阪・堺市 菅原神社 石田梅岩像)
今年の初詣は菅原神社へお参りさせていただきました。
現在は緑一色に塗装されておりますが・・・




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