⑦ ここのニューロン群の軸索は前頭連合野を中心に大脳に広く枝を伸ばし、その末端からこれらの伝達物質を分泌し、HQをはじめとした多重知性を促進発達させる。
⑧ 愛情はこれらの伝達物質系を発達させる→生誕直後からの愛情深いスキンシップと語りかけ。
⑨ スキンシップ→脳幹の発達に不可欠→添い寝、抱いたりは誕生直後から非常に重要
⑩ 母乳で育てると、人工ミルクよりIQが10ポイント向上
⑪ 語りかけ→母親の語りかけだけが有効
⑫ 豊かな社会環境→子供同士のポジティブ・ネガティブの関係→仲良くばかりでなく喧嘩も大切。しかも皮膚感覚を伴ったほうがいい。ある程度喧嘩させて、まさに体で体験することが重要
⑬ HQの重要な要素、読心を担う脳部位(前帯状回皮質)は心の痛みのみならず、体の痛みにも深く関係する。体の痛みを通して、読心を学んでいく。
⑭ 両親の深い愛情と自由で主体的な遊び、そして皮膚感覚が伴う豊かな社会関係→HQ発達の王道
第4章 大人になっても伸びるHQ
〇脳のネットワークに見る「進化の知恵」
① 動物が環境に適応するためにつくられた情報処理の器官が神経系
② 絶えず変化する環境に対応するため、神経系は自ら変化する性質を持っている。
③ この変化する性質を可塑性という。
④ 脳を含めた神経系は、多くのニューロンで構成されている。
⑤ ニューロンとニューロンはシナプスという接点でつながり、情報を伝達していく。
⑥ 脳の可塑性の鍵は、シナプス。
⑦ シナプスの数が多くニューロンの情報ネットワークが複雑なほど、脳の機能は複雑になる。
⑧ 子供の頃に複雑なネットワークを形成し、その後、環境に適合するように切り捨てていく。
⑨ 未来を確実に予測することは不可能なので、環境に合わせ必要な機能を獲得できるように、脳は進化してきた。
⑩ その根底の仕組みが、シナプスの可塑性。
〇歳をとっても伸びる知能とは何か?
① HQや他の知性は、大人になってからも、努力をすれば伸びる。
② 知性=流動性知能+総括的知能+結晶性知能
③ 流動性知能→新しい場面での適応能力といえる知性で、18歳をピークに年齢とともに激減していく。→単純な計算能力、暗記、言語習得能力
④ 総括的知能→理解力、まとめる力、複雑なことの記憶→20歳から50歳まであまり変化しない。→営業マンが商談でプレゼンをするとき発揮する能力
⑤ 結晶性知能→知識や経験を高度に適用した判断力、総括力=IQg→この知性は努力次第でいくらでも伸びる。そのピークは70歳。→企業のトップ、作家、政治家などの難しい局面での的確な判断
〇好奇心で伸びる知性
① 結晶性知能を伸ばすことが社会的成功に直結
② 結晶性知能を伸ばすためには、好奇心を持ち続けること。
③ また、現実の経験を積極的に蓄積していくことの重要。
〇40歳からでもHQは発達する
① 人間は「将来への展望、計画」が実現すると、知識や経験を獲得する。
② 同時に、様々な人々と関係することから、社会性が高まり、他人との関係もうまく結べるようになる。
③ 経験の中から他人がどんなことを考えているかが分かるようになると、「読心」も高まる。
④ すると、さらに知識や経験が増えてくる。つまり、結晶性知能が高まるという好循環になっていく。
⑤ ニューロンは、人間が生まれた後は増えることがなく、毎日死んでいくことがこれまでの脳科学の常識だった。現に、成人して以降、脳全体で一日に200万個のニューロンが死滅する。
⑥ ところが、成人の脳でも、ある特定の部位のニューロンが新たに作り出されていることが判明した。それは海馬。
⑦ 記憶=短期的記憶+長期的記憶
⑧ 長期記憶=陳述的記憶(過去を振り返り思い描くことも話すこともできるので陳述的)+手続き的記憶(車の運転など、体で覚える記憶)
⑨ 海馬は陳述的記憶に関係。
⑩ 海馬に関する有名な患者:激しい癲癇発作のため海馬を除去→癲癇は収まったが、大変な記憶障害に陥った。全く新しいことが覚えられなくなった。新しい陳述的記憶が全くできなくなった。しかし、術前の記憶は全く失われていなかったし、手続き的記憶も失われていなかった。IQも変化がなかった。
⑪ これが教えてくれることは、海馬の役割は陳述的記憶に関わる部位で、記憶の貯蔵庫ではないということ。知覚や短期記憶から長期記憶・陳述的記憶をつくる役割が海馬にある。つまり記憶の形成。
⑫ 記憶の形成には、扁桃体も重要で、特に情動体験が伴うような経験の記憶化には扁桃体と海馬の協働が重要。
⑬ こうした働きを持つ海馬のニューロンが成人になっても増えることが最近判明。さらに、前頭連合野の神経回路が大人でも発達することも分かった。
⑭ 前頭連合野の発達は60歳を超えてもある。
〇大人になっても伸びるHQの進化的な意味
① 人間のHQが中高年になっても伸びるのは生物学上おかしな話だが、実は進化的に意味がある。
② ・社会のメンバーに対して知的貢献をするということ。
③ 長老がどの・社会でも存在するが、長老は長い人生で蓄えてきた様々な知識と経験を自分のグループの若いメンバーに伝え、高度に活用することで、その社会に役立ってきた。
④ 中高年者の使命・役割は、家族、地域、国、人類に貢献すること。
〇脳に必要な豆類と魚
① 社会に貢献するには→HQを伸ばすこと→そのためには脳を使うこと→脳を使うには栄養が不可欠
② 栄養状態による知能指数の違いを調べた研究データ:バランスのとれた栄養で育った子供の70%がIQ91以上。偏った栄養で育った子供の中にはIQ111以上が一人もいなかった。
③ バランスのとれた栄養→豆類、ゴマ類、ワカメ、野菜、魚、椎茸、芋→頭文字をとって、「孫は優しい」
④ 豆類→記憶力を高める伝達物質アセチルコリンの前駆体であるレシチンが多く含まれているためHQ向上にとても重要。
⑤ 魚を食べると欝になりにくい→魚の脂には、不飽和脂肪酸の仲間のDHAとEPAが多く含まれている。DHAが欝に効果がある。
⑥ ラット実験で、脳内にDHAが多いほど学習能力や記憶力が高い→人間でも同じはず→魚を食べると学習能力・記憶力が高まるはず。
〇脳にとって最適な日本食
① 脳の働きをよくする食材→筍→チロシンが含まれている→これはドーパミンやノルアドレナリンの前駆物質→ドーパミン・ノルアドレナリンは脳の薬的存在
② 脳の機能維持のためにブドウ糖が必須。脳はエネルギー源としてブドウ糖しか使えない。→ブドウ糖を摂取するには米が一番→米はゆっくり消化されるので、ブドウ糖が持続的かつ効率よく脳に届く
③ 脳の働きや発達には、チロシンを含めたアミノ酸(=蛋白質)が不可欠→この点でも米が優れている→米に含まれているアミノ酸がバランスが取れていてチロシンも含まれている→最も重要なのは、米のアミノ酸は脳内にうまく取り込まれる点。→アミノ飲料などではアミノ酸はほとんど脳内に入らない。
④ 米には適切なビタミンとミネラルが含まれている→ビタミンB1、B2は脳に必要なエネルギーを供給+ビタミンEは抗酸化作用で老化防止+亜鉛は記憶力を高めイライラを防止+Caが不足するとイライラ+MgはCaの働きを助ける→米は脳にとっていいことだらけ。→米だけで脳に必要な栄養の70%は摂れる。→残りの30%は「孫は優しい」だ。→脳にとって最適は日本食
〇脳にダメージを与えるジャンクフード
① 脳によくない食べ物→K
② カリウム→少なすぎると心臓発作で突然死。摂りすぎると脳に悪影響。
③ 塩、ナトリウムもKと同じような影響を脳に与える。→Naが多すぎると脳が興奮する。
④ ハンバーガーやフライドチキンなどのジャンクフード→Kや塩分が過剰→脳に悪影響+食品添加物→環境ホルモンのように脳にダメージを与える。
⑤ 脳にはブドウ糖やアミノ酸が必要→これらを補助するのがミネラル→ミネラルが欠乏したり、バランスが悪いと脳はうまく働かない。
⑥ 現在では農薬の影響で土壌のミネラルが激減→意識的にミネラルを摂る必要がある→そのために最良なのが貝類や海草→海の多量のミネラルを豊富にバランスよく含んでいる+水溶性
〇政治家の脳がボケにくい理由
① 脳の栄養に必要な環境
② 芸術家、政治家は歳はとってもかくしゃくとして現役で仕事をしている例が多い。
③ 社会と積極的に関わったり、言語活動を活発にすることは、脳にとって大変効果的。
④ 他にも、恋をする、芸術的な分野での知性を使うことも脳を活発にする。
⑤ 音楽的知性や絵画的知性、空間的知性は右脳。右脳を積極的に使うことにより脳を若く保ち、ボケを防ぐ。
⑥ ピアノ、俳句、油絵などの趣味を持つ老人はボケにくい。右脳を刺激することと、手を積極的に使う。特に細かい手作業は、脳の活性化に非常に効果的
〇HQの働きが鈍ったときの自覚症状
① 真っ先に老化するのは前頭連合野、HQ
② HQが衰える→好奇心、創造力、柔軟性が減退→同じ行動を繰り返す=固執傾向→いつも同じ居酒屋、同じメニュー、休みの日は何もしない、いつも同じ話で顰蹙を買う
③ HQの働きが鈍る→活動量の急激な減少→やる気がなくなる+優先順位がつけられない+締め切りを守れない+うつ病+社会的孤立+刺激の不足+好奇心・学習意欲の低下+頑固
④ 人の物まねで周囲を笑わせる人→HQ低下の人→HQが低下すると、自分というものを自発的に創造することができなくなるため、人の物まねでその場を紛らわせようとする
〇HQの働きをよくするウォーキング
① 鈍ってしまったHQの改善方法→有酸素運動
② HQ衰退原因→脳の血流不足→前頭連合野に最も多く血液が送られている→有酸素運動が効果的=ウォーキング最適→毎日20分程度
〇恋が脳を活性化するメカニズム
① 恋をする→PEAフェルエチルアミンやセロトニンといった伝達物質が増加
② セロトニン→海馬のニューロンや神経回路を増加
〇楽しいことに熱中すると知性は
① 脳の活性化→豊かな栄養+目的を持って社会と積極的に関わる+知識・経験を増やす+恋+芸術+細かい手作業+ウォーキング
② ポイント→決して無理をしない。
③ 自分の好きなことをすべきであって、充実感や快感が伴うことをしなければならない。→熱中+喜ぶ→脳にとっても有効
④ 別の見方→自分が得意とする知性に関することをする→熱中+楽しい
〇集中力を生み、楽しさを感じるHQ
① なぜ、熱中して楽しいことをすると脳は発達するのか?
② 知性フレーム変容のベース→神経回路の可塑性→その実体はシナプスによる可塑的変化→この可塑的変化が、熱中して楽しい状態で起こる。
③ 楽しいとき→シナプスが柔軟になる→ニューロンが活発に伝達物質を分泌して情報が縦横に走る。
④ 情報伝達の活性化=知性の向上=楽しいこと
⑤ 神経回路の活性化の鍵を握るのは、調整系の伝達物質
⑥ 調整系の伝達物質→脳の広い範囲にゆっくりと、しかも長期間にわたって影響を及ぼす物質
⑦ この調整系の伝達物質の一部→集中力や楽しさに深く関係
⑧ 中で最も重要な伝達物質=ドーパミン系→このドーパミンの分泌量は前頭連合野で最も多い→前頭連合野の担う集中力に影響を及ぼす+快感+楽しさ+達成感+学習
⑨ 知性は熱中して楽しい状態で使えば豊かに発達する。
〇脳の情報処理能力を高める物質
① 知性は楽しくない状態ではほとんど発達しない。
② ドーパミンが働かないと、知性の活動は一時的なものになり、長期的な可塑的変化に十分結びつかない。
③ あなたは「よい人、よい親」を演じていないか?
④ 無理をしたり、嫌なこと続けていると、ノルアドレナリンが分泌される。
⑤ ノルアドレナリンは子供には有効だが、大人には適当ではない→適度に分泌されれば緊張感や覚醒感、注意力が高まるが、出過ぎると不安感や恐怖感に結びつくから。
⑥ ノルアドレナリン→脳の情報処理能力を高める働きがある。
⑦ 恋をする→ノルアドレナリンが出る。
⑧ ノルアドレナリンが出る状況、ジェットコースターに乗るときなどは、恋が原因でノルアドレナリンが出ているかが分からないので、恋と勘違いする。
〇幸福感を得る唯一の例
① 人類が共通して、幸福感と無関係な要因は、収入以外にもたくさんある。
② 社会的成功度、国家、民族、宗教、性別、年齢も幸福感とは無関係
③ 幸福感と結びつく共通因子→遺伝子の存続と家族の形成→結婚
④ HQが発達している人は離婚しない傾向が強い。
⑤ 持続的な結婚には高いHQが不可欠であり、そして、そんな結婚こそ幸福感に結びついている。
〇幸福感を抱きやすい人と結婚したとき
① 幸福感に影響を及ぼすのは結婚相手
② 最高の伴侶は幸せな家庭を築いてくれるし、そこで最高の幸福感を抱く。
③ 理想的な結婚相手とは、どんな人だろう?
④ 答え→遺伝的に幸福感を抱きやすい人
⑤ 自分の子供を幸せにしたいと思って英才教育をする人が多いが2重の意味で間違い→英才教育によってHQが高まる確証がないばかりか、かえって発達を阻害するという状況証拠の方が多い+幸福感を抱かない遺伝子を持つ両親からは、幸福感を抱く遺伝子を持たない子供が生まれる可能性が高い。
〇ストレスと欝とHQの関係
① 幸福感の減退・欠如は欝病と結びついていることが多い。
② 暗い性格の人は、やや欝傾向があり、遺伝性もあるので、結婚するときは物差しになる。
③ ストレスに最も敏感なのは前頭連合野
④ HQの低下=ストレスにかかっている可能性大
⑤ ストレスの早い段階→注意力散漫+集中力欠如+やる気なし
●HQを高める方法
① 豊かな栄養を摂る→伝統的な日本食
② 常に目的や夢を持ち、未来志向で生きる。
③ 記憶(知識・経験)を増やし、それを活用する。
④ 文章を速く読むトレーニングをする。
⑤ 新聞の社説を読み、記憶をもとにそれを要約し、批判する。→前頭連合野をいかに働かせるか→HQの根幹、ワーキングメモリ能力と結晶性知能を伸ばす。
⑥ 社会と積極的に関わる→恋をする。
⑦ 芸術的な趣味を持つ→右脳を使う。
⑧ 旅をする。
⑨ ときに適度なストレスを求める→新しいことへのチャレンジ
⑩ 股関節を柔軟にする。
⑪ 有酸素運動をする→ウォーキングを毎日
⑫ 細かい手作業をする。
⑬ 早寝早起きに心がける。→リズムがきちんとつくられる→メラトニンが松果体からキチンと分泌→精神的に安定+頭もよくなる。
第5章 日本人の脳は世界一
〇発達したHQを持つ日本人の使命
① 生物の生きる目的→自分の遺伝子を次世代に残すこと。
② 人間も同様。この究極的な目的に従って生きている。社会的に成功する、幸福になることは、本来はこの目的に沿ったもの。
③ 社会的に成功すれば収入を初めとしたリソースが増える。そしてそのリソースをうまく使えば幸福をつかめる。
④ しかし、HQはこうした「本来の目的」を超えることができる。
⑤ HQを伸ばせば幸福が手に入るが、そうでない人たちもいる。なぜか?
⑥ その答えもHQ。HQは氏族の中で社会関係をうまく行うために、顕著に発達してきた知性である。
⑦ 社会関係をうまく行う、氏族のメンバーに貢献する、ということをさらに推し進めれば、社会をよくする、皆を幸せにする、ということに行き着く。
⑧ 人間は自分の幸福のみならず、人類の幸福のために生きる素地を持っている。
⑨ しかも、この傾向はモンゴロイドで最も強い。なぜならモンゴロイドは人間関係に心を砕く繊細で優しい人類集団だから。周囲の人々の幸福や不幸にとても敏感。
⑩ 従って、モンゴロイドとしての日本人の生きる道は、自分の幸福もみならず、社会や国、さらには人類の幸福のために生きることだ。
⑪ 日本の美徳、終身雇用制度も瓦解し、自分の幸せだけを考えるような人たちが増えてきた。幸福の鍵はお金にあるという考えが浸透し、収入の多寡が成功の目安になる。年収300万円以下が負け組、1000万円以上が勝ち組などという二分法が流行り、人々はお金に執着し、親たちは自分の子供を勝ち組に入れるべくお受験やお勉強に駆り立てる。その結果、本来伸ばすべきHQもろくに育っていない幼稚な大人ができあがり、その大人たちの最大の関心がお金だ。
⑧ 愛情はこれらの伝達物質系を発達させる→生誕直後からの愛情深いスキンシップと語りかけ。
⑨ スキンシップ→脳幹の発達に不可欠→添い寝、抱いたりは誕生直後から非常に重要
⑩ 母乳で育てると、人工ミルクよりIQが10ポイント向上
⑪ 語りかけ→母親の語りかけだけが有効
⑫ 豊かな社会環境→子供同士のポジティブ・ネガティブの関係→仲良くばかりでなく喧嘩も大切。しかも皮膚感覚を伴ったほうがいい。ある程度喧嘩させて、まさに体で体験することが重要
⑬ HQの重要な要素、読心を担う脳部位(前帯状回皮質)は心の痛みのみならず、体の痛みにも深く関係する。体の痛みを通して、読心を学んでいく。
⑭ 両親の深い愛情と自由で主体的な遊び、そして皮膚感覚が伴う豊かな社会関係→HQ発達の王道
第4章 大人になっても伸びるHQ
〇脳のネットワークに見る「進化の知恵」
① 動物が環境に適応するためにつくられた情報処理の器官が神経系
② 絶えず変化する環境に対応するため、神経系は自ら変化する性質を持っている。
③ この変化する性質を可塑性という。
④ 脳を含めた神経系は、多くのニューロンで構成されている。
⑤ ニューロンとニューロンはシナプスという接点でつながり、情報を伝達していく。
⑥ 脳の可塑性の鍵は、シナプス。
⑦ シナプスの数が多くニューロンの情報ネットワークが複雑なほど、脳の機能は複雑になる。
⑧ 子供の頃に複雑なネットワークを形成し、その後、環境に適合するように切り捨てていく。
⑨ 未来を確実に予測することは不可能なので、環境に合わせ必要な機能を獲得できるように、脳は進化してきた。
⑩ その根底の仕組みが、シナプスの可塑性。
〇歳をとっても伸びる知能とは何か?
① HQや他の知性は、大人になってからも、努力をすれば伸びる。
② 知性=流動性知能+総括的知能+結晶性知能
③ 流動性知能→新しい場面での適応能力といえる知性で、18歳をピークに年齢とともに激減していく。→単純な計算能力、暗記、言語習得能力
④ 総括的知能→理解力、まとめる力、複雑なことの記憶→20歳から50歳まであまり変化しない。→営業マンが商談でプレゼンをするとき発揮する能力
⑤ 結晶性知能→知識や経験を高度に適用した判断力、総括力=IQg→この知性は努力次第でいくらでも伸びる。そのピークは70歳。→企業のトップ、作家、政治家などの難しい局面での的確な判断
〇好奇心で伸びる知性
① 結晶性知能を伸ばすことが社会的成功に直結
② 結晶性知能を伸ばすためには、好奇心を持ち続けること。
③ また、現実の経験を積極的に蓄積していくことの重要。
〇40歳からでもHQは発達する
① 人間は「将来への展望、計画」が実現すると、知識や経験を獲得する。
② 同時に、様々な人々と関係することから、社会性が高まり、他人との関係もうまく結べるようになる。
③ 経験の中から他人がどんなことを考えているかが分かるようになると、「読心」も高まる。
④ すると、さらに知識や経験が増えてくる。つまり、結晶性知能が高まるという好循環になっていく。
⑤ ニューロンは、人間が生まれた後は増えることがなく、毎日死んでいくことがこれまでの脳科学の常識だった。現に、成人して以降、脳全体で一日に200万個のニューロンが死滅する。
⑥ ところが、成人の脳でも、ある特定の部位のニューロンが新たに作り出されていることが判明した。それは海馬。
⑦ 記憶=短期的記憶+長期的記憶
⑧ 長期記憶=陳述的記憶(過去を振り返り思い描くことも話すこともできるので陳述的)+手続き的記憶(車の運転など、体で覚える記憶)
⑨ 海馬は陳述的記憶に関係。
⑩ 海馬に関する有名な患者:激しい癲癇発作のため海馬を除去→癲癇は収まったが、大変な記憶障害に陥った。全く新しいことが覚えられなくなった。新しい陳述的記憶が全くできなくなった。しかし、術前の記憶は全く失われていなかったし、手続き的記憶も失われていなかった。IQも変化がなかった。
⑪ これが教えてくれることは、海馬の役割は陳述的記憶に関わる部位で、記憶の貯蔵庫ではないということ。知覚や短期記憶から長期記憶・陳述的記憶をつくる役割が海馬にある。つまり記憶の形成。
⑫ 記憶の形成には、扁桃体も重要で、特に情動体験が伴うような経験の記憶化には扁桃体と海馬の協働が重要。
⑬ こうした働きを持つ海馬のニューロンが成人になっても増えることが最近判明。さらに、前頭連合野の神経回路が大人でも発達することも分かった。
⑭ 前頭連合野の発達は60歳を超えてもある。
〇大人になっても伸びるHQの進化的な意味
① 人間のHQが中高年になっても伸びるのは生物学上おかしな話だが、実は進化的に意味がある。
② ・社会のメンバーに対して知的貢献をするということ。
③ 長老がどの・社会でも存在するが、長老は長い人生で蓄えてきた様々な知識と経験を自分のグループの若いメンバーに伝え、高度に活用することで、その社会に役立ってきた。
④ 中高年者の使命・役割は、家族、地域、国、人類に貢献すること。
〇脳に必要な豆類と魚
① 社会に貢献するには→HQを伸ばすこと→そのためには脳を使うこと→脳を使うには栄養が不可欠
② 栄養状態による知能指数の違いを調べた研究データ:バランスのとれた栄養で育った子供の70%がIQ91以上。偏った栄養で育った子供の中にはIQ111以上が一人もいなかった。
③ バランスのとれた栄養→豆類、ゴマ類、ワカメ、野菜、魚、椎茸、芋→頭文字をとって、「孫は優しい」
④ 豆類→記憶力を高める伝達物質アセチルコリンの前駆体であるレシチンが多く含まれているためHQ向上にとても重要。
⑤ 魚を食べると欝になりにくい→魚の脂には、不飽和脂肪酸の仲間のDHAとEPAが多く含まれている。DHAが欝に効果がある。
⑥ ラット実験で、脳内にDHAが多いほど学習能力や記憶力が高い→人間でも同じはず→魚を食べると学習能力・記憶力が高まるはず。
〇脳にとって最適な日本食
① 脳の働きをよくする食材→筍→チロシンが含まれている→これはドーパミンやノルアドレナリンの前駆物質→ドーパミン・ノルアドレナリンは脳の薬的存在
② 脳の機能維持のためにブドウ糖が必須。脳はエネルギー源としてブドウ糖しか使えない。→ブドウ糖を摂取するには米が一番→米はゆっくり消化されるので、ブドウ糖が持続的かつ効率よく脳に届く
③ 脳の働きや発達には、チロシンを含めたアミノ酸(=蛋白質)が不可欠→この点でも米が優れている→米に含まれているアミノ酸がバランスが取れていてチロシンも含まれている→最も重要なのは、米のアミノ酸は脳内にうまく取り込まれる点。→アミノ飲料などではアミノ酸はほとんど脳内に入らない。
④ 米には適切なビタミンとミネラルが含まれている→ビタミンB1、B2は脳に必要なエネルギーを供給+ビタミンEは抗酸化作用で老化防止+亜鉛は記憶力を高めイライラを防止+Caが不足するとイライラ+MgはCaの働きを助ける→米は脳にとっていいことだらけ。→米だけで脳に必要な栄養の70%は摂れる。→残りの30%は「孫は優しい」だ。→脳にとって最適は日本食
〇脳にダメージを与えるジャンクフード
① 脳によくない食べ物→K
② カリウム→少なすぎると心臓発作で突然死。摂りすぎると脳に悪影響。
③ 塩、ナトリウムもKと同じような影響を脳に与える。→Naが多すぎると脳が興奮する。
④ ハンバーガーやフライドチキンなどのジャンクフード→Kや塩分が過剰→脳に悪影響+食品添加物→環境ホルモンのように脳にダメージを与える。
⑤ 脳にはブドウ糖やアミノ酸が必要→これらを補助するのがミネラル→ミネラルが欠乏したり、バランスが悪いと脳はうまく働かない。
⑥ 現在では農薬の影響で土壌のミネラルが激減→意識的にミネラルを摂る必要がある→そのために最良なのが貝類や海草→海の多量のミネラルを豊富にバランスよく含んでいる+水溶性
〇政治家の脳がボケにくい理由
① 脳の栄養に必要な環境
② 芸術家、政治家は歳はとってもかくしゃくとして現役で仕事をしている例が多い。
③ 社会と積極的に関わったり、言語活動を活発にすることは、脳にとって大変効果的。
④ 他にも、恋をする、芸術的な分野での知性を使うことも脳を活発にする。
⑤ 音楽的知性や絵画的知性、空間的知性は右脳。右脳を積極的に使うことにより脳を若く保ち、ボケを防ぐ。
⑥ ピアノ、俳句、油絵などの趣味を持つ老人はボケにくい。右脳を刺激することと、手を積極的に使う。特に細かい手作業は、脳の活性化に非常に効果的
〇HQの働きが鈍ったときの自覚症状
① 真っ先に老化するのは前頭連合野、HQ
② HQが衰える→好奇心、創造力、柔軟性が減退→同じ行動を繰り返す=固執傾向→いつも同じ居酒屋、同じメニュー、休みの日は何もしない、いつも同じ話で顰蹙を買う
③ HQの働きが鈍る→活動量の急激な減少→やる気がなくなる+優先順位がつけられない+締め切りを守れない+うつ病+社会的孤立+刺激の不足+好奇心・学習意欲の低下+頑固
④ 人の物まねで周囲を笑わせる人→HQ低下の人→HQが低下すると、自分というものを自発的に創造することができなくなるため、人の物まねでその場を紛らわせようとする
〇HQの働きをよくするウォーキング
① 鈍ってしまったHQの改善方法→有酸素運動
② HQ衰退原因→脳の血流不足→前頭連合野に最も多く血液が送られている→有酸素運動が効果的=ウォーキング最適→毎日20分程度
〇恋が脳を活性化するメカニズム
① 恋をする→PEAフェルエチルアミンやセロトニンといった伝達物質が増加
② セロトニン→海馬のニューロンや神経回路を増加
〇楽しいことに熱中すると知性は
① 脳の活性化→豊かな栄養+目的を持って社会と積極的に関わる+知識・経験を増やす+恋+芸術+細かい手作業+ウォーキング
② ポイント→決して無理をしない。
③ 自分の好きなことをすべきであって、充実感や快感が伴うことをしなければならない。→熱中+喜ぶ→脳にとっても有効
④ 別の見方→自分が得意とする知性に関することをする→熱中+楽しい
〇集中力を生み、楽しさを感じるHQ
① なぜ、熱中して楽しいことをすると脳は発達するのか?
② 知性フレーム変容のベース→神経回路の可塑性→その実体はシナプスによる可塑的変化→この可塑的変化が、熱中して楽しい状態で起こる。
③ 楽しいとき→シナプスが柔軟になる→ニューロンが活発に伝達物質を分泌して情報が縦横に走る。
④ 情報伝達の活性化=知性の向上=楽しいこと
⑤ 神経回路の活性化の鍵を握るのは、調整系の伝達物質
⑥ 調整系の伝達物質→脳の広い範囲にゆっくりと、しかも長期間にわたって影響を及ぼす物質
⑦ この調整系の伝達物質の一部→集中力や楽しさに深く関係
⑧ 中で最も重要な伝達物質=ドーパミン系→このドーパミンの分泌量は前頭連合野で最も多い→前頭連合野の担う集中力に影響を及ぼす+快感+楽しさ+達成感+学習
⑨ 知性は熱中して楽しい状態で使えば豊かに発達する。
〇脳の情報処理能力を高める物質
① 知性は楽しくない状態ではほとんど発達しない。
② ドーパミンが働かないと、知性の活動は一時的なものになり、長期的な可塑的変化に十分結びつかない。
③ あなたは「よい人、よい親」を演じていないか?
④ 無理をしたり、嫌なこと続けていると、ノルアドレナリンが分泌される。
⑤ ノルアドレナリンは子供には有効だが、大人には適当ではない→適度に分泌されれば緊張感や覚醒感、注意力が高まるが、出過ぎると不安感や恐怖感に結びつくから。
⑥ ノルアドレナリン→脳の情報処理能力を高める働きがある。
⑦ 恋をする→ノルアドレナリンが出る。
⑧ ノルアドレナリンが出る状況、ジェットコースターに乗るときなどは、恋が原因でノルアドレナリンが出ているかが分からないので、恋と勘違いする。
〇幸福感を得る唯一の例
① 人類が共通して、幸福感と無関係な要因は、収入以外にもたくさんある。
② 社会的成功度、国家、民族、宗教、性別、年齢も幸福感とは無関係
③ 幸福感と結びつく共通因子→遺伝子の存続と家族の形成→結婚
④ HQが発達している人は離婚しない傾向が強い。
⑤ 持続的な結婚には高いHQが不可欠であり、そして、そんな結婚こそ幸福感に結びついている。
〇幸福感を抱きやすい人と結婚したとき
① 幸福感に影響を及ぼすのは結婚相手
② 最高の伴侶は幸せな家庭を築いてくれるし、そこで最高の幸福感を抱く。
③ 理想的な結婚相手とは、どんな人だろう?
④ 答え→遺伝的に幸福感を抱きやすい人
⑤ 自分の子供を幸せにしたいと思って英才教育をする人が多いが2重の意味で間違い→英才教育によってHQが高まる確証がないばかりか、かえって発達を阻害するという状況証拠の方が多い+幸福感を抱かない遺伝子を持つ両親からは、幸福感を抱く遺伝子を持たない子供が生まれる可能性が高い。
〇ストレスと欝とHQの関係
① 幸福感の減退・欠如は欝病と結びついていることが多い。
② 暗い性格の人は、やや欝傾向があり、遺伝性もあるので、結婚するときは物差しになる。
③ ストレスに最も敏感なのは前頭連合野
④ HQの低下=ストレスにかかっている可能性大
⑤ ストレスの早い段階→注意力散漫+集中力欠如+やる気なし
●HQを高める方法
① 豊かな栄養を摂る→伝統的な日本食
② 常に目的や夢を持ち、未来志向で生きる。
③ 記憶(知識・経験)を増やし、それを活用する。
④ 文章を速く読むトレーニングをする。
⑤ 新聞の社説を読み、記憶をもとにそれを要約し、批判する。→前頭連合野をいかに働かせるか→HQの根幹、ワーキングメモリ能力と結晶性知能を伸ばす。
⑥ 社会と積極的に関わる→恋をする。
⑦ 芸術的な趣味を持つ→右脳を使う。
⑧ 旅をする。
⑨ ときに適度なストレスを求める→新しいことへのチャレンジ
⑩ 股関節を柔軟にする。
⑪ 有酸素運動をする→ウォーキングを毎日
⑫ 細かい手作業をする。
⑬ 早寝早起きに心がける。→リズムがきちんとつくられる→メラトニンが松果体からキチンと分泌→精神的に安定+頭もよくなる。
第5章 日本人の脳は世界一
〇発達したHQを持つ日本人の使命
① 生物の生きる目的→自分の遺伝子を次世代に残すこと。
② 人間も同様。この究極的な目的に従って生きている。社会的に成功する、幸福になることは、本来はこの目的に沿ったもの。
③ 社会的に成功すれば収入を初めとしたリソースが増える。そしてそのリソースをうまく使えば幸福をつかめる。
④ しかし、HQはこうした「本来の目的」を超えることができる。
⑤ HQを伸ばせば幸福が手に入るが、そうでない人たちもいる。なぜか?
⑥ その答えもHQ。HQは氏族の中で社会関係をうまく行うために、顕著に発達してきた知性である。
⑦ 社会関係をうまく行う、氏族のメンバーに貢献する、ということをさらに推し進めれば、社会をよくする、皆を幸せにする、ということに行き着く。
⑧ 人間は自分の幸福のみならず、人類の幸福のために生きる素地を持っている。
⑨ しかも、この傾向はモンゴロイドで最も強い。なぜならモンゴロイドは人間関係に心を砕く繊細で優しい人類集団だから。周囲の人々の幸福や不幸にとても敏感。
⑩ 従って、モンゴロイドとしての日本人の生きる道は、自分の幸福もみならず、社会や国、さらには人類の幸福のために生きることだ。
⑪ 日本の美徳、終身雇用制度も瓦解し、自分の幸せだけを考えるような人たちが増えてきた。幸福の鍵はお金にあるという考えが浸透し、収入の多寡が成功の目安になる。年収300万円以下が負け組、1000万円以上が勝ち組などという二分法が流行り、人々はお金に執着し、親たちは自分の子供を勝ち組に入れるべくお受験やお勉強に駆り立てる。その結果、本来伸ばすべきHQもろくに育っていない幼稚な大人ができあがり、その大人たちの最大の関心がお金だ。